【重要】今年が暦年贈与のラストチャンス!?今から実行すべき最も効果的な節税対策を解説
【当該記事は2021年11月に作成した記事です】
現在自民党税制調査会では、『相続・贈与の一体化課税』の改正案が本格的な検討段階に入っており、早ければ来年、2022年の4月1日から、これまでの『暦年贈与』の形が大きく変わる可能性が出てきました。
では『相続・贈与の一体化課税』が導入された場合、現在の暦年贈与はどの様に変わるのか、ですが、これについては、現状専門家の間でも意見が分かれている所でして、
・暦年贈与(年間110万円まで非課税)そのものを『廃止』して、
・贈与者が生涯に亘って行ってきた贈与は、
・贈与者が亡くなった際に相続財産として纏めて課税しますよ!という『暦年贈与廃止説』が導入されるだろうというものと、
暦年贈与(年間110万円まで非課税)自体は継続させるけれど、
・現状の『3年以内の贈与加算』に関する期間を更に伸ばして、
・『相続開始前の5年以内の贈与』、『10年以内の贈与』、『15年以内の贈与』は亡くなった方の相続財産として足し戻して下さいね!という『贈与加算の期間延長説』が導入されるだろうという、2つの説が存在しています。
では実際に『相続・贈与の一体化課税』が施行される場合、
・暦年贈与自体を廃止する方向でいくのか、
・贈与加算の期間を10年、15年と延長する方向でいくのか、
私個人の意見としてはどちらか、と言いますと、
恐らく『相続・贈与の一体化課税』が導入される場合、いきなり暦年贈与自体を廃止するというのは、システムの整備(マイナンバーと銀行口座の紐付け)や、税務署側のコスト面から考えても暫くは難しいでしょう。
ですので、来年以降に『相続・贈与の一体化課税』が施行される場合には、
・従来の『3年以内の贈与加算』から『10年以内の贈与加算』へと
・加算期間の延長を行うという方向で、改正が行われるのではないかと考えています。
そしてその改正日が、早ければ来年の2022年4月1日から始まる。
ということは、実質的に今年の残り約2か月間と来年の1月から3月31日までが、従来のお得な暦年贈与を最大限に活用できるラストチャンスになるかもしれません。
ですので今回の記事では、
①『相続・贈与の一体化』施行前の今が暦年贈与を活用できるラストチャンスとなる理由
②『相続・贈与の一体化』を見据え今年行うべき最も効果的な節税対策
③『相続・贈与の一体化』に関して寄せられた質問とそれに対する回答
④『相続・贈与の一体化』は相続税が掛からない家庭にも大きな影響がある
という4つのテーマについて解説をして行きたいと思います。
目次
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①『相続・贈与の一体化』施行前の今が暦年贈与を活用すべきラストチャンスとなる理由
ではまず初めに、『相続・贈与の一体化』が施行される前の今が、暦年贈与を最大限に活用出来るラストチャンスになる、という理由についてですが、
冒頭でもお話した様に、
仮に来年の2022年4月1日から『相続・贈与の一体化課税』が施行されますと、もう私達はこれまでの様に「生前贈与を利用して相続税の節税対策を図る」、というプランを実行するのがとても難しくなります。
何故かといいますと、
『相続・贈与の一体化』が施行されると、もうその改正日以降は、
・相続が発生する前の10年以内に行われた贈与に関しては、
・亡くなった方の相続財産として強制的に足し戻しされることが想定出来るからです。
つまり日本人男性の多くが80歳前後(女性87歳)で亡くなる現代において、
死亡前の10年間に行われた贈与が足し戻しの対象になるということは・・・
足し戻しを回避するためには、なんと60代から贈与を開始しなければいけない事になります。
ですがどうでしょうか。
老後2,000万円問題が最近大きな問題になったばかりですし、やはり「自分の財産を60代の内から積極的に減らしていこう」、と思える方はそこまで多くありませんよね。
