【注意】夫婦共有口座は税務調査を誘発する恐れがあります!
夫婦共有口座を持っている場合、その口座内のお金の本来の持ち主は誰か? という明確な証拠がない状態ですと、
場合によっては、税務署から税務調査を受ける可能性があります。
ですので今回の記事では、
● まず〝夫婦共有財産として認識している口座の中のお金は一体誰のものなのか〟と言うところを説明したあとに
● 税務署が〝本来のお金の持主があやふやな預金〟から、税金を取る手法。
● 税務署からの追及を受けないためには、一体夫婦間でどの様にお金の管理をすればいいのか。
という部分の解説をしていきたいと思います。
目次
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①夫婦共有の口座から住宅購入資金を出す
これは以前投稿した、贈与税の調査についての記事に頂いた質問なんですが、
質問の内容としては、
住宅購入の頭金として1000万円を納めようとしてしています。 うち、200万円は私の口座から出しますが、 残り800万円は夫婦共有財産として認識している妻名義の口座で貯めているお金を使います。 妻名義の口座から800万円を下ろして私の口座に移動させ、1000万円を支払った場合、贈与税の対象になりますか?
この記事の結論ですが・・・
質問者さんからの質問内容だけでは判断が難しいのですが・・・
〝夫婦のうちどちらが、お金の本来の持ち主か〟という明確な証拠がない状態なので、
場合によっては、税務署から贈与と指摘される可能性があります。
②口座の中のお金は一体誰のものなのか
ではまず【口座の中のお金は誰のものか】という部分からお話していきましょう。
預金口座の中のお金といいますのは、
『預金口座の名義人』ではなく、
『預金口座の中に入っているお金の本来の、持ち主』の物。
という事を理解して頂く必要があります。
どういうことか、3つのケースを例に説明していきますね。
今回質問を頂いた方を〝Aさん〟としてお話を進めます。
ⅰ預金口座の名義人と本来のお金の持ち主が一致する場合
【ケース1】
● Aさんが自分で稼いだお金を、
● Aさんの口座に預金をしている場合
この場合、Aさん名義の口座の中に入っているお金はAさんの物です。
【ケース2】
● Aさんが奥さんに対して、お互いの合意のもとで贈与を行い、
● 奥さん自身が管理している預金口座に、Aさんの口座からお金を振り込む場合。
この場合でしたら、
● Aさんと奥さんの間で贈与が成立しているので、
● Aさんが奥さんの口座にいれたお金は奥さんの物になります。
ⅱ預金口座の名義人と本来のお金の持ち主が一致しない場合
【ケース3】
● Aさんが奥さんに内緒で、
● Aさんが管理している奥さん名義の口座にお金を振り込んでいたり、
● 奥さんがAさんに内緒で、Aさんのお金を自分の口座にいれていた場合、
この場合、奥さん名義の口座に入っているお金はAさんの物になるんですね。
いわゆる【名義預金】に該当します。
要はお金というのは、口座に入金するだけでは所有権は移動しないんです。
● お互いの合意の下で贈与を行う事で、
● はじめてお金の所有権が移動するんですね。
ⅲAさんの場合
では、Aさんの場合はどうなるのか・・・と言いますと、
質問の内容によると、奥さん名義の口座に入っているお金は、
“結婚後に私が生活費、として引き落とした現金のなかで余ったものを 数カ月に一度入金して貯まったものです”
と、ありました。
夫婦間で合意があるようなので、一見【ケース2】のように贈与が成立しているように見えますが・・・
“妻名義ではありますが、共有財産という認識でいます”
という事ですので、この場合、
Aさんの認識では、〝奥さんへお金の所有権が移っていない〟ことになります。
つまり、贈与が成立していないのです。
となると、
「奥さん名義の口座に入っているお金は、Aさんの物(名義預金)」
と判断することもできます。
つまり、
● 奥さんの口座の中のお金の本来の持主はAさんですから
● 自分のお金を自分の口座に移して住宅を購入するだけなので
● 奥さんからAさんへの贈与にはなりません
しかしですね・・・
奥さん名義の口座に入っているお金が、Aさんの物であるという証拠は何処にもないですよね。
口座の中のお金の、本来の持ち主があやふやな状態ですから、
● このお金を使って大きな買い物をすれば、
● 税務署から贈与を疑われることになります。
ⅳ本来のお金の持主があやふやな預金〟からどうやって税金を取るのか
今回の質問の内容の様に、
● 持ち主があやふやな状態である預金をAさん名義の口座にいれて
● 住宅購入資金にあてた場合、
税務署は「奥さんからAさんへの贈与」と主張することが可能なんですね。
税務署は
「夫は生活費の余りを、贈与税の基礎控除である年間110万円の範囲内で妻に贈与していた。長期の婚姻期間の中で、贈与額は800万円以上になった」
つまり、
「夫妻の間で贈与があった。妻名義の口座に入っているお金は妻のお金」
「妻名義の口座から800万円を夫の口座に移して住宅を購入したのは、妻から夫への贈与になり、夫は贈与税の申告と納税が必要」
と主張します。
Aさんが「妻名義の口座のお金は私が預金していたお金です。妻もその様に認識しています」と主張して、
奥さんもそれに同意しても、
● 奥さん名義の口座に入っているお金が、Aさんのお金という明確な証拠がないですから、
● 税務署に反論することが出来ないんです。
まとめ
では今回の記事のまとめです。
預金口座を共有財産として扱うのは非常に危険です!
