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【完全保存版】遺言書の基礎知識と絶対に失敗しない遺言書の書き方・作成方法!

 
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秋山 清成
相続のご相談なら、秋山税理士事務所へ。国税局・税務署で40年以上相続を取り扱ってきた税理士が、相続対策や節税方法、相続税申告、贈与税についてのご相談など親切丁寧にサポートいたします。SRS(相続リモートサービス)にて全国のお客様に対応しております。どうぞお気軽にご相談ください。

私は税務調査官時代から税理士となった現在までに、相続税の案件を2万件以上見てきた経験から、

「遺言書がある家庭ほど相続争いが起きやすい」と考えています。

 

といいますのも、相続争いが起こっている家庭の方によくよく話を聞きますと、

「父親が作成した遺言書の内容が、過去の兄弟間の贈与格差を全く考慮していなかった!」とか、

「母親が作った遺言書は長男を過剰に優遇していて、他の相続人にとって不平等な内容だった!」など、

こういった『遺言作成者と相続人達の気持のズレ』、この認識の違いこそが相続争いの原因となっているんです・・・。

 

ですが皆さんもお気付きの通り、

 

これはなにも『遺言書自体』が悪い訳ではありませんよね。

あくまでも遺言を作る側が、

残された相続人一人一人の気持ちに寄り添った、偏りのない遺言書を作成すれば、

遺言書を発端とした相続争いというのは起こらないんです。

 

こういった点からも私は、

遺言作成者と相続人達の気持が一致していない、いわゆる『間違った遺言書』に関しては、作らない方がマシ!と考えておりますが、

相続人達の気持に寄り添った、『正しい形の遺言書』でしたら、皆さんにも積極的に作って頂ければと思います。

 

ですの『正しい形の遺言書を作成』するためにも、今回の記事では以下の7つのテーマについて解説をします。

①遺言書の概要(遺言の種類・メリット・デメリット)

②遺言書を使って出来ること7選

③相続争いを起こさせない遺言書の心得

④自筆証書遺言の作り方(自筆証書遺言書保管制度)

⑤公正証書遺言の作り方

⑥遺言について視聴者から良く聞かれる質問3選

⑦信託銀行が取扱う『遺言信託』はオススメ出来るのか(結論オススメ出来ない)

今回の記事はかなりの長文となっておりますが、その分、

そもそも自分には遺言書の作成が必要なのか、

必要な場合、遺言書は自分で作った方が良いのか、それともプロに作成を依頼した方が良いのか、

なぜ秋山税理士は信託銀行が取り扱う『遺言信託』をオススメしないのか、

といった、遺言に関する必要情報をフンダンに盛り込んだ『完全保存版』の内容となっております。

 

この記事を見て頂ければ、遺言に関する初級~中級レベルの知識は間違いなく身に付きますので、是非今回の記事を皆さんの終活に役立てて頂ければと思います。

 

目次

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記事を読みたい方は、このまま下に読み進めて下さい。

 

①遺言書の概要(種類・メリット・デメリット)

それではまず、遺言書の概要について見て行きましょう。

まず一口に遺言書と言っても、その作成方法にはこれら3つの選択肢があります。

(自筆証書遺言・自筆証書遺言書保管制度・公正証書遺言)

 

ⅰ自筆証書遺言

自筆証書遺言というのは、

・遺言者自身が遺言の内容や日付を書き記し(自筆)、署名・捺印をした上で、

・作成した遺言書を遺言者本人が保管する、というモノです。

 

正確には、令和2年7月10日から『自筆証書遺言書保管制度』が始まったので、

一定の手続きさえ踏めば、『自分で作成した遺言書を法務局で預かって貰う』という選択肢も選べる様になりました。

 

この『自筆証書遺言書保管制度』の具体的な手続き方法については、後半の章でお話しをしたいと思います。

 

さてその上で、ここからは、

『自筆証書遺言』と『自筆証書遺言書保管制度』を比較する形で、

・遺言を執筆する際の手間はどちらの方が掛かるのか、

・形式不備を起こした際の遺言無効のリスクや、

 

・作成した遺言書の紛失、改ざんのリスクはどちらの方が高いのか、

・自筆証書遺言を保管する場合、しない場合での費用はどれくらい差があるのか、

・検認手続きに掛かる時間は、自筆証書遺言と自筆証書遺言書保管制度でどれくらい違うのか、

これら5つの項目について、見ていきたいと思います。

 

【執筆時の手間】

まず執筆時の手間についてha、『自筆証書遺言』は、

・自分一人で作成することが出来る、

・場所に縛られることなく作成することが出来る、

・修正や書き直しを比較的簡単に行うことが出来る、こういった点が優れている一方で、

基本的に全ての文言を手書きで作成しなければならない、というデメリットもあります。

 

一方『自筆証書遺言書保管制度』に関しては、

・遺言書を作成する際の『財産目録』の作成については、手書き作成・パソコンでの作成・第三者による代筆が可能となりましたが、

(※財産目録の作成は必須ではありません)

・遺言書自体は遺言者本人が手書きで作成しなくてはいけない、という部分は変わっていません。

 

【形式不備による遺言無効のリスク】

次に、形式不備による遺言無効のリスクについてですが、

遺言書というのは、執筆をする際の形式に不備があれば、その部分は無効となってしまい、

・将来相続が発生した際に、

・無効となった部分の財産について、相続人全員で遺産分割協議を行うという手間が掛かります。

 

この前提のもと、

『自筆証書遺言書保管制度』と『自筆証書遺言』を比較しますと、

『自筆証書遺言書保管制度』を利用すれば、

形式面について法務局職員のチェックが入りますので、形式不備により遺言書が無効になるというリスクはありません。

(※内容面の具体的なチェックはない)

 

ですが、保管制度を利用しない場合は、

完成した遺言書は基本的に自分でチェックをすることになりますので、

・形式面に不備が起こり、

・作成した遺言書自体が無効になるというデメリットはありますね。

 

ちなみに、遺言が無効となる形式面の不備の一例としましては、

・遺言書を作成した日付が「令和4年12月大安」といった、具体的な日付を特定できないモノになっているとか、

・遺言書に署名・捺印がない、

・また加筆や訂正、削除の仕方が正式なルールに則っていない、というものがあります。

これら形式面のルールについても、後半の自筆証書遺言の作り方で具体的に解説したいと思います。

 

【紛失・改ざんのリスク】

次に、遺言書の紛失・改ざんのリスクについてですが、

自筆証書遺言書保管制度を使い、遺言書を法務局に預けておけば、

作成後の紛失・改ざんのリスクはありません。

 

ですが、保管制度を使わずに自分で遺言書を保管している場合、

・将来的に遺言書自体を無くしてしまったり、

・家族が遺言書の存在を見つけることが出来ないといったリスクは、当然に発生しますね。

その他にも、自筆証書遺言の『修正や書き直しが比較的簡単にできる』という特性上、

・家族が勝手に遺言書の内容を改ざんしてしまう

というリスクも生じるので、その点はしっかりと心に留めておく必要があります。

 

【費用】

ではそんな自筆証書遺言は、作成する為にどれ位の費用が掛かるのかと言いますと、

・自筆証書遺言書保管制度を利用しない場合は、作成費用は無料、

・保管制度を利用する場合は、保管申請手数料として3,900 円が必要となります。

 

自筆証書遺言に関しては、これ以外のコストは掛かりませんので、

この後にお話する公正証書遺言よりも『遥かに安い費用で遺言書を作成出来る』という点は、やはり魅力ですね。

 

【検認手続きの時間】

では最後の比較として、検認手続きに掛かる時間は、自筆証書遺言と自筆証書遺言書保管制度でどれくらい違うのか、について見ていきましょう。

自筆証書で作成された遺言書というのは、相続発生後に勝手に中身を確認(開封)してはいけません。

それは相続人全員の同意の元でも同様です。

 

なぜなら自筆証書で作成された遺言書というのは、

「第三者による偽造等が行われていないかを確認するため、相続発生後に一度、家庭裁判所で検認手続きを行う必要がある」

と民法で定められているからです。

 

この検認手続きを行わなかったとしても、遺言書自体が無効になることはありませんが、

・検認手続きを行わずに遺言書を勝手に開封してしまうと、最悪の場合5万円以下の過料に処される可能性がありますし、

(※故意の開封ではない場合、過料に処されることはまれです。)

・何よりも不動産の名義変更を行う際には、検認済証明書を添付した遺言書が必要になります。

 

ですので、遺言者が自筆証書遺言を残されていた場合は、勝手に中身を確認(開封)せず、家庭裁判所で検認手続きを行って頂ければと思います。

また、誤って開封してしまったとしても検認を受ける事は可能ですので、必ず検認手続きを行うようにして下さい。

 

さてそんな検認手続きに掛かる時間ですが、家庭裁判所に検認の申し立てを行ってから実際に検認が行われるまでの期間は、だいたい1~2カ月程度を見越しておく必要がありますね。

ですが、『自筆証書遺言書保管制度』を利用する場合には、この検認手続き自体が必要ない、という点は覚えておいて下さい。

 

ⅱ自筆証書遺言書保管制度

では次に、令和2年7月10日から始まった『自筆証書遺言書保管制度』についてもう少し詳しく見て行きましょう。

 

先程、自筆証書遺言と『自筆証書遺言書保管制度』の比較を皆さんにも見て頂きましたが、

あらゆる点において『自筆証書遺言書保管制度』の方が、制度として優れている様に見えましたよね。

 