「でも、2022年4月1日以降に『相続開始前10年以内の贈与加算』が導入されたとしても、
孫への贈与に関しては、これまで通り贈与加算の対象に含まれないという可能性もあるんじゃない?」
「だったら配偶者や子供といった『法定相続人』への生前贈与は最初から諦めて、贈与加算の対象にならない孫に対してだけ、どんどん贈与をしていけば、問題なく贈与者の財産を減らすことが出来るんじゃないの?」と、こう思われる方もいらっしゃるでしょう。
ですが、これもあまりおススメ出来ないんですね。
確かに『相続開始前10年以内の贈与加算』が導入された後においても、
・これまで通り孫への生前贈与は亡くなった方の相続財産として足し戻ししなくても良い!という取り扱いになれば、
・引き続き孫への贈与自体は活用すべきです。
(※現状では孫への生前贈与の取り扱いについて、どう変更されるかは不明です。)
しかし、ここが重要なポイントなんですが、
確かに『相続開始前10年以内の贈与加算』が導入された後においても、これまで通り孫への贈与自体は活用すべきです。
しかし、ここが重要なポイントなんですが、
いくら孫への贈与は『相続開始前10年以内の贈与加算』に含まれないからと、
孫にだけ長期間の贈与を繰り返していても、その溜まったお金というのは、孫本人の為にしか使えないんですね。
つまり、お金を受け取っている孫がまだ未成年の場合、
・未成年の子供が祖父母からもらったお金を、
・親が管理すること自体は問題ありませんが、
そのお金を親が勝手に、
・家庭用の車の購入に使ったり、
・自宅のリフォーム代などに使用すれば、
それは子供から親への贈与となり、贈与税が課税されます。
それに、子供が成人して親元を離れた後においても、親が引き続き子供の通帳を管理していた場合、
・それは税務署から親の名義預金だと疑われる可能性がありますので、
親は子供が自立する際には、高額な預金が貯まっている通帳を子供に渡さなくてはいけません。
そうなると、子供は20代前半で高額な預金を手に入れる訳ですから、
やはり親や祖父母としては、あまりにも高額な贈与を孫だけに行うのは気が引けますよね・・・。
こういった面からも、
『相続・贈与の一体化』が始まると、
・法定相続人である子供への贈与は『10年以内のもの』は強制的に足し戻しされますし、
・かといって法定相続人でない孫だけにどんどん贈与を行うというのも、孫の将来を考えるとリスクが高い。
つまりどちらを選択しても、
・2022年4月1日以降において『相続開始前10年以内の贈与加算』が導入された場合には、
・『暦年贈与を使った節税対策』を、これまでと同じように気軽に行うのは難しくなる、ということですね。
だからこそ、『相続・贈与の一体化』が施行される前の今が、『暦年贈与を最大限に活用出来るラストチャンスになる』という訳なんです。
では、ここまでの話を踏まえた上で、
相続・贈与の一体化を見据えた、今年~来年の3月31日までに行うべき最も効果的な節税対策についてお話します。
②相続・贈与の一体化を見据えた今年(~来年の3月31日まで)行うべき最も効果的な節税対策
では勿体ぶらず、いきなり結論から申し上げますと、
『相続・贈与の一体化』を見据えた、今年(~来年の3月31日までに)行うべきたった一つの節税対策とは、
ズバリ、家族に対して『年間110万円以上の生前贈与』を行う、というものです。
どういうことか、順番に見ていきましょう。
まず、来年の2022年4月1日から『相続・贈与の一体化』が施行されると想定した場合、お得な暦年贈与を従来通り活用できるのは『いつまでか』、というと、
それは今年の残り2か月あまりと、来年2022年の1月~3月31日までとなります。
そしてその際、皆さんがこの期間内に行うべき最適な贈与額は、
・贈与税が掛からない年間110万円以内の贈与でしょうか?
・それとも贈与税が掛かる年間110万円を超える贈与でしょうか?
