相続は夫婦の死の時間(順番)によって、財産の行方が大きく変わる(同時死亡・時間差での死亡)
相続では夫婦の死の時間(順番)によって、財産の行方が大きく変わる場合があります。
今回の記事では、そんな死のタイミングと相続の関係について話をして行きたいと思います。
目次
先祖代々の財産が、違う家の人に相続される?
3年前に亡くなった兄の配偶者が亡くなり、相続人は誰になるのかという相談を受けました。
☑兄の名前は鈴木太郎で、亡くなった兄の妻は華子(旧姓:佐藤)です。
☑相談者は鈴木次郎で太郎の弟です。
☑太郎と華子の間には子供はいませんでした。
太郎と次郎の両親は既に他界しています。
華子の両親も既に他界しています。
相談の内容は、兄が3年前に亡くなった時に、妻の華子が財産の大半(3分の2)を相続しているが、
華子が相続した財産には、
・鈴木家の先祖伝来の土地や建物と
・兄の太郎が汗水流して蓄えた預金が5,000万円程ある
とのことでした。
この相談を受けて、私は聞かなくても相談者の気持ちは分かります。
〝鈴木家の先祖が守って来た、先祖伝来の財産は果たしてどこに行くのか?〟なのです。
この場合、鈴木次郎さんにはお気の毒ですけど鈴木家の先祖伝来の財産は、華子の兄弟姉妹が相続します。
いわゆる〝佐藤家の物〟になる訳です。
それでは、華子が太郎よりも先に亡くなっていたらどうでしょう。
この場合は、太郎の財産は配偶者がいない訳ですから太郎の兄弟姉妹が法定相続人となり、先祖伝来の鈴木家の財産と太郎が築いた財産は太郎の兄弟姉妹が相続することになります。
もし太郎の兄弟姉妹が亡くなっていたら、兄弟姉妹の子供(太郎の甥・姪)が代襲相続により相続することになります。
夫婦が同日に連続して亡くなった場合
夫婦で車に乗って高速道路を走っていて事故に巻き込まれた。
その後救急車で病院に運ばれ、どちらかが先・どちらかが後に死亡という判断がなされたら・・・。
この二人の財産の行方はどうなってしまうのでしょうか?
ここでも、子供がいる・いないで答えは随分と変わって来ます。
子供がいる場合
子供がいる場合は特に問題はありません。
先に亡くなった方の法定相続人も後に亡くなった方の法定相続人も子供だからです。
結局は、夫婦共の全財産は子供が相続する事になります。
問題は、子供がいない場合です。
子供がいなく、後に亡くなった方の親が存命の場合
救急車で運ばれて、病院でどちらかが先と判断されたら、
☑先に亡くなった方の財産は、後に亡くなった方が3分の2を相続します
☑残りの3分の1の財産は、先に亡くなった方の相続人が相続します
そして、後に亡くなった方の法定相続人(ご両親)がこの方の財産を相続しますから、
☑先に亡くなった方の財産3分の2と
☑後に亡くなった方の全ての財産は、後の方の法定相続人が相続することになります。
子供がいなく、後に亡くなった方の親が既に他界していた場合
後に亡くなった方の両親が既に他界している場合には、後の方の兄弟姉妹が相続人となります。
☑先に亡くなった方の財産は、後に亡くなった方が4分の3を相続します
☑残りの4分の1の財産は、先に亡くなった方の相続人が相続します
そして、後に亡くなった方の法定相続人(兄弟姉妹)がこの方の財産を相続しますから、
☑先に亡くなった方の財産4分の3と
☑後に亡くなった方の全ての財産は、後の方の法定相続人が相続することになります。
このように、死亡のタイミングが〝後か先か〟の違いで財産の行方は大きく変わってくるのです。
夫婦が同日に同時に亡くなった場合(同時死亡の推定)
次に夫婦で車に乗って高速道路を走っていて事故に巻き込まれ同時に亡くなった場合のお話です。
「同時死亡」、可能性がない事ではありません。
あまりに不幸な出来事ですが、救急車が到着したら既にどちらも死亡していた。
どちらが先か後か分からない。
このような時は相続の問題はどうなるのでしょうか?
この場合には、夫婦は〝同時に死亡したと推定〟されますから、上記の時間差での死亡時とは異なり、
〝どちらも配偶者の財産を相続することは出来ません!〟
結果として、
☑夫の財産は夫の法定相続人
☑妻の財産は妻の法定相続人が相続する事になります
さらにこの場合も、子供がいるかいないかが大きく影響して来ます。
・子供がいる場合は上記と一緒で、夫婦の財産は全て子供が相続し、
・子供がいない場合は、夫と妻のそれぞれの相続人が財産を相続する事になるんです。
今回のおさらい
夫婦が同じ日に死亡して後か先かの場合、又は同時死亡の場合は、財産の行方が変わります。
例えば、
☑夫、妻いずれかの親せきが夫婦共に音信不通で何の付き合いもない
☑又は、夫婦の財産の蓄積に何も協力していない場合であっても
☑夫婦共に仲良く暮らしてきた親せきを押しのけて相続権を得るという事がありますので、
相談の内容によっては、本当に気の毒な方がおられることも事実です。