簡単におさらいしますと、『自筆証書遺言書保管制度』を利用すれば

・遺言書を作成する為の財産目録に関しては、PCでの作成や第三者の代筆が可能となりますし、

(※遺言書本体については従来通り手書き)

・基本的な形式部分の不備によって遺言が無効になるといったリスクも、保管制度を利用する場合には職員のチェックが入るため回避が出来ます。

(※内容面の詳しいチェックはありません)

・また『自筆証書遺言書保管制度』を使って遺言書を法務局に預けておけば、その後の紛失や改ざんリスクもありませんし、

・保管制度を利用する場合、保管後に第三者による偽造等が行われることが無いため、家庭裁判所での検認手続きも必要ありません。

 

これらの比較を見れば、やはり『自筆証書遺言書保管制度』の方が自筆証書遺言よりも、あらゆる点において優れていると思えます。

 

ですがこの『自筆証書遺言書保管制度』にも、制度を利用する上での注意点がいくつか存在するんですね。

順番に解説して行きますと、

 

【自筆証書遺言書保管制度の注意点①】

・遺言者本人が法務局に出向く必要がある

まず遺言者が『自筆証書遺言書保管制度』を利用したいと思った場合、保管申請手続きというのは、郵送やインターネット上では行うことが出来ず、必ず、

・遺言者の住所地、遺言者の本籍地、遺言者の所有する不動産の所在地、

これらを管轄する法務局(遺言書保管所)に自ら出向き手続きを行う必要があります。

 

(※家族などの代理人による申請手続きは出来ません)

このことは『法務局における遺言書の保管等に関する法律』の第4条第6項においても、シッカリと明記されておりますので、

・例え遺言作成者本人が体力的・身体的に長距離の移動が困難だったとしても、

・保管申請を行う際には、所定の法務局(遺言書保管所)に出向き、必ず本人が手続きを行わなければならない、という点には注意が必要です。

 

【自筆証書遺言書保管制度の注意点②】

・顔写真付きの身分証明書が必要になる

また、自筆証書遺言の保管申請手続きを行う際には、運転免許証やマイナンバーカードといった、本人の顔写真付きの身分証明書が必要となります。

ですので、もし現在運転免許証を持っていない、若しくは既に返納済みという場合には、

『保管申請手続きの際には、マイナンバーカード等の身分証が必要になる』といった部分も忘れない様にして下さい。

 

【自筆証書遺言書保管制度の注意点③】

・内容を変更したい場合の手続きが面倒

さてその上で、一度作成した遺言書の内容を作成者本人が後々変更したいと思ったとしましょう。

ですが一度法務局に保管された遺言書というのは、その内容を変更するための手続きが結構ややこしいんです。

 

具体的な手順としては、

・遺言書を保管した法務局(遺言書保管所)に出向き、必ず本人が「保管申請の撤回手続き」を行い、遺言書を手元に戻します。

・その後、遺言書の内容を変更し(文字のみ:修正or全文書き直し)、

 

(※修正よりも書き直しの方が後のトラブルが少ないです)

・変更した遺言書を、再び本人が所定の法務局に出向き保管申請手続きを行う(手数料3,900円)。

この様な複数の工程を踏む必要があります。

ですので、『自筆証書遺言書保管制度』を利用する際には、

「将来もし遺言書の内容を変更する際には、それなりに面倒な手続きが必要となる」

という点もシッカリと覚えておいて下さい。

 

【自筆証書遺言と自筆証書遺言書保管制度はどちらがオススメ?】

ではここまで見て来た『自筆証書遺言』と『自筆証書遺言書保管制度』、将来利用するならどちらがオススメかと言いますと、それは断然『自筆証書遺言書保管制度』ですね。

もちろん保管制度に関しても、先程お話したような注意点や、改善すべき点はまだまだ残っています。

ですがそれでもやはり、『自筆証書遺言』の最大のデメリットである、『紛失のリスク』を解消できる。

この一点のみで、私は『自筆証書遺言』よりも『自筆証書遺言書保管制度』をオススメしております。

 

それくらい、自分で管理をする『自筆証書遺言』というのは、皆さんが思っている以上に将来的に紛失するリスクが高いですからね。

 

ⅲ公正証書遺言

さてそれではこの章の最後、遺言書の種類の3つ目となる『公正証書遺言』について見て行きましょう。

 

公正証書遺言というのは、

・遺言者が遺言の内容(原案)を法律のプロである公証人に伝え、

・その内容を元に公証人が遺言書を作成、

・後日遺言者、公証人、証人2名が、作成をした遺言書に署名・捺印をして、公証役場に保管をする、というものです。

 

もう少し詳しい内容について、先程お話した自筆証書遺言書保管制度と比較をする形で見て行きましょう。

 

【執筆時の手間】

まず執筆時の手間について、公正証書遺言は、

遺言者が考えた遺言内容の原案(メモ等でもOK)を持って、公証役場に訪問するか、

訪問が難しい場合は公証人に自宅に来て貰い、口頭で伝える形で作成を行います。

 

ですので公正証書遺言の場合は、

・遺言者本人が遺言書を手書きで作成する必要はありませんし、

・遺言者本人が文字を書けない状態だったとしても問題なく作成が可能となります。

 

ちなみに公証人に口頭で伝えることになる『遺言書の原案』については、公証人の方に相談をしながら、一から共同で作成することも可能です。

その際の費用としては、

・遺言書の原案を自分で用意する場合も、

・公証人の方と一緒に遺言書の原案を考える場合も、最終的に公証役場に支払う手数料は同額(概ね2万円~5万円)ですので、

「それだったら公証人と一緒に原案を考えた方がお得じゃない?」と、皆さん思われるでしょう。

 

ですが、公証人は1か所の公証役場に1人~2人程しか常駐しておらず、他の案件も抱えておりますので、

一人の方の遺言書作成相談に乗る場合、原案の完成までにはそれなりの時間が掛かります。

 

そのため、遺言作成者はその都度公証役場に足を運ぶことになりますし、

遺言を作成する為に必要となる書類も、公証人は当然集めてはくれませんので、

遺言作成者本人が全ての書類を集める必要があります。

 

ですのでこういった観点からも、遺言書の原案は

・財産に不動産が多い場合は登記の専門家である司法書士に、

・将来的に相続争いの可能性がある場合は、法律の専門家である弁護士に、

・リーズナブルな価格で遺言書の原案を作成したいという方は、行政書士に依頼をされるのが良いでしょう。 

 

【形式不備による遺言無効のリスク】

次に形式不備による遺言無効のリスクですが、これは『公正証書遺言』も、『自筆証書遺言書保管制度』もリスクはほぼ0ですね。

公正証書遺言の場合は公証人が、保管制度の場合は法務局の職員が、事前に遺言書の形式面についてはチェックをしてくれます。

 

【紛失・改ざんのリスク】【検認手続きの時間】

同様に、『公正証書遺言』も『自筆証書遺言書保管制度』も、

・遺言の作成後に各機関がシッカリと保管をしてくれますので、遺言書の紛失・改ざんのリスクもありませんし、

・改ざんの可能性がないということは、家庭裁判所での検認も必要ありませんので、検認手続きに掛かる時間は0となります。

 

【費用】

では次に、公正証書遺言を作成する際の費用について見て行きましょう。

やはり費用に関しては、圧倒的に『自筆証書遺言書保管制度』の方がお得ですね。

・『保管制度』の手数料が3,900円なのに対し、

・公正証書遺言の場合は、遺言作成者の財産額によって、概ね2万円~5万円程の手数料が掛かります。

(※手数料:公証人による作成から公証役場での保管までを含めて)

 

具体的な手数料の計算方法について、日本公証人連合会のHPに掲載されている表を元に、こちらの一家をモデルに見てみますと、

財産が6,000万円ある夫が、

・「妻に4,000万円、長女に2,000万円分の財産を相続させる」と公正証書遺言を作成した場合、

・妻に対する遺言の手数料は29,000円、長女に対する遺言の手数料は23,000円となり、合計金額は52,000円となります。

・更にここに、但し書き②の『遺言加算』11,000円がプラスされますので、

・最終的に遺言作成者が公証役場に支払う手数料は63,000円になる、ということですね。

 

【内容の修正・変更】

では、無事に遺言書の保管が終わった後に「遺言の内容を変更したい」と思った場合の比較についても見て行きましょう。

一度保管した遺言書の内容を修正・変更する場合、

 

『自筆証書遺言書保管制度』においては、

・遺言作成者本人が、過去に保管を行った法務局に出向き、一度「保管の撤回」をしてから、

・改めて遺言書を作り直す(修正・書き直し)という工程が必要なのに対し、

(※必要に応じて再び法務局で保管)

 

『公正証書遺言』の場合は、

・過去に作成した遺言書はそのままで、

・内容の修正、変更をしたい箇所を、再び公証人に伝えて遺言書を作成し、

・公証人、証人2名を交えて公正証書遺言を正式に保管することで、

新しい遺言の内容が、過去の古い内容を上書きする形(優先する形)になる、という点は覚えておいて下さい。

 

ちなみに公正証書遺言の上書きに関しては、『自筆証書遺言』で行う事も可能です。

ですがその場合、改めて作成した『自筆証書遺言』の形式に不備があると、変更前の『公正証書遺言』が正式な遺言となってしまいます。

 