答えは・・・、
先ほどもお話した通り、『年間110万円以上の生前贈与』が最適な贈与額となります。
その理由としては、
・限られた時間内で贈与者の財産を減らす場合、
・贈与税が1円も掛からない110万円以内の生前贈与を行うよりも、
・一時的に贈与税を支払ってでも、 110万円を超える贈与を実行した方が、最終的に家族が納めることになる税金は安くなるからなんです。
では実際に、本当に110万円以上の贈与を行った方が将来の税金は安くなるのか、
こちらの『木村家』をモデルケースとして、見て行きましょう。
◆実際に110万円以上の贈与を行うことで得られる節税効果
・今回贈与を行うのは、父親である一徹さん(2021年10月時点で70歳)
・母親の菊さんは既に亡くなっており、
・将来の相続人は一成さんと二郎さん、
そして、一徹さんは2032年10月に亡くなられるとします(享年81歳)。
この木村家の一徹さんが、『相続・贈与の一体化』の話を聞いた上で、
①何も生前贈与をしなかった場合や、
②贈与税の基礎控除である年間110万円以内の贈与を子供2人と孫2人にした場合、
③そして、年間110万円を超える贈与を子供2人・孫2人にした場合、
それぞれの行動を取った際に、①~③の税金はどう変化するでしょうか。
ⅰ生前贈与をしなかった場合
まず、一徹さんが2021年中や、2022年の3月31日までに生前贈与を一切せずに、2032年に亡くなった場合ですね。
この場合、木村家全体の税金の計算方法としては、
一徹さんの財産1億円から、相続税の基礎控除である4,200万円(3,000万円+600万円×2人)を引いて課税対象額が5,800万円
この5,800万円に対して各自の法定相続分を掛けた後、
各自2,900万円に対して相続税の税率15%を掛け、税額控除50万円を引きますと、
一人当たりの相続税額は385万円、
つまり木村家全体の相続税額は770万円になりました。
これが一徹さんが何も対策を取らなかった場合の木村家全体の相続税額ですね。
ⅱ贈与税の基礎控除である年間110万円以内の贈与を子供2人と孫2人にした場合、
では次に一徹さんが、
・2021年の12月31日と、
・2022年の1月1日に、それぞれ110万円の贈与を子供2人と孫2人に行い、2032年に亡くなった場合、木村家全体の相続税額は幾らになるでしょうか。
先ほど同様、一徹さんの贈与前の財産額は1億円ですが、
今回はそこから子供2人、孫2人への110万円の贈与、合計440万円の贈与を年を跨いで2回行いますので(880万円)、
贈与を実行した後の一徹さんの財産額は9,120万円になります。
この9,120万円から、相続税の基礎控除である4,200万円(3,000万円+600万円×2人)を引いた課税対象額が4,920万円
この4,920万円に対して各自の法定相続分を掛けた後、
各自2,460万円に対して税率15%を掛け、税額控除50万円を引きますと、
一人当たりの相続税額は319万円、
つまり木村家全体の相続税額は638万円ということになりました。
どうでしょうか、
一徹さんが何も対策を取らなかった時と比較して、
一徹さんが今年の12月31日と来年の1月1日に440万円ずつ合計880万円の生前贈与を活用したことにより、
木村家全体が支払うことになる相続税が132万円も減らすことが出来たんですね。
ⅲ年間110万円を超える贈与を子供2人・孫2人にしていた場合、
では最後に、一徹さんが、
・2021年の12月31日と、
・2022年の1月1日に、それぞれ310万円の贈与を子供2人と孫2人に行い、2032年に亡くなった場合、木村家全体の税金は幾らになるでしょうか。
これまでと同様に、一徹さんの贈与前の財産額は1億円ですが、
今回はそこから子供2人、孫2人への310万円の贈与、合計1,240万円の贈与を年を跨いで2回行いますので(2,480万円)、
贈与を実行した後の一徹さんの財産額は7,520万円になります。