妻名義の預金口座に、夫婦2人が共有財産のつもりでお金を入れていても、
● 税務署はその口座の中のお金を2人の共有財産とは考えず、
● 税金が取れる機会があれば、どちらか片方の財産だと主張してきます。
今回のAさんの場合は、奥さん名義の口座の中のお金の〝本来の持ち主は誰か〟というところがあやふやな状態ですから・・・
お2人が、【奥さん名義の口座の中のお金はAさんの物である】と認識して、
● 800万円をAさんの口座に移して住宅の購入費用に充てれば、
● 税務署はこれを否認して奥さんからAさんへの贈与と主張する事ができます。
では、お2人が【奥さん名義の口座の中のお金は奥さんの物である】と認識していればいいのかというと、この場合も問題があります。
● 800万円を奥さんが出したら、当然Aさんは贈与税を払う必要があります。
例えば、
● 住宅購入費が頭金も含めて2,000万円だったとして、
● その内800万円を奥さんが出して、
● 残り1,200万円をAさんが出したとしましょう。
奥さんが出した800万円分は、今回の例で言えば購入費全体の5分の2です。
住宅を登記する時に
● 住宅の5分の2は奥さんの物
● 5分の3はAさんの物として夫婦共有名義にすれば
奥さんが住宅購入費として800万円を出しても、Aさんへの贈与にはならない訳です。
ですが、これでもまだ問題は解決していません。
何回も言ってますが、奥さん名義の口座の中のお金の〝本来の持ち主は誰か〟というところがあやふやな状態ですから。
税務署は
「奥さんの口座から支払った800万円は、元々Aさんのお金である」
「住宅を共有名義にしたのはAさんから奥さんへの贈与」
と主張する事も出来てしまうんです。
どんなに仲の良い夫婦でも税務上は他人ですから、どちらの預金かハッキリしないお金は後々問題を起こすことになるんです。
ⅰ夫婦間でのお金の管理
では夫婦間でのお金の管理はどのようにすればいいのか・・・と言いますと、
『口座の名義人と、口座の中のお金の本来の持ち主は同じにしておく』事が重要です
● 夫婦それぞれが自分で稼いだお金は、
● 各自 自分名義の口座で管理をするようにしましょう。
また、
● もしも現状に置いてキチンと贈与が行われていない状態で、
● 旦那さんのお金を奥さんの口座に預金していましたら、
税務署から「奥さんの口座のお金は誰のお金なのか」と追及されかねません。
そうならない為に『預金を正式に奥さんのお金とする』には、3つの手順を踏む必要があります。
ⅱ預金を正式に奥さんのお金にするための手順
この手順は「へそくりは旦那にばらしましょう」という記事で詳しく説明していますので、今回は簡単に紹介します。
①一度旦那さん名義の口座に、奥さんのへそくり、ないし夫婦共有の預金を戻す
②そのうえで、夫婦間で贈与契約書を作成する
③最後に、旦那さん名義の口座に戻したお金を奥さん名義の口座に振り込めば
そのお金は奥さんのお金、ということになります。
こう説明すると、
「でも一度妻名義の口座に入れたお金を夫名義の口座に移したりしたら、私から夫への【贈与】になって、夫は【贈与税】を払わないといけないのでは?」
と、この様に思われるかもしれませんが、
この場合、夫婦間でのお金の流れを「正しい形に戻しただけ」ですから、税務署はこの行為を贈与とは言いませんので安心して下さい。
このように、
● 奥さんが持っている「へそくり」や、「あやふやな夫婦共有のお金」を、
一旦旦那さんに戻すことで、
● 夫婦間でのお金の境界線をキチンと正すことが出来るんです。
そのうえで、
● 旦那さんから奥さんにお金を贈与するという契約書もありますし、
● 通帳には旦那さんから奥さんにお金が移動した事実が載っています。
これで、もし旦那さんが亡くなってしまわれた時に、奥さんが高額な預金を持っていたとしても、
税務署に対して「この預金は正真正銘お奥さんの物である」という証拠示せるんですね。