ですので、その様なリスクを回避するためには、

・公正証書遺言の変更の際にも『公正証書遺言』を利用する、という選択が一番無難ですが、

・なるべく費用を抑えたい!という方は、最低でも形式面のチェックが入る『自筆証書遺言書保管制度』で遺言の変更・保管をされることをオススメします。

 

【遺言書の保存期間】

最後に、遺言書の保存期間についてですが、

・自筆証書遺言書保管制度の場合は、遺言書の作成から遺言者が亡くなるまでは基本的にずっと法務局で保管が行われることになります。

・それに対し公正証書遺言の保存期間は、原則として遺言書の保管が行われた日から20年間となっておりますが、

・多くの場合、20年を超えて30年、50年と、遺言作成者が生存している間は遺言書の原本が保管されるようになっています。

ですのでこの『遺言書の保存期間』については、あまり神経質にならなくても問題はありませんね。

 

【結局どの遺言書を作成すればいいの?】

さて、ここまで遺言書の概要として、

『自筆証書遺言』『自筆証書遺言書保管制度』『公正証書遺言』について詳しく見て来ました。

 

その上で、私自身は皆さんに、どの遺言書の作成をおススメするのかと言いますと、

 

◆遺言書の原案を自分で作成する場合

『公正証書遺言』>『自筆証書遺言書保管制度』>『自筆証書遺言』

 

◆遺言書の原案をプロに依頼する場合

『公正証書遺言』=『自筆証書遺言書保管制度』>『自筆証書遺言』

 

遺言書の原案を自分で作成する場合でしたら、上から順番に、

『公正証書遺言』『自筆証書遺言書保管制度』『自筆証書遺言』となり、

 

遺言書の原案をプロに依頼する場合でしたら、

『公正証書遺言』と『自筆証書遺言書保管制度』は、遺言作成者の年齢や身体の状態によってどちらが良いかを選択して頂いて、

『自筆証書遺言』の優先度は一番最後、

この様な順番となります。

 

もう少し具体的にお話しますと、

 

遺言書の原案を自分で作成する場合は、

やはり内容面のチェックが多少なりとも行われる『公正証書遺言』が一番オススメで、

その次に内容面のチェックは行われないけれど、形式面のチェックは行われる『自筆証書遺言書保管制度』

そして自筆証書遺言はあまりオススメしない、という感じですね。

 

遺言書の原案をプロに依頼する場合は、内容面も形式面も十分に担保がなされていますので、

・遺言者自身が高齢で、自分自身で遺言書の手書きや、専門機関への訪問が難しいという場合には、『公正証書遺言』を選択して頂いて、

・遺言者自身がまだ比較的若く、遺言書の手書きや、専門機関への訪問に問題がないという場合は『自筆証書遺言書保管制度』を選択して頂ければと思います。

 

②遺言書を使って出来ること7選

さて、先程の章では皆さんに『私がオススメする遺言書の順番』は、

『公正証書遺言』『自筆証書遺言書保管制度』『自筆証書遺言』この順番だとお話しました。

 

(※若しくは:公正証書遺言=自筆証書遺言書保管制度>自筆証書遺言)

では遺言書が持つ法的な効力についても、『公正証書遺言』は『自筆証書遺言』よりも優れているのかと言えば、全くそんなことはありません。

どの遺言書を選んだとしても、その遺言書に形式面の不備がなく『正式な遺言書』と認められた際には、法的な効力はどれも同じです。

ではこの前提のもと、

ここからは遺言書を使って出来ること7選について順番に見て行きたいと思います。

 

ⅰ任意の相手に財産を渡すことが出来る(第三者でもOK)

遺言書を使って出来ることの一つ目は、任意の相手に財産を渡すことが出来るというものです。

こちらの一家をモデルケースに見てみますと、

・この一家の父親は既に亡くなっており、

・母親は不動産3,000万円と、預金1,000万円、有価証券1,000万円を所有しています。

 

その上でこの一家の母親が、「自分の元に頻繁に顔を出し、身の回りの世話をしてくれている次女に対して、より多くの財産を残してあげたい」と思った場合、

この母親は遺言書を活用することで、

・次女に対して、不動産3,000万円と預金750万円を相続させる、

・長女に対して、預金250万円と有価証券1,000万円を相続させる、といった様に、

自分の裁量のもとで、任意の相手に対して遺産の譲り渡しを行うことが出来るんですね。

 

これがもし、母親が遺言書を作成していない状態で相続が発生しますと、

・亡くなった母親の財産は一度相続人全員の共有財産となり、

・そこから誰がどの財産を相続するかという『遺産分割協議』を行うことになります。

 

その場合、母親の『次女に対して少しでも多くの財産を残してあげたい』という思いは叶いませんので、

「特定の相続人に少し多めに財産を残してあげたい」と思った場合には、是非遺言書を活用して頂ければと思います。

 

【偏った遺言内容と遺留分】

ちなみにその際の注意点としては、

冒頭でもお話した通り、

・「私の財産は全て次女に相続させる」といった様な、偏った内容の遺言を残してしまうと、

・母親の全財産を受け取った次女は、財産を1円も貰えなかった長女から「相続人に対して最低限保証されている遺留分(法定相続分の1/2)を支払え!」と、

遺留分を請求されることになります。

 

この遺留分というのは、

 

・亡くなった方が作成した遺言書の内容に一方的な偏りがあった場合、

・相続財産を受取る権利を侵害された相続人が、財産を多く受取った相続人に対して、

・自身の法定相続分の半分までの財産を金銭(原則)で要求することが出来る、

という権利です。(※遺留分を請求出来るのは、被相続人の配偶者・子・親のみ)

 

つまり今回の長女の場合、

・亡くなった母親の財産5,000万円に対し、

・自身の法定相続分1/2の更に1/2である1,250万円までの金額を、次女に対して請求出来るという訳です。

 

遺留分についての更に詳しい内容はこちらの記事で解説しておりますので、気になるという方は是非ご覧になってみて下さい。

 

ⅱ遺言執行者を指定することが出来る

次に、遺言書を使って出来ることの二つ目は、遺言執行者を指定することが出来るというものです。

遺言執行者というのは、その名前の通り『遺言に書かれている内容を執行する権限を持っている人』のことをいいまして、

・遺言執行者の指定は未成年者と破産者以外なら、相続人でも士業でも第三者でも、誰でも自由に選択することが可能です。

 

ここで、遺言をまだ作ったことが無いという方は、

「遺言執行者って絶対に指定しないといけないの?」と疑問に思われるかもしれませんが、

そういったことは全くありません。

 

この遺言執行者が必ず必要になる場面というのは、この後にお話する、

・遺言作成者に隠し子がいる場合(認知手続き)や、

・特定の相続人から相続権をはく奪する『廃除』を行う場合に限定されています。

ですので、これらの条件に当て嵌まらない方は、無理に遺言執行者を指定する必要はありません。

(※相続発生後に遺言執行者を選定することも可能です)

 

ですがこの2つの条件以外にも、『あえて遺言執行者を指定しておくことで将来の相続手続きがスムーズにいく場面』というものがあります。

 

それはどういったモノかと言いますと、

・法定相続人以外の人物に遺言を使って不動産を相続(遺贈)させる場面です。

 

【遺贈と遺言執行者】

もう少し詳しくお話すると、不動産の登記に関しては、

・法定相続人が遺言や遺産分割協議で不動産を相続した場合、

・不動産を相続した本人が法務局で登記申請をすれば良いのですが、

・法定相続人以外が遺言で不動産を受取った場合には、

・不動産を受取った人(登記権利者)に加えて、その他の相続人全員(登記義務者)で登記申請を行うことになります。

 

ですので、

「法定相続人以外に不動産を渡したいけれど、その他の相続人達に共同登記申請といった負担を負わせたくない」という場合には、

・予め遺言執行者を一人決めておくことで、

・不動産を受取った人(登記権利者)と遺言執行者(登記義務者)の二人で、登記申請を行うことが出来るという訳ですね。

 

(※相続発生後に遺言執行者を選定することも可能です)

 

ⅲ婚姻をしていない相手との子供を認知することが出来る(遺言認知)

では次に、遺言書を使って出来ることの三つ目は、婚姻をしていない相手との子供を認知することが出来るというものです。

 

婚姻をしていない相手(例:愛人)との間に子供がいる場合、遺言者は遺言書に

「遺言者鈴木一郎と山本花子との間に生まれた下記の子を自分の子供として認知する。」

と記載をし、遺言執行者を指定しておくことで、

・将来相続が発生した際に、遺言執行者の住所地にある市役所への届け出申請の元、

・認知を受けた子供は正式な相続人としての権利を得ることになります。

 

ですので、遺言書の内容に不備や漏れがあったとして、法定相続人全員で遺産分割協議を行うことになった場合には、

・キチンと『遺言認知』によって被相続人の正式な子供となった人物も交えて、

・相続人全員で遺産分割協議を行わない限り、その分割協議は無効になる、ということは覚えておいて下さい。

 

ⅵ財産を渡したくない相続人の廃除が出来る

次に、遺言書を使って出来ることの四つ目は、財産を渡したくない相続人の廃除が出来るというものです。

これは遺言を残す側の人物が、将来の法定相続人(推定相続人)から暴力を振るわれていたり、度重なる暴言などを吐かれていた場合、

遺言作成者は遺言書の文面において『長男〇〇を相続人から廃除する』と記載をし、その具体的な理由も述べた上で、遺言執行者を指定しておきます。

 

