税務調査に強気な税理士 vs 協力的な税理士 お客さんのためになるのはどっち?
どこの組織でもあるように、国税にもOB会と言うものがあります。
このOB会では国税局や税務署に務めた後に税理士になった人達が、研修をしたあとに懇親会をします。
まぁ、いわゆる飲み会があるんですけど。
みなさんアルコールが入ると色んな本音が出てきますよね。
話を聞いていると色々と勉強になる話も出てきます。
しかし、ある懇親会で「先日の税務調査で税務調査官を言い負かしてやった!」と、ちょっと自慢げに話しておられる方がいました。
皆さんは、自分を担当してくれている税理士が税務調査官を言い負かすことが出来たら「うちの税理士先生は頼りになるなぁ!」と思われるかもしれませんね。
けど実際は逆なんです。
税務調査で調査官を言い負かすことはデメリットにしかなりません!
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税理士が強気な態度をとると税務調査官は闘志を燃やす
皆さんも普段の生活の中で、対応や態度が余りにも悪い人がいれば、ちょっとムカッとしてしまう事もありますよね。
税務調査官と言えども人間ですから、同じ事なのです。
調査官が「金庫や重要書類を保管している保管庫を見せて頂いてもいいですか?」と伺いを立てたときに、
税理士が「何故そんなものまで見る必要があるんだ!理由を言え!」と、こんな態度をとればどう思うでしょう。
その税理士に依頼をした依頼者は「税務職員にこんなにきっぱりと物が言えるなんて、頼りになるなぁ!この先生に任せて良かった!」と思われるかもしれません。
しかしそんな態度をとられた調査官はどう思うでしょうね?
「何か隠してるんじゃないか?」や、極めつけには「この野郎とことん調査してやるぞ!」と内心思っているんじゃないでしょうか。
税務調査官に敵視されればどうなるか?
やる気になった調査官は、その税理士の担当先を徹底的に調査をします。
取引先の金融機関・銀行に行ったり、取引先の会社に【反面調査】をするのです。
こうなってしまうと、
➡税務調査は長引き
➡取引先の銀行からは「あの会社、税務署にやたらと調べられてるけど何かやらかしてるんじゃ?」とか
➡取引先の会社からは「お宅のせいでウチの会社まで痛くもない腹を探られて、とばっちりをうけてるんですけど・・・」なんて苦情もでるかもしれません。
➡徹底的に調べ上げられて追加で納税する税金の額も増える事になります。
➡依頼主はそんな状況で精神的苦痛を受けるでしょう。
税理士は依頼人(納税者)の側に立つ税の専門家です。
依頼主の事を第一に考えて、依頼主が不利になるような事は絶対にしてはいけません。
税務調査官がやってきたときに強固な態度をとれば、その場では依頼者は安心感や信頼感を持つでしょう。
しかし、そのような強固で非協力的な態度は結果的に依頼者を不利な立場するのです。
国税OB税理士の強みとは
私はつまらないところで税務職員を刺激しても、何一ついいことはないと思っています。
なので税理士となった今、調査立会の際には調査官の思いのまま好きにやってもらう姿勢で挑んでいます。
その方が、税務調査官を無駄に発奮させず、絶対に依頼者のためになるのですから。
国税OB税理士の強みと言うのは、いままで自分が調査官として数多くの調査をしてきたその経験です。
だからこそ税務調査を受けることになっても、税務署の目線で
➡この案件の問題点(弱いところ)
➡調査官がどこを攻めようとしているか
➡最後に落ち着くところ(修正金額の落としどころ)
などが手に取るようにわかるわけです。
わざわざ調査官を刺激して発奮させなくても、
➡税務署が攻めて来そうな箇所を補強して
➡いつでも答弁できるように準備をしていればいい
のであって、税務調査官を言い負かすような強固な態度をとる必要はないですよね。
相手に怒りの感情を抱かせても、なにも良いことはありません
余談になりますけども、私も現職時代にとある税理士さんから
「更正するならしてみろ!!」
と言われたことがあります。
もちろん私は前述のように「徹底的に調査をするぞ!」と奮起をして
- 朝9時から銀行調査に行き
- 昼はパンをかじりながら書類を見て
- 夜は銀行が「もうそろそろ閉めます」と言う午後9時まで調査をする
これを10日間続けて資料を収集していました。
すると、相手の税理士さんが私の本気度を感じたんでしょう
「話し合いをしませんか」
と言ってこられたのですが、私はきっぱりと撥ねつけて約1億8,000万円の更正処分を行いました。
くり返しになりますけど、わざわざ調査官を刺激して発奮させなくても
➡税務署が攻めて来そうな箇所を補強して
➡いつでも答弁できるように準備をしていればいい
のであって、税務調査官を言い負かすような強固な態度をとる必要はないですよね。