譲渡所得税を減らすために「不動産の購入価額」をごまかした納税者!そのウソがばれた理由とは!

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秋山 清成

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    税務署の調査官は以前全員が調査便覧(ちょうさびんらん)というものを持っていました。

    今はスマホのネットで調べれば何でも調べられますが、以前は携帯もなくもちろんその場(調査先など)で何かを調べるということは出来ません。

    そこで出てくるのがこの調査便覧です。

    調査便覧とは何ぞや? どんな情報が載っているの?

    調査便覧とは、厚さ1㎝程で書籍の形状をした紙の情報媒体ツールです。

    調査便覧には税務調査の際に必要となる様々な情報が載っています。

     

    少し例を上げてみましょう。

    私たちは義務教育の際に長さや重さの単位を、

    『センチメートル・メートル・キロメートルやグラム・キログラム、リッポウメートル』と習って来たため、

     

    新人の頃に調査先で納税者の方が『一尺や一間・一貫二貫』と言われてもピンと来ませんでした。

    そんな時にこの調査便覧を見ると、長さに尺、重さに貫、体積に升を基本単位とする尺貫法も載っていましたので大変参考になったものです。

     

    ➡一反は1,000平方メートル

    ➡一畝は100平方メートルなどは実家に田んぼがありましたから知っていましたが、

    一度調査先で「一反きたなか」と言われた時は全く分からず、税務署に帰って上司に聞いたら「一反半」のことでした。

     

    また、私の現役時代には銀行の統廃合が進んでいましたので、

    〝A銀行はB銀行と統合してH銀行になった〟などの情報も調査便覧には掲載されており、銀行調査時には大変参考になったものです。

     

    このように、尺貫法や銀行の統廃合の流れ等、税務調査の際に必要となる情報が盛り込まれている調査便覧ですが、

    この調査便覧の情報によって、『譲渡所得税』に関する納税者のウソを見破った話があります。

     

     

    調査便覧の情報により、納税者のウソが発覚したお話

    最近は「譲渡所得(不動産の売買に掛かる税金)の調査は、平成3年にバブルが崩壊して以降、調査自体をあまりやらなくなりましたが、

    バブル期は毎年土地の価額が上がっていましたので、年の半分は譲渡所得の調査をやっていました。

    後の半分は相続税の調査です。

     

    まず「譲渡所得」の調査では、

    この4項目の調査をベースに行います。

    なぜなら「譲渡所得」で税金逃れを目論む多くの納税者の方が、この4項目部分の数字を水増ししたり・減らしたりを行った申告書を作成しているからです。

     

     

    まず簡単に「譲渡所得」の計算式から見てみましょう。

    「譲渡所得」=①売却金額②取得費(土地・建物の購入代金や建築代金など)ー③譲渡費用(仲介手数料・印紙税など) で求めることになります。

    仮に数字を当てはめて計算すると、

    「譲渡所得」=①1,000万②600万(土地・建物の購入代金や建築代金など)ー③100万(仲介手数料・印紙税など) となり、

    この差額の300万円の利益に対して『譲渡所得税』が掛かるのです。

     
     
    この『譲渡所得税』を納税者が少しでも安く申告しようとした場合、

     

     

    売却金額をごまかして安く売ったようにすれば譲渡所得自体が安くなり、納める税金が減りますよね。

    ①800万②600万(土地・建物の購入代金や建築代金など)ー③100万(仲介手数料・印紙税など)=100万円(譲渡所得)

     

     

    また、

    売却した不動産の取得費(購入価額)をごまかして高く買ったようにすれば納める税金が減ります。

    ①1,000万②800万(土地・建物の購入代金や建築代金など)ー③100万(仲介手数料・印紙税など)=100万円(譲渡所得)

     

     

    更に、

    売却するために使った費用が多くなれば、上記同様に納める税金が減ります。

    ①1,000万②600万(土地・建物の購入代金や建築代金など)ー③300万(仲介手数料・印紙税など)=100万円(譲渡所得)

     

    また、居住用資産を売却すれば3,000万円の控除がうけられますから、

    ④各種特例の適用を受ければ納める税金が大きく減少したり・無くなったりします。

     

     

    不動産の取得費(購入価額)をごまかした納税者!そのウソがばれた理由とは

    実際に私が携わり、ウソと見破った「譲渡所得」の調査では、

    納税者の方(Aさん)が、②の売却した不動産の取得費(購入価額)をごまかして高く買ったように見せていたのですが、

     

    その具体的な方法としては、

    〝不動産を取得(購入)した時の契約書を改めて作る〟というものでした。

    つまりAさんは、

    ➡わざわざ古い紙を使い

    ➡陰影もドライヤーなどであぶって乾かして

    書類を作成』していたのです。

    映画や小説の様なお話ですよね。

     

     

    以下で具体的な詳細についてお話していきましょう。

     

    まずこの調査事案は、Aさんという方(不動産購入は昭和48年・売却は昭和63年)の「譲渡所得」の調査で、

    調査項目は、売却物件の購入価額が〝当時の相場から見て高すぎることです。

     

     

    ➡まず私は念入りに、Aさんが不動産を買った理由を聞きます。(こちらから買い申し込みをしたのか? 相手から買ってくれと言って来たのか? 当時の相場は調べたのか? など)

     

    ➡次に購入時の売買契約書も不審な点は無いかなども隅々まで見ます。

     

    ➡そして契約書に貼ってある収入印紙も確認します。

     

     

    あれっ!!

    ここで私はこの契約書の、あるおかしな点に気が付きます。

     

    〝この収入印紙は昭和58年に発行されて現在まで使われている収入印紙じゃないか!〟

     

     

    私はAさんにこう切り出します。

    『Aさん、この契約書じゃなく本物の契約書を出してください!』

     

     

    Aさんは、

    『おっしゃる意味が分かりません、これしか契約書はありませんが・・・』

    と返答します。

     

     

    そこで私は手元にあった調査便覧の収入印紙のページを開き、Aさんに対しこう問います。

     

    『この収入印紙は昭和58年以降のものですが、昭和48年にどのようにして手に入れられたのですか』

     

    『・・・・・。』

     

     

    『はい、重加算税を賦課させていただきます。』

     

     

    ・・・この様に、『調査便覧』はスマホもパソコンも無かった一昔前の税務調査において、大変役に立つものだったのです。

     

     

    また別の調査事案では、15年前に不動産を購入した際の契約書を出して来られたのですが、

    15年も経過しているのに紙の色が白く、どう見ても15年も経っているとは思えないものがありました。

     

    このような場合は、契約書の印鑑を押してある箇所に白紙をあてがい自分の印鑑の後ろの丸い部分で強く擦ります。

    このような調査をしながら納税者の顔をチラチラ伺っていると、納税者の方の目は泳いでいます。

    こうなるともうこちらのものです。

     

    あてがって剥がした紙に朱肉でも付けば勝負ありです。

     

     

    『はい、重加算税で決まりですね。』

     

     

    まとめ

    この記事に登場している私は、まだまだ国税調査官として国の側で税金の調査をしていた立場でしたが、

    税理士となった今では、完全に依頼者の皆さんの味方です。

     

    行き過ぎた節税や脱税の指南などを求められても困ってしまいますが、

    調査官時代に培った知識やノウハウを駆使して、皆さんの納める税金が少しでも少なくなるように日々業務を遂行していますので、

    相続・贈与でお困りの方は、ぜひご相談をしてみて下さい!

     

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