そうすることで、

・将来相続が発生した際に、遺言執行者による家庭裁判所への申し立ての元、

・廃除の申立てを受けた長男は相続人としての権利を失うことになるんですね。

(※相続税の基礎控除のカウントからも除外される)

 

そのため相続人ではなくなった長男は、

・被相続人の財産を当然1円も貰うことは出来ませんし、

・たとえ財産を1円も貰えなかったとしても、他の相続人に対して遺留分を請求することも出来なくなる、

という訳です。

(※長男の代襲相続人である子供には相続権も遺留分も認められます)

 

【廃除が認められるのは申立ての内の2割程】

ですが廃除の申立てを行えば必ず廃除が認められるのか、と言えばそうではありません。

実際に家庭裁判所において『相続の廃除』が認められるのは、全申立ての内の約2割程度というのが現状です。

 

と言いますのも、裁判所における判断というのは証拠主義ですので、

・実際に重大な暴行があったのか、度重なる暴言があったのか、

・これらの具体的な証拠がない限り、裁判所において『廃除』が認られるのは難しいんですね。

 

ですので、特定の相続人の『廃除』を行いたいという場合には、事前にシッカリと廃除の理由となる証拠を揃えておく、ということを覚えておいて下さい。

 

ⅴ未成年の子供の後見人を指定することが出来る

次に、遺言書を使って出来ることの五つ目は、未成年の子供の後見人を指定することが出来るというものです。

 

とある夫婦がパートナーと離婚をし、親権者が自分一人となった場合、

自分にもしものことがあれば、未成年の子供の生活や法的手続きなどに支障が出ることになりますよね。

 

ですのでその予防策として、

予め遺言において『未成年の子供の後見人』を指定しておく、ということが重要になります。

未成年後見人の指定に関しては、未成年者や破産者、その他にもこれらの要件に該当する人物は指定できませんが、

 

・未成年者

・破産者で復権していない者

・家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人

・未成年者に対して訴訟をし又はした者・その配偶者・その直系血族

・行方不明者

それ以外の人物であれば、誰でも自由に指定をすることが可能です。

 

そして遺言で指定を受けた未成年後見人は、遺言者が死亡した後、子供が成人するまでの期間において、

・未成年者の身上監護や教育権、

・財産管理や代理権、これらに対しての権利と義務を持つことになります。

ですので、今現在未成年の子供がおり、親が自分一人しかいないという場合には、信頼できる両親や兄弟などに話を通しておいて下さい。

 

ちなみに『後見人』の方が、未成年の子供の財産を使い込むという可能性も0ではありません。

そういった場合を想定して、『後見人』を監督する『未成年後見監督人』についても遺言書の中で指定が出来ますので、その点も覚えておいて下さい。

 

ⅵ遺産を特定の団体や法人に寄付することが出来る(遺贈寄付)

次に、遺言書を使って出来ることの六つ目は、遺産を特定の団体や法人に寄付することが出来るというものです。

遺言によって自身の財産を渡すことが出来るのは、何も家族・親族だけではありません。

・血縁関係のない友人にも財産を渡すことは出来ますし、

・これまでお世話になった特定の団体や、自分が応援したい公益法人等へ『寄付』という形で財産を渡すことも可能です(遺贈寄付)。

遺贈寄付を行う際には、

・法定相続人の遺留分を侵害しない範囲で寄付を行っているか、

・「財産の1/2を寄付する」といった形式(包括遺贈)ではなく、個別財産ごと(特定遺贈)に寄付を行っているか、

(※包括遺贈の場合、寄付先の相手も相続人と同等の地位を持ってしまう)

 

(※遺産分割協議への参加・負債についても相続する義務が発生)

・寄付先は金銭の寄付しか受け付けていないか、

・不動産などを寄付したい場合はそれを受け付けてくれるか、

これらを確認した上で、

 

遺言作成者は遺言書の文面において

『社会福祉法人〇〇に遺言者名義の〇〇銀行△△支店の普通預金500万円を遺贈する。』

といった様に記載をし、必要に応じて相続人、若しくは専門家を遺言執行者として指定しておいて下さい。

 

ちなみに、特定の団体や法人に対して遺贈寄付を行うメリットについては、以前こちらの記事で「親が高齢になってからでも出来る相続税の節税対策」として紹介をしておりますので、気になるという方は是非ご覧になってみて下さい。

 

ⅶ特別受益の持戻しを免除することが出来る

最後に、遺言書を使って出来ることの七つ目は、特別受益の持戻しを免除することが出来るというものです。

 

まず『特別受益とは一体何なのか』について解説をしますと、

・特別受益というのは、相続人が被相続人から受けた生前贈与・もしくは遺言による贈与(遺贈)のことを言います。

つまり特定の相続人(長男)が、過去に被相続人から新居の購入費用として1,000万円の生前贈与を受けていた場合、この1,000万円部分が『特別受益』となる訳ですね。

 

その他に、特別受益に該当するもの、該当しないものはこの様になっています。

 

そしてこの特別受益というのは、生前に贈与を受けていない次男からしたら、

『長男だけが特別に受け取った利益』な訳ですから、いざ相続が発生した際には、

「兄さんが生前に貰った1,000万円は、母さんの相続財産に持ち戻した上でお互いの相続額を計算しないと不公平だ!」

 

・遺産4000万+特別受益1,000万円=5,000万円 

「そうすると兄さんは、母さんの財産4,000万円の内1,500万円を相続、自分は2,500万円を相続する形になるけれど、それで文句は無いよね!」

と、遺産分割が行われる訳です。

 

ですがこれを予見した母親が、

「過去に行った贈与に関しては持ち戻しの対象としなくても良い」

という旨の遺言を残しておけば、次男の遺留分1,250万円を侵害しない範囲で特別受益の持ち戻しが免除されることになります。

 

ちなみに、『特別受益を持ち戻すかどうか』というのは、遺産分割協議の際に両者の合意の元で自由に決めることが出来ます。

ですので、次男が「兄さんが贈与で貰った分は持戻さなくても良いよ」と納得するのであれば、

母親の死亡時の財産4000万円を兄弟で半分ずつ分けることも可能です。

 

逆にあまりに特別受益のことを追及し過ぎると

「じゃあお前のあの時の援助も特別受益だろ!」と、泥沼の相続争いに発展する可能性が非常に高いですので、

特別受益を追及し過ぎるという行為はあまりオススメしません。

 

ですので贈与を行う親御さんは、出来るだけ残される相続人間で不平等感が出ない様、生前贈与や遺贈は出来るだけ均等な金額で行って頂ければと思います。

 

さて、ここまでのお話を一旦纏めますと、

 

・遺言の種類には『自筆証書遺言』『自筆証書遺言書保管制度』『公正証書遺言』の3つがあり、

・各遺言書にはこれら7つの効力がある。

・その上で私がオススメする遺言書の順番としては、『公正証書遺言』『自筆証書遺言書保管制度』『自筆証書遺言』、この順番だとお話しました。

(※若しくは:公正証書遺言=自筆証書遺言書保管制度>自筆証書遺言)

 

この記事を見られている皆さんも、ここまでの内容から

「自分が遺言を残す際にはこの形式の遺言書を作ろう!」というイメージが何となく見えて来たのではないでしょうか。

 

ですがちょっと待ってください!

 

冒頭でもお話した通り、遺言書というのは『遺言作成者と相続人達の気持が一致して初めて』最大限の効力を発揮するモノなんですね。

この点をしっかり押さえておかないと、皆さんが作成された遺言書が原因で、将来相続争いが起こる可能性が高まってしまうんです。

 

ですので次の章では、今回の記事において一番重要となる『相続争いを起こさせない遺言書の心得』についてお話をしていきます。

 

③相続争いを起こさせない遺言書の心得

 

ⅰ遺言書の原案作りを自分一人でやってはいけない

相続争いを起こさせない遺言書の心得一つ目は、遺言書の原案作りを自分一人でやってはいけないというものです。

まず一般的に遺言書を作成する際には、

・現在自分がどういった資産、負債を持っているのかを把握する為に、『財産目録』を作り、

・この『財産目録』の内容を元に、誰にどの財産を相続させるかという『遺言書の原案』を作成することになります。

ですがその際に『遺言で相続させる財産の価値』を正確に把握していないとどうなるでしょうか。

 

一例として、こちらの固定資産税の通知書を見て下さい。

みなさんはこちらに記載されている田んぼの価値をいくらだと判断されますか?

