相続の手続きを自分で行う為の手順
このページでは、
・初めて相続が発生してしまい、右も左も分からない
・故人が遺してくれた財産の把握の仕方が分からない
・財産が把握出来ても、相続税の申告が必要なのか 判断が付かない
・専門家に連絡を取る前に相続について
ある程度の知識を付けたい
という方の為に、故人の残された財産の把握方法~相続税額の計算方法までの手順を掲載しております。
相続税額の計算方法等も記載しておりますので、実際に故人の方が遺してくださった遺産はいくら位になるのか?
また、その遺産に対して相続税が掛かるのか?
掛かるのであれば概算どれくらい掛かるのか?を
このページにてご判断頂ければ幸いです。
目次
【0】まずは被相続人の方との血縁間関係を改めて確認する
①市役所にて戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍を確認する
まずは、財産を把握をする前に必要な事柄として、誰が被相続人(故人)に対しての相続人になるのかを、キチンと把握をする必要があります。
被相続人の本籍地の市役所の市民課において、被相続人の原戸籍を取ります。
同時に被相続人の除籍謄本を取っておきます。
子供が結婚をすると新戸籍が作られ、親の戸籍からは除籍されますので、子供の戸籍謄本が必要になります。
また、子供が親よりも先に亡くなっていると、子供の子供(孫)が相続人となります。
(代襲相続人)ので、そのようなケースでは孫の戸籍謄本も必要になります。
このようにして、相続人は誰か、また法定相続人の数は何人かを確認します。
例)市役所にて戸籍を取得・確認した結果
この家族の家族構成は下記で確認しました。
・被相続人 A男(85歳)
・相続人 B子(80歳・配偶者)
C男(50歳・長男)
D子(47歳・長女)
【1】被相続人(亡くなられた方)の財産の把握を始めよう
①被相続人の「資産」を把握しよう
相続の手続きを自分で行う際には、まず被相続人が遺された財産・債務及び葬式費用の把握から始まります。
被相続人が遺された財産の種類には、
・土地・建物
・現金、預貯金・有価証券
・事業を行っておられた場合には事業用資産
・家庭用財産
・生命保険金などのその他の財産
・書画、骨董などの特殊財産
などがあります。
また、皆さんあまり認識のない財産として、
・土地の権利として借地権・耕作権など
・事業を行っておられた場合の売掛金や未収家賃など、
・その他に著作権、電話加入権、貸付金、未収配当金、生命保険契約に関する権利など、
いわゆる財産価値のあるものは全てということになります。
更に、相続を受けられる方が被相続人から3年以内に贈与を受けられていたら、その財産も相続財産に含めることになりますので、
・3年以内に贈与を受けた財産の明細も必要です。
【2】現金・預貯金の把握の仕方
①口座残高は被相続人が亡くなられた日の額を計上
現金については、亡くなられた方が自宅・手元に残していた現金をそのまま計上します。
例)
自宅 90万
財布内 10万 合計100万円
預貯金については、被相続人の亡くなられた日付の口座残高を計上します。
複数の口座を持っておられる場合も同様です。
例)
三井住友銀行〇〇支店 口座番号:1234567 普通預金 500万円
みずほ銀行△△支店 口座番号:3334444 定期預金 500万円
ゆうちょ銀行 口座番号:5556789 通常貯金 200万円
合計1,200万円
現金・預貯金の合計額 1,300万円
【3】有価証券の把握の仕方
①上場株式の把握及び評価
上場株式の把握は、証券会社から送付されて来ている「預り有価証券明細書」などで把握します。
「預り有価証券明細書」により、被相続人保有の株式の銘柄及び株数が把握します。
上場株式の評価は、
①死亡日現在の終値
(当日が土日祝日である場合は死亡日に最も近い日の終値)
②死亡日の月の終値の平均価格
③死亡日の前月の終値の平均価格
④死亡日の前々月の終値の平均価格のうち、最も低い価格が1株当たりの評価額となります。