この7,520万円から、相続税の基礎控除である4,200万円(3,000万円+600万円×2人)を引いた課税対象額が3,320万円
この3,320万円に対して各自の法定相続分を掛けた後、
各自1,660万円に対して税率15%を掛け、税額控除50万円を引きますので、
一人当たりの相続税額は199万円、
つまり木村家全体の相続税額は398万円ということになりました。
ですが今回は、子供2人と孫2人のそれぞれに対して年間310万円という、贈与税の非課税枠110万円を超える贈与を行っていますので、
非課税枠を超えた部分200万円に対して、贈与税が課税されることになります。
200万円に対する贈与税率は10%で20万円、これを4人がそれぞれ2年分支払いますので、
木村家全体の贈与税額は160万円となります。
これを先ほどの398万円の相続税と合計すると、木村家全体の納税額は558万円となります。
では、これまで紹介した3つのパターンを見比べて下さい。
・まず、一徹さんが生前贈与を一切行わなかった場合の相続税額は770万円、
・そして、2021年の12月31日と、2022年の1月1日に、110万円の贈与を合計4人に行った場合の相続税額は638万円
・最後に、2021年の12月31日と、2022年の1月1日に310万円の贈与を合計4人に行った場合の相続税額は398万円、そこに各自が支払った贈与税額160万円を足して、全体の納税額は558万円
結果、何も対策をしなかった①番に比べて、310万円の贈与を4人に対して2年間行った③番は、トータルで212万円も節税をすることが出来たんですね。
ⅳ今から贈与を始める方はまずは自分の家庭の財産額を把握しよう
さてここまでの話を聞いて、「よし私の家も『相続・贈与の一体化』に向けて取り敢えず110万円以上の贈与を実行しよう!」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっと待ってください。
こまでお話してきた『110万円以上の贈与』の有効性というのは、あくまでも今回の木村家の様な資産額、家族構成の際に最大限の効果を発揮するものでして、
もしも今回の木村家の一徹さんの財産額が7,000万円でしたら、
110万円の贈与を子供や孫達に2年間行った場合も(相続税192万円)
310万円の贈与を子供や孫達に2年間行った場合も、(相続税32万円+贈与税160万円)
どちらも最終的に木村家の相続人が支払う納税額は192万円になりますし、
一徹さんの財産額が6,000万円でしたら、
110万円の贈与を子供や孫達に2年間行えば、将来の相続税額が92万円で済むのに対し、
310万円の贈与を子供や孫達に2年間行ってしまうと、将来の相続税自体は0になりますが、各自が支払う贈与税額は合計160万円となり、トータルで損をしてしまいます。
ですのでこの記事を見ておられる皆さんに伝えたいのは、
『相続・贈与の一体化』に向けて、110万円を超える贈与を活用することは、ある一定の財産額の家庭に対しては大変有効ですが、
相続税の基礎控除を少し超える位のご家庭の方が110万円以上の贈与を焦って利用してしまうと、却って贈与税の支払いで損をする場合もあるという事です。
ですのでどうか皆さんは、『相続・贈与の一体化』以降は暦年贈与の利用が難しくなるからと、急いで高額な贈与を行うのではなく、
あなたや、あなたの親御さんの財産は、現在概算でも良いのでいくら位あるのか、
・その部分をこちらの記事で確認をされたり、
・相続税専門の税理士にキチンと相談をして把握をする。
その上で、専門家に節税対策を依頼し、あなたの家に最適な生前贈与を積極的に行って頂ければと思います。
③『相続・贈与の一体化』に関して寄せられた質問とそれに対する回答
ではここからは、前回の『相続・贈与の一体化』の前編記事に寄せられた質問に対して、現状の情報から推測される私の回答についてお話して行きたいと思います。
ⅰ孫などの法定相続人以外への生前贈与の取り扱いはどうなるのか?