多くの方は「この田んぼの評価額は580万円となっているから、田んぼ自体の価値も580万円だろう」と思ってしまいますよね。

 

ですが実際の所は全く違うんです。

 

遺言者が現在所有している土地というのは、いざ相続が発生した際に、

・路線価地域(主に市街地)に土地がある場合は、国税庁が公表している『路線価』で、

・倍率地域に土地がある場合は、国税庁が公表している『評価倍率』で、

相続税評価額を計算しなければいけません。

 

ですので先程皆さんに見て頂いた田んぼについても、場所が市街地にあることから、路線価での評価を行い、実際の相続税評価額は1,900万円になる訳です。

 

この部分を分からないまま、例えばこちらの一家の母親が、

「長女に預金600万円、長男に田んぼ(固定資産税評価額580万円)を相続させる」と決めてしまうと、

いざ相続が発生して、相続人達が各種財産の価値を『相続税評価額ベース』で見た際に、

・長女は預金600万円しか貰えないのに、

・長男は相続税評価額1,900万円の田んぼを貰ったことになり、

結果相続人間での不平等が発生してしまう、という訳なんですね。

 

そして、この問題は何も土地だけに限った話ではありません。

遺言者の方が亡くなられた際の財産というのは、死亡日当日の『時価(相続税評価額)』で評価を行う必要がありますから、

相続時の不平等は土地だけでなく、その他の財産でも起こる可能性があるんです。

 

ですので、この様な事態を起こさない為にも、遺言を作成する際には、

遺言書に記載する財産の価値をしっかりと計算してくれる相続の専門家に、

『財産目録』と『遺言書の原案』を作成して貰う様にして下さい。

 

【遺言書の作成はどの専門家に依頼すべき?】

その際のおススメの専門家としては、

・家族間に争いの火種が無く、財産に不動産があるという場合には、

・民法や不動産登記のプロである、司法書士(相続専門)に作成を依頼されるのが一番無難ですね。

 

また、あまりオススメはしませんが、

「遺留分を一切無視しても特定の人物に財産を残してあげたい」という場合には、

その後の相続人間の紛争を予測した上で、法律のプロである弁護士に遺言書(財産目録&遺言書の原案)の作成を頼むというのもありかもしれません。

 

その上で、司法書士や弁護士に遺言書作成サービス(財産目録&遺言書の原案)を依頼した際の費用としては、

・司法書士の場合は、事務所にもよりますが大体10万円〜15万円程度が相場となっており、

・弁護士の場合は、争いの度合いや複雑さによって依頼料が変わりますので、決まった相場というものはありません。

 

ですので遺言の作成に関して弁護士への依頼を検討される方は、一度相続に強い弁護士事務所に問い合わせをした上で、依頼をする、しないを決めて頂ければと思います。

 

ⅱ作成した遺言書原案の読み聞かせ&修正を必ず行う

相続争いを起こさせない遺言書の心得二つ目は、作成した遺言書原案の読み聞かせと修正を必ず行うというものです。

 

さて、遺言書の作成に必要な『財産目録』と『遺言書の原案』を専門家に作ってもらいましたら、

その後に必ず行って頂きたいのが『作成した遺言書原案を相続人全員に対して読み聞かせる』というものです。

 

冒頭でもお話した通り、遺言書を発端として相続争いが起こるのは、

・作成者がベストだと思った財産配分が、

・相続人達から見るとベストではなかった、という場合が多いからです。

 

その理由としては、

・過去の兄弟姉妹間における援助額の差や、

・兄妹間において孫がいる家庭といない家庭がある場合、孫への援助というのも、公平感を阻害する要因になります。

 

ですので『財産目録』と『遺言書の原案』が完成しましたら、 

・お盆やお正月という家族が集まり易い時期に相続人全員を集め、

「私の現状の財産を基に、こういった内容の遺言書の原案を作成した。」

「この家は、私と同居をして世話をしてくれている長女に譲り、残りは3人に対してこの様に財産を配分したいと思っている。」

と、この様に読み聞かせを行って下さい。

 

そしてその上で、

「私としては、私が死んだ後に皆には揉めてほしくないから、過去の援助のことを含めて、ここの内容が少し納得できないという箇所があったら話して欲しい」という様に、

・子供たちの意見も取り入れて、柔軟に遺言の内容を修正する気持ちがある旨と、

・それぞれの家庭内で話し合うための、一定の猶予期間を与えて頂ければと思います。

 

その上で、後日子供達から

「父さんの遺言の内容で何も問題は無いよ」

「私たちのことを思って遺言を作ってくれて有り難う」

という形に落ち着きましたら、そのまま遺言書を作成して頂き、

 

仮に長男から、

「長女に対する遺言内容には全く何の不満もないけれど、次女に対しては結婚費用の援助や孫2人に対する援助分もあるから、次女と僕との間で多少の差を設けてくれたら嬉しい」

という様な意見が出れば、次女の思いも聞いた上で遺言書の原案内容を変更する。

 

こういった形で遺言書の原案を作って頂ければ、遺言書を発端とした相続争いの可能性を大幅に減らすことが出来ると思います。

 

さて、ここまでの前半部分で『遺言書の概要』と、『相続争いを起こさせない遺言書の心得』について見て来ました。

ここまでの内容を踏まえ、いよいよ後半では、

・実際に自筆証書遺言と公正証書遺言を作成する具体的な手順と、

・その作成方法について解説をして行きたいと思います。

 

④自筆証書遺言の作り方

自筆証書遺言を作成するための手順としては、

ⅰ必要書類の取り寄せ

ⅱ財産目録の作成

ⅲ遺言書原案の作成

ⅳ家族への読み聞かせ

ⅴ遺言書の作成

ⅵ自筆証書遺言書保管制度を利用する

この様な流れとなります。

 

この内、4番の家族への読み聞かせ以外は、

・形式不備による遺言書の無効や、

・遺言に記載する財産の漏れを防止する為にも、相続に強い専門家に依頼されることをオススメしますが、

今回はあえて『全ての工程を自分で行う場合』の手続きについて見て行きます。

 

またここまでお話して来たように、

・自筆証書で作成した遺言というのは、将来的に紛失が起きる可能性が非常に高いので、

・作成した遺言は『自筆証書遺言書保管制度』を使い、法務局で保管をするという形でお話をしたいと思います。

 

ⅰ必要書類の取り寄せ

まずは遺言を作成する為に必要となる書類を集めましょう。

 

必要となる書類は、以前投稿したこちらの『相続が発生した際に実際に相続人が揃えなくてはいけない書類』とほぼ同じです。

 

この記事の中では、被相続人に相続が発生した場合に、相続人達が集めなければいけない書類について

・亡くなった方の自宅にある書類、

・公共機関や金融機関で集めなくてはいけない書類について、網羅的に解説をしています。

ですので遺言書を作成する場合においても、これら2つの記事を参考に必要となる書類を集めておいて下さい。

(※記事内の全ての書類が必要という訳ではありません)

(※死亡後に必要となる書類も複数含まれております)

 

ⅱ財産目録の作成

さて、無事に必要書類が手元に揃いましたら、その書類を元に財産目録を作成します。

財産目録には「こう書きなさい!」という決まった形式はありませんので、集めた書類の内容を簡単な形式でリスト化して頂ければ結構です。

 

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合、この財産目録の作成は手書きで行う必要はなく、

・A4の紙にパソコンを使って入力して貰っても良いですし、

・遺言書の原案作成と併せて専門家に作って貰っても構いません。

(※保管制度を利用する場合でも遺言書本文は本人の手書きが必須)

 

ちなみにこの財産目録自体は、法律で作成を義務付けられている訳ではありませんので、無理に作成する必要はありません。

 

ですが、自身の財産を一度目に見える形で一覧にしておいた方が、

この後の『遺言書の原案』を作る際に、財産の分配方法を検討しやすいので、

簡単な形式で良いですから、財産目録は作っておいて頂ければと思います。

(※修正が簡単なのでパソコンでの作成を推奨)

 

ⅲ遺言書原案の作成

さて、財産目録が完成しましたら、いよいよ遺言書の原案を作成して行きます。

遺言書の原案に関しては、先程の章でもお話した通り、

ある程度正確な財産の評価額(相続税評価額)を加味した上で作成をしないと、

実際に相続が発生した後に相続人間で争いが起こる可能性が高いです。

 

ですのでこの部分に関しては、相続に特化した専門家の力を借りて、2次相続までを踏まえた、最適な原案を作って頂くことを強くオススメします。

 

それでも「原案作りも自分でやってみたい!」という方は、

当チャンネルの記事や相続に関する書籍などを購入し、ご自身でチャレンジされてみても良いかもしれませんね。

 

ちなみにこの時点ではまだ原案段階ですので、

・財産の内容と、ある程度正確な財産の評価額(相続税評価額)、

・それをどの相続人に相続させるか、これらが分かっていれば十分です。

(※自分と身内だけが読む資料なので、作り方も自由です)

(※修正が簡単に行えるため、パソコンでの作成を推奨)

 

ⅳ家族への読み聞かせ&修正

続いて、遺言書の原案作成が終わりましたら、遺言作成において一番重要となる『家族への読み聞かせと、家族の反応を聞いての原案修正』です。

この部分について、もう一度おさらいしますと、

 

・作成した遺言書原案の内容と、何故その様な内容にしたのかという思いを、遺言者自らの口で相続人達に伝えて頂き、

・相続人達には家庭内で話し合うための一定の期間を与えます。

・その上で「ここをこう修正して欲しい!」という要望があれば、それらを踏まえた上で遺言書の原案内容を変更し、正式に自筆証書遺言の作成に進む。

 

この様な手順を取って頂ければと思います。

 

ⅴ遺言書の作成

さて、ではいよいよ自筆証書遺言の作成に入りましょう。

と言いましても、ここまでの手順をしっかりと実行しておれば、もう既に『完璧な遺言書の原案』が完成しておりますので、

 

・あとはその内容をもとに、遺言書作成のルールに則って下書きを作成し、

(※修正が簡単なのでパソコンでの作成を推奨)

・その下書きを見ながら自筆で書き進めるだけです。

 