例)
銘柄:A株式会社 保有株数:5,000株
①死亡日現在の終値:2,351円
②死亡日の月の終値の平均価格:2,238円
③死亡日の前月の終値の平均価格:2,492円
④死亡日の前々月の終値の平均価格2,534円
上記の場合ですと、②の2,238円が最も低い価格となりますので、A株式会社の評価額は5,000株×2,238円=11,190,000円で申告することになります。
なお、被相続人が会社を経営されていた場合には、被相続人が所有する同族法人の株式も相続財産となりますが、このような株式の評価は税理士でも間違うケースがあり難しいものなので、個人で評価されるのは諦めてください。
【4】家庭用財産の把握の仕方
①家庭用財産の把握
家庭用財産は、被相続人が購入して残した家庭内などにある家具や電化製品などです。
ただし、購入してかなり期間も経過して耐用年数も過ぎた物は財産価値はありませんから財産として計上する必要はありません。
例)
家具・電化製品等 200,000円
【5】生命保険などのその他の財産の把握の仕方
①生命保険や死亡退職金はみなし相続財産です
重要書類を保管されていた所に生命保険証書がありましたら、その契約内容を確認(誰が契約者で被保険者は誰で受取人は誰かなど)して、亡くなった方が被保険者でしたら、生命保険会社に生命保険金の申請をしましょう。
・「生命保険の契約形態による違い」
申請をして、生命保険会社から支払われた金額が相続税の「みなし相続財産」となります。
ただし、生命保険金として支払われた金額から500万円×法定相続人の数は控除することができます。
例)
生命保険会社から支払われた金額が18,230,000円で、法定相続人の数が3人の場合
18,230,000円ー5,000,000円×3人=3,230,000円(課税される財産)
【6】不動産(建物)価値の把握の仕方
①建物の価値を算定しよう
自用として使っておられる建物の評価は、
市役所(役場など)の死亡された年の
固定資産税評価額×1.0倍で評価します。
また、アパートなどの貸付用建物は
固定資産税評価額×(1.0-0.3)倍で評価します。
例)
自用家屋 固定資産税評価額 9,230,000円(相続税評価額は固定資産税評価額と同額)
貸付家屋 固定資産税評価額 3,680,000円
相続税評価額 2,576,000円(3,680,000円×(1.0-0.3))
【7】不動産(土地)価値の把握の仕方
①倍率方式か路線価方式かを判断しよう
土地の相続税の評価方法には、
・倍率方式と
・路線価方式 があります。
まず、ご自身の土地がどちらに区別されるかを確認する必要があります。
確認は、国税庁のホームページのトップページの画面左下の「路線価図(日本地図で表示されている)」で出来ます。
具体的な確認の仕方は、ステップ2の倍率方式・ステップ3の路線価地域で説明します。
②倍率方式を使用して土地の評価額を算定しよう
《倍率方式》
倍率方式は、市役所(役場)の
固定資産税評価額
(固定資産税標準額ではありません)に、
倍率を掛けて相続税の評価額を算定する方法です。
倍率は、毎年改訂されて国税庁が公表します。
(改定日:毎年7月1日)
《倍率表・路線価図の見方》
国税庁HP⇒路線価図⇒平成OO年分(最新年を見る)⇒兵庫県⇒路線価図又は倍率表⇒字名
例)
姫路市夢前町山之内 宅地 200㎡ 固定資産税評価額 7,586,000円 倍率 1.1倍
相続税評価額 8,344,600円(7,586,000円×1.1倍)
③路線価方式を使用して土地の評価額を算定しよう
《路線価方式》
路線価方式は、道路に1平方メートル当たり千円単位で金額が設定されています。
路線価も、毎年改訂されて国税庁が公表(毎年7月1日)します。
路線価による相続税の評価額の【算定】は、土地の形状・面積・特別な規制などにより評価しますから専門的知識が必要になってきますが、
