相続税の節税のために、養子縁組を活用する際のメリットとデメリット
養子縁組は、子供がいなくて家系が途絶える場合などに行われています。
しかし、この養子縁組を使って相続税の節税対策が行われた時期がありました。
養子縁組を使った相続税の節税対策なんか出来るのかと疑問に思われるかも知れませんが、それが出来たのです。
養子縁組による節税対策とは
例えば、2億円の財産があったとします。
相続人は、配偶者と子供二人であったとしますと、相続税の基礎控除は平成26年12月31日までは、5,000万円と法定相続人一人当たり1,000万円でしたから8,000万円です。
財産が2億円ですから、基礎控除の8,000万円を差し引くと1億2,000万円残ります。
この1億2,000万円が相続税の課税対象となります。
ただし、極論を申し上げますと、養子を12人にしたらどうでしょうか。
基礎控除は、相続人一人当たり1,000万円ありますから1億2,000万円基礎控除が増えることになります。
結果として、相続税は掛からないことになります。
それなら5億円の財産を持っていた人が、配偶者と子供と養子を含めて法定相続人が45人いたのかと、そう思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、そこまで極端な事をされる方はおられませんでした。
私の経験で養子の数は最高で10人でした。10人の養子でも基礎控除は1億円も増えるのです。
これと同じような事ですけど、所得税の扶養控除がありますね。老人扶養とかでない一般的な扶養控除は一人当たり38万円です。
アジア系の外国人ですけど、扶養家族がなんと100人という所得税の申告書の提出があったと聞いたことがあります。
なんと扶養控除の金額が3,800百万円です。
もちろん、その所得税の申告書が提出された税務署は、真偽を調査したと思います。
話しは逸れましたが、養子縁組を利用した相続税の節税対策が頻繁に行われましたので、税法改正が行われました。
養子縁組に関する税法改正
簡単に説明しますと、
・実子がいる場合は一人まで
・実子がいない場合は二人までを
相続税の基礎控除の対象にするというものです。
これは相続税法上の取り扱いで、民法上は養子縁組は何人でも可能ですから、
・実子がいる場合は一人まで
・実子がいない場合は二人までしか
養子縁組が出来ないという事はありません。
それでは、「現在では養子縁組を利用した相続税対策は出来ないのか?」と思われるでしょうが、そうでもありません。
そこが相続税の難しいところです。
もちろん、実子がいたとして養子縁組を一人しましたら基礎控除が600万円増えて、600万円分の相続税は減ることになりますから、これだけでも節税と言えるでしょう。
しかし、それだけではないのです。
養子縁組を利用した節税対策のメリット
理由は相続税の税率は累進税率だからです。
一人より二人の方が法定相続分は減りますから、適用する税率が低くなるのです。
例えば配偶者がいなくて相続人は子供一人の場合と、これに一人を養子にして相続人が二人の場合を比較します。
相続財産が10億円の方ですと、相続財産が10億円の方にとって、基礎控除が600万円増えたからといって痛くも痒くもありません。どうでもよいことです。
600万円に最高税率の55パーセントを乗じても330万円です。
割合からすると0.33パーセントにしかなりません。
しかし、実子一人ですと相続税額4億5,820万円が、養子一人加えることによって3億9,500万円になるのです。
なんとその差額は6,280万円ですから『そんなに違うの。』と驚かれる方は多いでしょう。
また相続財産が5億円の方でも、1億9,000万円に対して1億5,200万円ですから、その差額は3,800万円です。
同じ見方をしてみますと、相続財産が3億円の方で2,560万円、相続財産が1億円の方で450万円もの減税が出来るのです。
しかも、養子は財産を一切相続せず、実子が財産の全てを相続したとしても結果は同じです。
なぜなら、相続税は財産を相続した割合で納税することになるからです。
財産を半々ずつ相続すれば相続税を50パーセントずつ納税していただく、財産全部を相続した人は相続税を100パーセント納税していただくことになります。
上のケースで言えば、
・実子が全てを相続すれば相続税は実子が100パーセント負担する
・養子は相続した財産はありませんから相続税を納める必要はない
という事になります。
養子を基礎控除の引き上げと、相続税の減額に利用したのと同じ結果になります。
養子縁組にはデメリットもある
このように書いてしまいますと、養子縁組を奨励しているように思われる方もいらっしゃると思いますが、決してそうではありません。
なぜなら、養子縁組をしたら養子は実子扱いとなり、実子と同じ権利(相続する権利)を有することになるからです。
もちろん、法定相続分は実子と均等ですですから、相続税の節税対策だけの養子縁組は非常に危険です。
相続争いの引き金となることも有り得ますので、相続税の節税対策のためだけに養子縁組を考えられる方は、誰を養子にするかは十二分に検討する必要があります。
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