この時の注意点としては、正式に保管を行うことになる遺言書は、全て遺言者の手書きで執筆をしなければならない、ということです。

ですので、

・パソコンで作成したものや、第三者に代筆してもらったもの、

・その他にも音声やビデオ映像での遺言は『無効』となってしまいますので、その点はしっかりと覚えておいて下さい。

 

それでは実際にこちらの佐藤家の一徹さんが作成した自筆証書遺言を見ながら、作成時に気を付けるべきルールについて解説をしていきます。

 

【ルール①:遺言書全文を自筆する】

自筆証書遺言のルール一つ目は、先程お話した様に、遺言書全文を自分で執筆するということです。

このルールを守らないと遺言書自体が無効となり、何の効力も発揮しませんので、必ず自筆証書遺言の本文は、ボールペンか万年筆を使い、手書きで執筆を行って下さい。

ちなみに今回のモデルケースとなる一徹さんは、

・戸建ての自宅とマンションの一室、

・それと預金口座を2つ持っていますが、これらの財産に加えて、

・遺言執行者と、付言事項についても遺言書に記載した場合、

『A4用紙』2~3枚程のボリュームとなってしまいます。

 

ですので、

・財産が更に多く、最近は字を書くのも一苦労という方は、

・自分で手書きをする必要のない『公正証書遺言』を選択されることをオススメします。

 

【ルール➁:用紙の上下左右に余白を確保しページ数を記載する】

次に、自筆証書遺言のルール二つ目は、用紙の上下左右に余白を確保し、ページ数もしっかりと記載するということです。

 

遺言書を作成する際には、

・用紙の上部と右側には5mm以上の余白が必要となり、

・左側には20mm以上、下には10mm以上の余白を確保する必要があります。

この時のコツとしては、鉛筆で薄くあたりを付けて、遺言書が完成した後に消しゴムで消すという方法が良いですね。

また、用紙の右下にページ番号を記載する必要もありますので、用紙全面に遺言を書かないようにしてください。

(※全部で1ページの場合も必要です)

(※目録などの別紙を添付する場合は、別紙も含めたページ番号にします)

 

この余白とページ番号に関するルールを守らないと、法務局で遺言書の保管を受け付けて貰えませんので、必ず規定通りに遺言書を作成して下さいね。

 

【ルール③:遺言の記載事項は具体的に書く】

自筆証書遺言のルール三つ目は、遺言の記載事項は具体的に書くということです。

 

『不動産』

例えば不動産に関する遺言を残す場合、キチンと土地、建物ごとの登記簿謄本(登記事項証明書)を法務局で取得して頂き、

・土地の場合は、登記簿謄本の内容通りに、所在、地番、地目、地積を記載する必要があり、

・建物の場合も、登記簿謄本の内容通りに、所在、家屋番号、種類、構造、床面積を記載する必要があります。

 

稀に所在の部分に『字名』が付いている場合もありますが、その場合は字名もそのまま所在の部分に記載する様にして下さい。

また相続させる不動産にマンションがある場合も同様に、マンションごとの登記簿謄本(登記事項証明書)を法務局で取得して頂き、

・一棟の建物表示の部分に、所在、建物の名称、

・専有部分の建物表示の部分に、家屋番号、建物の名称、種類、構造、床面積、

・敷地権の表示部分に、土地の符号、敷地権の種類、敷地権の割合を記載して下さい。

ちなみに、不動産の所在地や面積などを正確に書くのが面倒だからと、

・世田谷にある自宅は妻の菊に相続させる、

・杉並区にあるマンションは長男の一成に相続させるという様に、

不動産の場所や詳細が正確に特定できない表現で遺言書を作ってしまうと、その部分の遺言は無効になる可能性が非常に高いです。

 

そしてその場合、財産を受取った相続人は、この遺言書で相続登記を行うことが出来ませんので、

相続人達は改めて、無効となった箇所の遺産分割協議を行う必要があるんですね。

 

ですので、その様な2重の手間を取らなくても良いように、不動産に関する遺言を残す場合には、

・キチンと土地、建物ごとに登記簿謄本(登記事項証明書)を法務局で取得して頂き、

・その内容通りに遺言を作成して頂ければと思います。

 

また今回の遺言書では、財産を受取る相手が全員一徹さんの法定相続人ですので、

・遺言における文言も『財産を相続させる』という言葉を使っていますが、

これが法定相続人以外の人物(子供の配偶者や孫)に財産を渡す場合には、

・『財産を遺贈する』という言葉を使う必要がありますので、その点も覚えておいて下さい。

 

『預金』

次に預金に関する遺言を残す場合ですが、この場合も

・預金のある銀行名、支店名を書き、

・預金の種類は普通預金なのか、定期預金なのか、

・そして口座毎の口座番号についても、手元の通帳を見ながら記載をして下さい。

ゆうちょ銀行の場合は、普通預金は通常貯金、定期預金は定額貯金という名称になりますので、そういった部分も手元の通帳をしっかりと見ながら記載を行って下さい。

 

その際の注意点として、遺言書には口座毎の残高までは記載しないようにして下さい。

と言いますのも、預貯金というのは遺言書に記載した後においても、遺言者の意思によって引き出しも預入れも自由に行うことが可能です。

そのため遺言作成時に詳細な残高を記載してしまうと、将来相続が発生した際の実際の残高との金額が合わないというケースが良く起こるんです。

 

そうなりますと、被相続人の預金口座の解約を行う為に金融機関を訪れても、

・遺言書の内容と実際の残高が適合しないことから、口座の解約手続きが出来ず、

・改めてその口座の部分だけ、相続人間で遺産分割協議をやり直す必要があるんですね。

 

ですので口座毎の残高を記載するのは、『財産目録』や『遺言書の原案』までに留めておいて頂き、

遺言書を作成する際には『詳細な残高までは書かない』という部分はしっかりと覚えておいて下さい。

 

ちなみに一徹さんが、自身を契約者、被保険者として、3人を受取人に指定した保険に入っていた場合、

一徹さんが亡くなった後に支払われる生命保険金に関しては、『受取人固有の財産』となりますので、遺言書への記載は不要です。

(※死亡退職金に関しても同様です)

 

【ルール④:遺言執行者の記載方法】

次に、自筆証書遺言のルール四つ目は、遺言執行者の記載方法についてです。

遺言執行者を指定する場合には、この部分に執行者とする人物の氏名と生年月日を記載しておきましょう。

(※遺言執行者の指定は必須ではありません)

 

仮に長男の一成さんを遺言執行者に指定しておくと、

・自宅不動産を相続した菊さんの代わりに法務局に出向き、一徹さん名義の不動産を菊さん名義に変更(相続登記)することも出来ますし、

・銀行口座を相続した二郎さんの代わりに各金融機関に出向き、一徹さん名義の預金口座を解約(払い戻し)することも出来ます。

 

つまり遺言執行者を指定しておくことで、もしも将来菊さんが中程度以上の認知症を患い、法律行為が出来なくなったとしても、

・菊さんが遺言で相続を受けたモノに関しては、

・執行者が代わりに『相続登記』や『預金口座の解約(払い戻し)』といった代理執行が出来るという訳ですね。

(※通常中程度以上の認知症患者の法律行為には成年後見人の選定が必要)

(※遺言書に財産の記載漏れがあった場合は成年後見人を加えての遺産分割協議が必要)

こういった点からも、遺言執行者となる人は他の相続人よりも負担が大きいですので、

 

・家族を遺言執行者に指定する際は、他の相続人よりも少し多めに財産を残してあげた上で、その旨もキチンと皆に伝えてあげると良いですね。

そうすることにより、将来遺言執行者となった人も気持ちよく遺言の内容を執行してくれると思います。

 

ちなみに、「遺言執行者は家族よりも司法書士や大手の銀行に任せた方が良いんじゃない?」という疑問もあると思いますが、

・遺言執行者を法律のプロや信託銀行などに依頼すると、その執行報酬は、

・財産額3,000万円以下でも大体30万円~100万円程掛かって来ます。

 

ですので財産の種類が少なく、名義変更にも手間が掛からない様でしたら、遺言執行者は家族に指定しておいた方が良いでしょう。

 

【ルール⑤:付言事項の記載方法】

次に、自筆証書遺言のルール五つ目は、付言事項の記載方法についてです。

家族に向けて自分の思いを残す『付言事項』については、この部分に記載をします。

通常はこの付言事項で、今回の遺産配分の意図や、将来の相続争いを防止する様な文言を書くことが多いのですが、

この記事に沿って遺言書を作成されている方でしたら、『遺言書原案の読み聞かせ』時点で、既に家族とのコミュニケーションは完了していますよね。

ですので、付言事項の部分には残された家族への感謝等を執筆されておかれるのが良いでしょう。(※付言事項の記載は必須ではありません)

 

【ルール⑥:作成日は正確に記載・必ず押印をする】

次に、自筆証書遺言のルール六つ目は、作成日は正確に記載し必ず押印をするということです。

遺言執行者の指定や付言事項の記載が終わりましたら、遺言書の右下に、

・遺言を作成した日付と、

・現在住んでいる自宅の住所、

・そして署名と捺印をします。

 

その際の注意点としては、

記載する日付は「令和4年12月1日」という様に、しっかりと具体的な日付を記載して下さい。

「令和4年12月大安」といった曖昧な表現の場合、遺言書自体が無効になる可能性がありますからね。

また署名の横に行う押印は、法律上必ず行う必要がありますが、その際に選択する印鑑は、実印・認印のどちらでも構いません。

 