相続税の評価額の【概算を算定したいだけ】であったら、設定されている金額に面積を乗ずれば、概算の相続税評価額を算定することができますから、参考として使うには支障はございません。
《倍率表・路線価図の見方》
国税庁HP⇒路線価図⇒平成OO年分(最新年を見る)⇒兵庫県⇒路線価図又は倍率表⇒字名
例)
姫路市佃町 宅地 325㎡ 路線価 100,000円
相続税評価額 32,500,000円(325㎡×100,000円)
なお、被相続人が生前に居住していた家屋の敷地でしたら、一定の条件の基に330㎡までは80パーセントの評価減ができる小規模宅地等の特例があります(倍率地域の居住用宅地でも同じです)。
【8】被相続人の「負債」を把握しよう
①負債総額の中には、お葬式費用も含めます
債務につきましては、
・借入金、未納税金など
被相続人が確実に返済並びに納税をすべきものであったものが対象になります。
葬式費用は、
・お通夜の費用及びお葬式当日の費用
が対象になります。
お香典は財産に含める必要はありませんが、その代わり香典返しは葬式費用に含まれません。なお、その後の法要の費用(三回忌等)は葬式費用の対象とはなりません。
例)
借入金(銀行借入金など) 1,200,000円 未納税金(市県民税・固定資産税など) 458,000円
葬式費用 2,000,000円
負債の合計額 3,658,000円
【9】把握した財産を基に実際に相続税の申告が必要かを計算してみよう
①相続税の計算の仕方
いよいよ最終的に今までの把握をしてきた財産を合計し、財産の総額を計算します。
宅地(夢前町)の額 8,344,600円
宅地(姫路市)の額 32,500,000円
(小規模宅地等の特例適用後の金額 6,500,000円)
現金・預貯金の合計額 13,000,000円
有価証券の額 11,190,000円
家庭用財産の額 200,000円
その他の財産の額(生命保険金) 3,230,000円
遺産総額 68,464,600円 (小規模宅地等の特例適用後の遺産総額 42,464,600円)
この68,464,600円の資産総額から、
・相続税の基礎控除額 と
・負債合計額を引く事により、
相続税の課税価額が算定されます。
計算)
68,464,600円(資産総額)ー3,658,000円(負債合計額)ー48,000,000円(基礎控除)
=16,806,600円となり、
相続税の申告者を提出する必要があります。
一方、小規模宅地等の特例適用後の遺産総額 は42,464,600円ですから、債務及び葬式費用を差し引かなくても基礎控除(48,000,000円)以下となりますので、結果として相続税は掛からないことになります(※税務署に、相続税の申告書の提出は必要です)。
※特例の適用以前の財産額が基礎控除+負債合計を引いた額を超えている為
ご自分で計算した結果が基礎控除を超す方は、純資産価額(小規模宅地等の特例適用後の財産の総額から債務及び葬式費用を差し引いた金額)を基に、別表の表(下記に掲載)に当てはめて概算の相続税を割り出してください。
割り出した相続税で、万が一相続が発生した場合、現状のままで良いのか、相続税対策が必要か否かなどの検討をしてください。
②相続税の計算の仕方2
作成中
【10】遺産分割協議書を作成しよう
①相続人全員で集まって遺産分割の話をしよう
評価額の算定が終わりましたら、相続人に集まっていただいて、財産・債務を誰がどのように相続するのかを協議していただきます。
財産の分割の協議が整いましたら「遺産分割協議書」を作成します。
相続人に、「遺産分割協議書」に署名・捺印をします。
最後に、遺産分割協議書に基づいて相続税の申告書を作成します。
おわりに
このページにて紹介させて頂いた事例・計算方法は、あくまでも簡易的な計算方法ですので、専門家に頼らずに把握できる財産の概算を算定する程度の参考文章として捉えておいて下さい。
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