まず最初の質問としては、「『相続・贈与の一体化』が施行された後は、孫などの法定相続人以外への生前贈与の取り扱いはどうなるのでしょうか?」というものです。
確かに現状においては、
・亡くなった方から相続財産を受け取らない、孫や子供の配偶者といった、所謂『法定相続人以外の人』は、
・贈与者が亡くなる3年以内に贈与を受けていたとしても、そのお金を亡くなった方の財産として、足し戻す必要はありません。
ですがやはり、今回の『相続・贈与の一体化』の目的が、
・全家庭における課税の公平・中立性である以上、
・法定相続人以外への贈与に対しても、今後何らかの課税が行われる可能性は高いと思います。
そうでないと、『相続・贈与の一体化課税』自体が、意味のない改正になってしまいますからね。
じゃあ結局、法定相続人以外への生前贈与の取り扱いはどう変わるのか?ですが、
これについてはまだ何も情報が出ておりませんので、具体的な内容が分かり次第、改めて皆さんに報告をしたいと思います。
ⅱ生活費や教育費の都度贈与は非課税となるか?
では次に「『相続・贈与の一体化』が施行された後においても、今まで通り生活費や教育費の都度贈与は非課税となるのでしょうか?」という質問ですが、
これについては従来通り、非課税のままでしょうね。
親と就労前の子供や、子供と退職後の親など、 これら両者間で行われた、教育費や生活費に充てる為の「通常」の仕送りの範囲内であれば〝贈与税が課税されることは無い〟というのが、(相続税法第21条の3第1項第2号における)現状の取り扱いとなりますが、
生きていくために必要な生活費や教育費までも『相続・贈与の一体化』の枠内に入れる、というのは流石に考えられませんし、
それこそ税務署の徴収コストも膨大なモノとなりますので、課税をしようとしても不可能でしょう。
よって『相続・贈与の一体化』が施行された後においても、生活費や教育費の都度贈与というのは高い確率で非課税のままだと思います。
ちなみに、この家族間における贈与問題については、こちらの記事の方でも詳しく解説しておりますので、興味があるという方はリンクからご覧になってみて下さい。
ⅲ贈与税のお得な特例制度は継続されるのか?
次に「『相続・贈与の一体化』が施行された後においても、住宅取得資金の贈与や教育資金の一括贈与等のお得な特例制度は継続されるのでしょうか?」という質問ですが、
これについては、専門家の間でも意見が分かれている所ですね・・・。
と言いますのも、まずこのスライドを見て頂きたいんですが、
・こちらの『住宅取得資金の贈与』、れは複数の条件を満たせば、最高で1,500万円までの住宅取得資金が非課税で受け取ることが出来るという特例制度なんですが、
・この特例の期限は今年令和3年の12月31日までとなっていますよね。
つまり、『住宅取得資金の贈与』に関しては、この令和3年の12月31日までで制度が終了となり、『相続・贈与の一体化』が施行された後には、もう利用することが出来なくなるんじゃないか、という意見があるんですね。
ですがその一方で、
・いやいや、最高で1,500万円までの贈与が非課税となる『教育資金の一括贈与』や、
・最高で1,000万円までの贈与が非課税となる『結婚・子育て資金の一括贈与』の終了時期が令和5年3月31日までになっているんだから、
・そこまでは『住宅取得資金の贈与』も引き続き継続され、令和5年3月31日に一気に3つとも特例制度が終わるんじゃないか、という意見もあります。
もちろん、これらのお得な特例制度は終了されず、『相続・贈与の一体化課税』が施行された後においても、引き続き継続されて行くんじゃないか、という意見もあり、
本当に専門家の間でもどう転ぶのか分からない・・・、というのが現在の状況です。
ですがここで、私達にとって朗報となる記事を一つ紹介します。
それは『週刊東洋経済 2021年7月31日号』に掲載されている『相続・贈与の一体化』に関する甘利税制調査会会長のインタビュー記事なんですが、
「教育資金や結婚・子育て資金に関する贈与税の非課税制度についてはどう考えていますか。」というインタビュアーの質問に対して、甘利氏は、
「少子化は日本の最大の課題であり、結婚や子育ての障害を取り除くのが基本的な考えだ。教育も自立して生きていくための能力だからしっかりケアをしないといけない。