自筆証書遺言を自宅で保管される場合は、本当に本人が遺言書を作成した!という証拠として、

・署名の横に実印を押印し上で、

・この様に封筒に入れて、実印を押して下さい。

 

ですが自筆証書遺言書保管制度を利用される場合には、

・遺言者本人が窓口で申請をし、その後も偽造される可能性もありませんので、

・署名の横の押印は実印でも認印でも構いませんし、無理に封筒に入れる必要もありませんね。

 

【ルール⑦:訂正の作法を守る】

最後に、自筆証書遺言のルール七つ目は、訂正の作法を必ず守るということです。

遺言書が完成した後、いざ全文を読み返してみると、

・次男の二郎に相続させる三井住友銀行の口座番号が、正式には『12345678』のところ、『12345578』となっていた。

・次男の二郎に相続させるゆうちょ銀行の銀行名が、『ゆう銀行』となっていたとします。

このままですと、三井住友銀行とゆうちょ銀行の遺言部分は無効となってしまい、将来相続が発生した際には、改めて両銀行の部分に関して遺産分割協議を行うことになります。

ですので相続人達にそういった苦労をさせないで済む様、遺言書の間違いを見つけた場合には、遺言の正式ルールに則って間違った箇所の訂正を行って下さい。

 

具体的には、

・内容を修正したい場合には、訂正したいところに二重線を引き、

・二重線の上側に正しい文言を加えます。

(※縦書きの場合は二重線の左側に正しい文言を加える)

・そして変更した部分のすぐそばに訂正印を押して、遺言書の文末に、「本遺言書33行目『5』を『6』に訂正した。」という一文を記載し、

・訂正内容の下に署名を行って下さい。

 

同様に、内容に対して加筆をしたい場合、加筆する箇所に吹き出しで追記を行います。

・そして変更した部分のすぐそばに訂正印を押して、遺言書の文末に、

「本遺言書34行目第3字の次に『ちょ』の2文字を加入した」という一文を記載し、

・訂正内容の下に署名を行って下さい。

 

ちなみに、この訂正のルールを間違ってしまうと、訂正前の内容が正式な遺言内容となってしまいます。

ですので、後のトラブル防止の為にも、しっかりと遺言のルールに則った訂正を行って下さい。

 

また訂正箇所が10箇所以上にも及びますと、遺言書の文面も雑然として読み辛くなります。

ですので作成した遺言書にミスが多い場合は、訂正するよりも改めて書き直された方が良いですね。

 

ⅵ自筆証書遺言書保管制度を利用する

では遺言書が完成しましたら、紛失などのリスクを回避する為にも、出来るだけ早く法務局で保管手続きを行いましょう。

 

【ステップ①:保管場所の選定】

その際の保管場所は法務局ならどこでも良いということはなく、

これらのうちの何れかの法務局(遺言書保管所)に必ず自らが出向いて、保管手続きを行うことになります。

(※家族などの代理人による申請手続きは出来ません)

 

【ステップ②:遺言書の保管申請書の作成】

保管場所の選定が終われば、次に『遺言書の保管申請書』を作成しましょう。

保管申請書は法務局の窓口で受取ることも出来ますし、法務局のHPからダウンロードも可能です。

保管申請書に添付されている『記載例(記載上の注意事項)』を参考に申請書を書き進めて下さい。

 

【ステップ③:保管申請の予約をする】

遺言書の保管申請書が書き終わりましたら、ステップ①で決めた保管場所に対して『保管申請の予約』を行います。

ちなみにこの『保管申請の予約』を行わないまま、遺言書と申請書を手に法務局を訪問しても、遺言の保管自体を行ってはくれません。

ですので、

事前に必ず保管申請者本人が、

・法務局の専用HPから予約を行うか、

・予約をしたい遺言書保管所へ直接連絡を取るなど、『保管申請の予約』を行うようにして下さい。

 

【ステップ④:遺言書保管所に訪問し保管申請をする】

さて、保管申請の予約も完了し、いよいよ保管申請当日となりましたら、事前に予約を行った法務局(遺言書保管所)に、これら4つの書類を持って向かいましょう。

注意点として、1~4の書類の内、どれか一つでも忘れると、もうその日は保管申請手続きが出来ませんので、しっかりと準備をしておいて下さい。

あとは現地の窓口で必要書類を提出し、手数料3,900円を支払えば、無事に手続きは完了です。

 

【ステップ⑤:保管証を受け取る】

手続きが終わりましたら、窓口で「保管証」を受取ることになります。

この「保管証」には、

・遺言者の氏名、出生年月日、

・手続きを行った遺言保管所の名称、そして保管番号が記載されています。

今後はこの保管証を窓口で提示することで、

・保管した遺言書の閲覧や、

・遺言書の保管申請の撤回、

・氏名や住所変更などの変更届けを行うことになりますので、

 

保管証の紛失には最大限の注意を払って頂ければと思います。

(※保管証は再発行が出来ないため、紛失した場合は再び手続きが必要)

 

また相続発生後に、相続人の方達がスムーズに遺言書を受取ることが出来るよう、

・遺言者は法務局に遺言書を預けていることを相続人達に伝えた上で、

・『保管証のコピー』を渡しておいて下さい。

 

さて、ここまで自筆証書遺言(保管制度)の作成方法について解説をして来ましたが、

・前半でもお話した通り、あくまでも『自筆証書遺言書保管制度』は、

・遺言者自身がまだ比較的若く、遺言書の手書きや、専門機関への訪問に問題がない、という場合にオススメする方法となります。

逆に遺言者自身が高齢で、

・自分自身で遺言書の手書きや、専門機関への訪問が難しいという場合には、

・次の章でお話する『公正証書遺言』の作成をおススメします。

 

⑤公正証書遺言の作り方

公正証書遺言を作成する際の手順としては、この様な流れとなります。

ⅰ必要書類の取り寄せ

ⅱ財産目録の作成

ⅲ遺言書原案の作成

ⅳ家族への読み聞かせ

ⅴ公証人役場で遺言書を作成・保管

この内1~4までの流れは、先程『自筆証書遺言』の部分でお話した内容とほぼ同じです。

簡単におさらいしますと、

 

ⅰ~ⅳ必要書類の取り寄せ~家族への読み聞かせ

【ⅰ必要書類の取り寄せ】

まずはこれらの記事を参考に、遺言者の財産に関する書類を全て取り寄せ、

(※記事内の全ての書類が必要という訳ではありません)

(※死亡後に必要となる書類も複数含まれております)

 

【ⅱ財産目録の作成】

集めた書類の内容を簡単な形式でリスト化します。

 

【ⅲ遺言書原案の作成】

そしてそれら財産を、どの相続人に相続させるかを定めた『遺言書の原案』を作り、

 

【ⅳ家族への読み聞かせ】

完成した遺言書の原案を元に、家族への読み聞かせと、原案の修正を行う。

ざっとこの様な作成手順となります。

ただしこの手順はあくまでも、

「専門家に依頼をするのはお金が掛かるから、原案の作成までは自分で行いたい」という方向けのモノでして、私としてはあまりオススメしません。

 

やはり私としては、

・必要な財産の記載漏れを防ぎ、2次相続までを考慮した正しい遺言書の原案を作成する為にも、

・『必要書類の取り寄せ』を行う最初の段階から、司法書士等の専門家に依頼されることをオススメします。

 

ちなみにその際に掛かる費用としては、家庭毎のケースにも寄りますが、大体10万円〜15万円程度が相場となります。

(※遺言内容が複雑な場合は20万円以上掛かる場合もあり)

この後にお話する公証人役場でも、公証人や役場に対しての手数料が発生しますので、それらの金銭的な要素も考慮された上で、

・『書類の取り寄せ∼遺言書の原案作成』までを、専門家に依頼されるのか、ご自身で作成されるのかを選択して頂ければと思います。

 

ⅴ公証人役場で遺言書を作成

さて家族への読み聞かせと修正も終わり、『遺言書の原案』が完成しましたら、次は公正証書遺言の作成場所と訪問する日時を決めましょう。

 

【ステップ①:公正証書遺言の作成場所・日時を決める】

公正証書遺言は公文書という取り扱い上、法律で定められた「公証役場」での作成が原則となります。

ですので「日本公証人連合会」のHPを確認して頂き、自分の生活圏内に一番近い公証役場に連絡を取って、具体的な訪問日時を決めて下さい。

その際、身体が不自由な方の場合は、自宅に公証人を招いて遺言作成作業を行うことも可能ですので、その旨を公証役場に伝えて下さい。

(※公正証書作成手数料が1.5倍になる+公証人の日当・交通費が必要)

 

ちなみに遺言書の原案作成までを専門家に依頼されている場合は、こういった日程調整なども専門家が行ってくれます。

 

【ステップ②:公正証書遺言の内容を確定させる】

さて予約当日になりましたら、

・事前に作成した遺言書の原案と、

・遺言者と相続人との関係がわかる戸籍謄本(各1通)、

・相続人以外に財産を遺贈される場合には、その方の住民票、

・固定資産税納税通知書(固定資産評価証明書)、

・不動産の登記簿謄本、

・金融資産関係の書類など、

その他にも遺言書に記載予定の財産に関する書類を持って、公証役場に向かいましょう。

 

そこで公証人の方に遺言書の原案を渡し、口頭やメールでのやりとりを重ねながら、公正証書遺言の内容を確定させます。

(※この時点で公正証書遺言の作成手数料も確定)

