思わぬ贈与の落とし穴!同族会社の債務を免除したら、子供に贈与税が掛かる!?
相続や贈与においては、「こんな事で課税対象になるのか!」ということが往々にして起こります。
これについては課税対象となる方に事務所に来て頂いて説明してもなかなか理解して貰えません。
今回はタイトルにもあるように、そんな思わぬ贈与の落とし穴のお話。
経済的利益の贈与とは
相談者の方は5年前に親子でお金を出資し、株式会社A商事を設立していました。
A商事は資本金1,000万円の会社で、出資の持分は親子半々で各500万円づつ出資されていました。
これまで、A商事の業績は良かったので、
・土地、建物が4,000万円 ・預金が1,000万円 ・債務が2,000万円です。
(債務の2,000万円は、親がA商事に貸し付けている貸付金)
今回、会社の財務の健全化を図るために、親がA商事に対する貸付金について債務免除をしました。
ここまでですと、一般的には「どうということはない、何か問題があるの?」と思いがちですけど、これで子供が贈与税の対象になるのです。
今回のケースは『経済的利益の贈与』ということになるのですが、なぜこうなるのかというのをこれから説明していきます。
債務免除や現物出資が贈与になったケース
会社の設立当時、一株の株式の発行価格を500円としますと、出資金は500万円ずつですから、親子各1万株ずつ所有することになります。
もちろん業績がありませんから、一株当たりの株価は500円です。総発行株式数は2万株です。
その後業績が伸び、親が債務免除する前の財務状態は、財産が5,000万円、債務が2,000万円ですから純資産は3,000万円になります。
これを総発行株式数の2万株で割りますと、一株の株価は1,500円です。
今回、債務免除した訳ですから、資産は5,000万円で債務はゼロ円です。
5,000万円を2万株で割りますと一株の株価は2,500円になります。
子供にしたら〝何の負担もしていないのに〟自分名義の株式の株価が債務免除の前後で、一株当たり1,500円から2,500円に価値が上がりました。
1,500円から2,500円の差額は1,000円です。
所有株数は1万株ですから、子供は1,000万円を無償で手にしたということになります。
なのでこの場合は、
〝子供が親から1,000万円の贈与を受けた〟ということになるのです。
この債務免除→贈与税の課税の流れは、皆さんにはなかなか理解してもらえない事で、
『そんな馬鹿な。』と言われる時もあります。
同様のケースで、現物出資したような場合も一株の株価を引き上げますから、贈与になる場合があります。
債務免除や現物出資が贈与にならないケース
逆に同じ様なケースで贈与にならない場合としては、
仮に、資産が1,000万円で債務が3,000万円である場合に、『2,000万円の債務免除』や『2,000万円相当額の土地を現物出資した場合』は、
結果として、資産と債務がプラスマイナスゼロになるだけで、1株の株価はゼロですから経済的利益、すなわち贈与は発生しないということになります。
このように会社の場合には、株価を基にして経済的利益があったかを判定しますが、個人間の場合には、また違います。
個人間で債務免除をした場合
仮に、親が子供に1,000万円を貸していたとします。
親が、この貸付金を子供に対して債務免除したとしますと、
・子供は1,000万円の借金が0円になった訳ですから
・経済的に1,000万円の利益を得たということになります
なので〝1,000万円が贈与税の対象になります!〟
このように、直接現金や預金を渡したのだけが贈与ではなく、思いがけない形で贈与税の対象になることがあります。
なので会社を経営されていて、その会社に対する貸付金を返済しなくても良いと債務免除されるような場合などは、贈与税の課税に注意が必要です。