「公平原則の基本を曲げても政策効果を優先する措置はあってしかるべき。これらは政策的な意義から適用期限が終わっても残したいと個人的には考える。」という発言をされているんですね。
つまりこのことからも、
・教育資金の一括贈与や、結婚、子育て資金の一括贈与は、
・『相続・贈与の一体化課税』が施行された後においても、継続される可能性は十分にある、と考えられます。
また、これは私個人の意見ですが、『住宅取得資金の贈与』に関しては、この特例自体が物凄く人気のある制度ですし、
この特例を終わらせてしまいますと、住宅購入に関わる大きなお金の流れが、国内で激減してしまいますので、
このお得な特例制度自体は、令和3年12月31日以降も継続されるんじゃないか・・・、出来るだけ継続して欲しい・・・、この様に思っております。
④『相続・贈与の一体化』は相続税が掛からない家庭にも大きな影響がある
では最後に、『相続・贈与の一体化』が施行されると、『相続税が掛からない家庭にも影響がありますよ!』という、多くの家庭において重要となるポイントについてお話したいと思います。
ある方からこのようなコメントを頂きました。
「『相続・贈与の一体化』が施行されたとしても、ウチには相続税なんて全く掛りませんから、何も関係ないですよね!」というものです。
私はこのコメントを見た瞬間ハッとしました、
「いやいや!『一体化』が始まれば、相続税が掛からない家庭にこそ大きな影響が出るじゃないか!」と、この重要なポイントに気付かされたんですね。
結論から言いますと、『相続・贈与の一体化』で暦年贈与の廃止が行われた後には、相続税が掛からない家庭において、これまで以上に『親の預金の取り込み』が頻発し、相続争いが激化する、ということが考えられます。
どういうことか、順番に見ていきますと、
今までは、こちらの一成さんが「親の預金を兄弟に内緒で取り込もう」と思っていたとしても、
・年間110万円以上のお金を一気に取り込もうとすると、
・それが税務署にバレた場合、多額の贈与税が課税される、というある種の抑止力があったことから、
・親のお金の取り込み頻度や 金額には 少なからず・多少の遠慮がありました。
ですが、『贈与加算の期間延長』ではなく、『暦年贈与の廃止』がなされたらどうなるでしょうか?
税務署は暦年贈与が廃止されれば、贈与税自体を徴収出来なくなるのですから、調査そのものを行わなくなります。
そして、菊さんの財産額は4,000万円で、木村家の相続税の基礎控除額は4,200万円、
つまり木村家には将来相続税も掛かりませんから、
・一成さんが年間110万円を超えて、300万円、500万円というお金をドンドン菊さんの口座から取り込んだとしても、
・一成さんに対しては1円も贈与税が課税されることはないんですね。
つまり、このケースの木村家の様に、
・親が認知症や病気を患っていて、子供はその親と同居をしている、こういった方は、
・『相続・贈与の一体化』により暦年贈与が『廃止』されれば、同居家族による取り込みの危険性が高くなる、
・つまり、これまで以上に激しい相続争いが増える、ということになるんです。
ですので自民党 税制調査会の皆様には、『相続・贈与の一体化課税』が施行されると、
・贈与を行う側のモチベーションを下げるといった問題や、
・経済の活性化を逆に阻害する恐れがあるという問題、
そしてそれ以上に、
・多くの一般家庭において相続争いが頻発する(裁判所の仕事も増える)可能性が高い、という問題点が出てくるであろうことに考慮して頂き、
その上で、各界からの意見を集約した改正案の作成を切に願います。
まとめ
さて、この『相続・贈与の一体化』については、Youtubeのコメント欄を含め、私のお客さんからも沢山のご質問を受けておりましたので、今回は2週に亘って
・『相続・贈与の一体化』って何?施行されるとどう変わるの?という概要部分と、
・『相続・贈与の一体化』の施行前に行っておくべき対策についてお話をして来ました。
当事務所では引き続き、
・今年(2021年)の12月14日付近に公表される『税制改正大綱』をはじめ、
・この『相続・贈与の一体化課税』についての情報が判明次第、その内容や対応策について投稿をして行きますので、
『相続・贈与の一体化課税』の動向が気になるという方は、是非続報を待って頂ければと思います。