「特定事業用資産の買換え特例」を使った脱税 調査の決め手は航空写真!?

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秋山 清成

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    租税特別措置法第37条に、事業用資産を買い換えたときの特例というものがあります。

     

    この特例を簡単に説明しますと、

    ➡事業用の不動産を売って、

    ➡事業用の不動産を買えば

    ➡譲渡所得税の大部分は、今回購入した不動産を次回売却するまで繰延べますよ!

    というものです。

    『事業用資産の買い換え特例』の概要

    例えば、

    ➡親から相続を受けた『事業用として使っている不動産を5,000万円で売って

    ➡新たに『事業用に使う不動産を5,000万円で買って』この特例を使います!という確定申告をすれば、

    ➡売った不動産(5,000万円)に対して20%のみを今回課税し、残りの80%は今回購入した不動産を次回売却するまで繰延べますよ!

    というものです。

     

    ※『事業用資産の買い換え特例』の詳しい内容は下記の記事で解説しています

    リンク

     

     

    この特例は事業用資産の売買と定義されていますので、税務署側の調査も、

    〝売った不動産は事業用として使っていたものかどうか〟という調査をよくやったものです。

     

    今回の記事では、そんな『事業用資産の買い替えの特例』について、

    過去に私が調査官時代に携わった案件をお話していきたいと思います。

     

    (調査ケース)事業者Aさんが売った不動産は本当に事業用の不動産だったのか?

    今回の調査の元となった、事業者Aさんが税務署に提出した確定申告の内容は、

    駐車場(事業用)として使用していた土地を売却して、

    ・売却代金で事業用の不動産を買いました

    というものです。

     

     

    一見すると、別になんの問題もなく『事業用資産の買い替えの特例』が使えそうですよね!

     

    しかしこの事業者Aさんが調査事案に選定された理由には、以下の様な疑問が浮かび上がったからです。

    それは・・・。

     

     

    というものです。

     

    このような事案を調査する場合は、まずは現地確認が鉄則です。

    売られた不動産の現地まで行って、実際に自分の目で確かめるのです。

     

    確かめると言っても、Aさんが確定申告をしてから調査が始まるまでにはある程度の期間が空きますので、

    大概の場合は土地を購入した人が家を建てたりしているため、元の形は残っていない。

     

    そこで調査官は、周り近所に

    「あの土地は元々は駐車場だったのですか?」

    と聞き回るのです。

     

     

    しかしその事案では、大方の人が

    「車が止まっていることはあったが、駐車場ではなかった。」

    と仰います。

     

    「それでは、私が質問しますからそのとおりに応えてください。」

    と言って質問顛末書を取りたいのですが、そうなると皆さん地主の恨みを買いたくはないし関わりたくもないから、証言はしてくれません。

    私も、逆の立場だったら証言はしないでしょう。その気持ちは良く分かります。

     

    しかしながら、調査官の立場からすれば事業用の不動産ではなかったことは明らかですから、なんとか特例を否認して課税したい。

     

    かと言って、Aさんに

    「駐車場ではなかったのですね。」

    と言ったところで

     

    「はい、その通りです。申し訳ありません。」

    と言う人は一人もいません。

     

    決め手がなくて悔しい思いで断念するしかない。

     

    調査事案はいっぱい抱えているから、「真っ黒なのになあ」と思いつつも、この事案ばかりにかかっている暇もなく、

    『黒』という決定的な証拠がその時には掴めなかったため、諦めざるを得ませんでした。

     

    (新たに判明した事実)これは事業用地とは言わない、単なる空き地です!

    その後も、他の調査事案を処理しながら日々を送っていたある時、

    調査先の場所確認のため住宅地図を取り出したら、住宅地図の表紙が航空写真になっており、

    なんと駐車場ではないのに課税出来ず悔しい思いをした物件が、そこに大きく映っているじゃないですか!

     

    しかも、周りの人が言っていたとおり駐車場どころか車は1台も止まってはいない。

     

    すぐさま、住宅地図会社に電話をして『昭和○○年〇月発行の住宅地図の航空写真はいつ撮影したのか』の確認を行った結果、

    不動産売買年と同年の撮影であることが判明しました。

     

    その後、Aさんに税務署に来て頂き、住宅地図の表紙を示して

    「これは事業用地とは言いません、単なる空き地です!」

    と言ったところ、すんなり認めて修正申告に応じてくれました。

     

    あの住宅地図会社がなければ、表紙に航空写真を載せていなければ、当該事案は闇に葬られていたでしょう。

    航空写真というテクノロジーに助けられた事案であり、同時にその時期に確定申告を行ったAさんにとっては、少し気の毒な案件でした。

     

    『特定事業資産の買い換えの特例』が日本の土地バブルに拍車をかけた?

    ちなみに余談ですが、この『特定事業資産の買い換えの特例』があったからこそ、私は一昔前の日本の土地バブルに拍車をかけたのではないかと思っています。

     

    と言いますのもこの特例、現在は事業用資産の売った価格に対して20%の部分については課税対象になっていますが、

    私が調査官だった時代には、なんと全額非課税扱いだったんです!

     

    それまでは土地神話(狭い日本で土地は下落するはずがない)と言われ続けて来ましたが、

    皆さんもご存知の通り、平成3年にバブルが弾けて土地・株価が下落して日本は不況の嵐が吹き始めました。

     

    その原因の一端を、この『特定事業資産の買い換えの特例』が担ってしまっていたんじゃないかと、私は思えてなりません。

     

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