あなたの顧問税理士が税務署に嫌われると、いらない調査を招くかも!(贈与税)
これまでの記事で、「税務署は贈与税の調査はしていない」という話しをさんざんしましたが、
先日フッと思い出しまして
「そう言えば昔、とある税理士さんが私の先輩調査官を怒らせて、その税理士さんの関与先に対して贈与税の調査をしたなあ」
ということがありましたので、今回はその話しをします。
目次
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税務署は基本的には贈与税の調査はやっていません
通常、「税務署は贈与税の調査はしていません」
なんでかと言いますと、お金を贈与されるときは、受け取る方の預金口座にお金を入れられますよね。
でも、銀行預金口座なんて国内にどれだけあるか分からないのに
その銀行口座の中から、
「Aさんは親の預金を引き出して自分の物にされている」
なんて事務量が膨大過ぎてとても調査できるものではありません
税務署が動くのは相続が発生した時なんです
贈与をした人が亡くなった、その時には資金移動などを克明に調査して贈与の事実、名義預金の関係を調査します。
ですから通常贈与税の調査はやってません。
しかし冒頭でもお話したんですけど、私は過去に贈与税の調査をした事があるんです
税務調査官を必要以上に挑発すると贈与税の調査を招く?
私がまだ、現職の国税調査官だったころなんですが、ある先輩が相続税申告書を作成した税理士と相続人名義の預金に関して、贈与税の時効と名義預金の事で揉めていました
先輩は問題の預金はどう調べても名義預金ということで相続財産だという主張で
税理士は「これは過去に子供が贈与で貰っていたもんなんだから相続財産じゃない」という主張です
さらに、
「贈与税の時効も過ぎているから贈与税も課税出来ないだろう
課税するなら勝手に課税してくれ」
という返答までしたそうです・・
その税理士はいつも、
・贈与税の時効が過ぎていたら「その預金は名義人のもの」
・贈与税の時効がまだだったら贈与税がかからない様に「名義を使っているだけで、本当は贈与はしていない。贈与者にお金を返す」と言ってました。
度々こういうことがあったので、
先輩は「今度、先生の関与先で贈与税の時効前の預金移動を見つけたら贈与税を課税しますよ!よろしいですね!』と言ってました
税理士は一瞬黙られましたけど
結局は先輩の指摘(問題の預金が名義預金というところですね)これは受け入れられないということで話合いは決裂しました
税務署が行う贈与税の調査手法
話し合いが不調に終わった後の先輩ですが、
先輩「おいみんなあの税理士の関与先全て贈与税の調査をするぞ!」と言いました
どういう目的があるかと言うと
・関与先の資金移動を調査して時効前の資金移動は贈与税を課税する
・課税を言い渡したときに
・「名義預金だから親に返す」と言っても受け入れず
・税金を徴収して、
・その税理士の面目を潰す為です
周りの職員もその税理士を日頃から嫌っていた事もあってやりましょ!となったわけです。
もちろん自分の調査案件の仕事もありますから、これは片手間にやったんですけどね・・
では、どのように贈与税の時効前の資金移動を調べたかと言うと
・先ずその税理士の関与先を調べ
・リストを作成して
・だれがその関与先を調べるのか担当を割り当てます
・それから各自で、関与先の家族を調べて
・銀行預金照会をして
・銀行の回答内容を見て親から子、孫などに資金移動が有るかをチェックします。
そうこうしているとですね銀行からかどこからかその税理士に連絡が入ったんでしょうね
「私を狙い撃ちするのか」
と苦情を言いに来られましたがみんな知ら~ん顔で、
「こちらは調査するのが仕事ですから知ったこっちゃない」
という雰囲気でした。
自分の関与先を全て調査されて、依頼者はとばっちりで贈与税を課税され、面目を潰されたその税理士さんはこれ以降大人しくなりました。
税理士となった今だからこそ気を付けたいこと
私も税理士になった今このエピソードを思い出すと、
「この税理士のようにあんまり税務署に嫌われるとお客さんに迷惑を掛けるなぁ」と改めて思いましたね。
まぁ、でもですね国税OB調査官としてはちょっと寂しい事なんですけど、今はそのような侍みたいな職員はいませんけどね
それにしてもその税理士の関与先のお客さんは知らない所でとんだとばっちりでした。
以前にも「税務調査の際に税理士が強硬な姿勢を取っても、納税者に得なことは一つもありません!」という記事をあげていますが、みなさんも、税務調査の時の税理士の態度には、よく注意をしておいて下さい。
今日は税務署は贈与税の調査をしていませんが、税理士の対応によって、過去にやったことあるという話しでした。