 

【ステップ③:証人を2人決める】

ここまで来たら、後はもう少しです。

後日遺言者は、遺言の原案を、公証人と証人2人の前で、告げることになります。

(※遺言者の判断能力の確認・真意の確認のため)

そのため、当日に同席をして貰う証人2名を集める必要があるんですね。

 

この証人に関しては、これらの欠格条件に該当しない人でしたら、

・自分の知人に頼むでも、

・原案作成を依頼した専門家やそのスタッフの人に依頼するでも、

・公証役場に紹介してもらうでも、自由に選択することが可能です。

 

【ステップ④:公正証書遺言を完成させる】

さて証人が決まりましたら、改めて公正証書遺言を完成させる日取りを決め、当日には、

・遺言者本人の実印と印鑑登録証明書(3ヵ月以内のもの)、

・それとマイナンバーカード(又は運転免許証)等の本人確認書類を持って行きましょう。

そこで、先程もお話した様に、

 

・遺言者は遺言の原案を公証人と証人2人の前で告げ、

・公証人が遺言者の判断能力に問題がないと確認した上で、

・公証人は公正証書遺言の内容を、遺言者及び証人2人に対して読み聞かせることになります。

そしてその内容に間違いがなければ、遺言者と証人2人が公正証書遺言の原本に署名・捺印をし、全ての工程が終了です。

 

あとは、完成された遺言書の原本は公証役場に保管されることになり、遺言者は、

・原本と同じ効力を持ち、相続手続が可能な正本(せいほん)と、

・法的効力はないが、遺言内容の確認用として利用出来る謄本を受取ることになりますので、これらの書類を大切に保管しておいて下さい。

 

【ステップ⑤:公証役場に手数料を支払う】

これら全ての手続きが終わりましたら、最後に公証役場に対して一連の手数料を支払います(現金のみ)。

この際に支払う手数料は、前半でもお話した様に、遺言者の財産額と相続人に渡す金額によって変わって来るんですね。

 

具体的には、財産が6,000万円ある夫が、

・「妻に4,000万円、長女に2,000万円分の財産を相続させる」と公正証書遺言を作成した場合、

・妻に対する遺言の手数料は29,000円、長女に対する遺言の手数料は23,000円となり、合計金額は52,000円となります。

更にここに、但し書き②の『遺言加算』11,000円がプラスされますので、

・最終的に遺言作成者が公証役場に支払う手数料は63,000円になる、ということですね。

 

仮に遺言者の身体が不自由で、遺言書の作成や読み聞かせ(合計2日)を自宅に訪問して貰う形で行った場合には、

・この63,000円に対して1,5倍の手数料と、

・公証人の日当4万円(1日2万円)、

・それと交通費が掛かりますので、

これらを併せて、大体14万円程の手数料が掛かることになります。

 

ですのでこういった手数料のことも踏まえた上で、ここまでお話してきた各遺言書のメリット・デメリット部分を考慮し、

・自筆証書遺言書保管制度を利用されるか、

・公正証書遺言を利用されるかを検討して頂ければと思います。

 

⑥遺言について視聴者から良く聞かれる質問3選

ではここからは、遺言について視聴者の方から良く聞かれる質問について、簡単にですが答えて行きたいと思います。

 

ⅰ絶対に遺言書の内容通りに相続をしないといけないのでしょうか?

遺言について視聴者の方から良く聞かれる質問の一つ目は、遺言書が残されていた場合は絶対に遺言書の内容通りに相続をしないといけないのか、ですが、

 

これに関しては、たとえ遺言書が見つかったとしても、相続人全員の合意があれば、遺言書の内容に従う必要はありません。

(要:遺産分割協議)

 

ですが相続人の中に一人でも遺言内容の変更に反対をする人がいれば、その場合は強制的に相続人全員が遺言書の内容で財産を相続することになります。

(※法定相続人の遺留分を侵害している場合は遺留分の請求が可能です)

 

ⅱ相続税のお得な特例は『遺言書』でも利用可能ですか?

次に、遺言について視聴者の方から良く聞かれる質問の二つ目は、相続税のお得な特例は『遺言書』でも利用出来るのか、というものです。

相続税には、

・亡くなった方が住んでいた土地であれば、特定の条件を満たす相続人なら330㎡までを80%引きの価格で相続出来る『小規模宅地等の特例』や、

・亡くなった方の配偶者なら、最低でも1億6,000万円までの財産を非課税で相続出来る『配偶者の税額軽減』といったお得な特例があるのですが、

通常、これらの特例を使う為には、

 

・相続人間で『誰がどの財産を相続するのか』を決める遺産分割協議を行い、

・その結果を纏めた遺産分割協議書を、相続税の申告書に添付する必要があります。

 

ですが遺言書がある場合、それが小規模宅地等の特例や、配偶者の税額軽減の適用条件にあった内容であれば、遺言書を相続税の申告書に添付することで、

お得な特例を 問題なく受けることが出来るという訳ですね。

(※包括遺贈の場合は取得する持分に応じて特例が適用可能)

 

ⅲ絶対に遺言書を作っておくべき家庭の特徴を教えて下さい

最後に、遺言について視聴者の方から良く聞かれる質問の三つ目は、絶対に遺言書を作っておくべき家庭の特徴を教えて下さい、というものです。

この質問に関しては、以前こちらの記事で詳しく解説をしたので、ザックリと解説をしますが、

 

【①相続人の中に中程度以上の認知症患者(or重度の知的障碍者)がいる家庭】

まず、相続人の中に、中程度以上の認知症患者、若しくは重度の知的障碍者がいる家庭の場合、成年後見人なしに遺産分割協議を行うことが出来ません。

 

つまり遺言書もなく、遺産分割協議も出来ないとなると、その一家は相続税のお得な特例が一切受けられなくなるんですね。

(※最終的に法定相続分通りの内容で相続税の申告をするしかない)

 

ちなみに成年後見人を選任すれば、最低でも法定相続分の範囲においては特例を受けることは可能ですが、その後一生涯において成年後見人への後見料が発生します。

 

ですので遺言書の作成時点で、相続人の中に中程度以上の認知症患者、若しくは重度の知的障碍者がいらっしゃる場合、その方以外に財産を渡す代わりに、後の生活面のサポートをお願いするような遺言書を作成しておいて下さい。

 

【②子供のいない家庭】

また、子供のいない家庭においても事前の遺言書作成は必要です。

なぜなら

・夫婦間に子供がいる場合には、相続発生後の遺産分割協議は家族間で完結するのですが、

・夫婦間に子供がいない場合、相続発生後の遺産分割協議は配偶者の親(又は兄弟姉妹)と行うことになります。

 

その際に、義理の両親(又は義理の兄弟姉妹)が法定相続分での遺産分割を要求して来た場合、

・残された配偶者は金融資産や自宅不動産などを、各財産ごとに法定相続分通りに分けなくてはいけないんですね。

一度自宅不動産を共有で登記してしまうと、

・共有者の同意が無ければ、不動産を売却したり、取り壊すことも出来ませんし、

・共有者が亡くなって、その共有者の相続人がまた共有で不動産を相続した場合、

・権利者がどんどん増えて、より権利関係が複雑になって行きます。

 

そういったことを防ぎ、残された配偶者の負担を減らしてあげる為にも、子供のいない家庭においては生前に、

 

「自分の財産は全て配偶者である妻に相続させる」、という内容の遺言書を作っておいて頂ければと思います。

ちなみにこの様な著しく偏った内容の遺言書を作ると、当然に遺留分の問題が発生します。

 

ですが遺留分は金銭での支払いが原則ですので、

・たとえ相手方から遺留分を請求されても、金銭での解決を図れば良く、

・不動産を共有で登記するという最悪の事態は避けることが出来るという部分は覚えておいて下さい。

(※被相続人の兄弟姉妹には遺留分請求権はありません)

 

【③離婚した前のパートナーとの間に子供がおり、現在再婚をしている家庭】

最後に、離婚した前のパートナーとの間に子供がおり、現在再婚をしている家庭においても遺言書の作成をオススメします。

といいますのも、以前のパートナーとの間の子供というのは、たとえ何十年離れて暮していたとしても、亡くなった方の相続人となるんですね。

 

この場合、遺言書がないと、残された相続人は連絡先も分からない相手を見つけ出し、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。

 

そして相手側には当然、民法で定められた法定相続分を相続する権利がありますから、先程お話した様な『不動産の共有問題』等が起きやすいんです。

そういったことを防ぐためにも「自分の財産は全て配偶者である春子と、子供の小春に相続させる」といった内容の遺言書を作っておいて下さい。

 

この場合も先程同様に遺留分の問題が発生しますが、

・たとえ相手方から遺留分を請求されても、金銭での解決を図れば良く、

・不動産を共有で登記するという最悪の事態は避けることが出来るんですね。

更にその上で、前のパートナーの子供から請求される遺留分を少しでも減らしたいという場合には、受取人を現在の家族達にした生命保険に加入しておくという方法もあります。

 

自筆証書遺言の作成パートでもお話しましたが、

・生命保険金というのは、受取人固有の財産となりますので、

・遺留分の請求対象にはなりません。

そういった観点から、受取人を現在の家族達にした生命保険に加入しておくことで、自身の財産額を生前の内に減らしておき、結果的に遺留分の計算の元となる総財産額自体を減らしておく、という方法も覚えておいて下さい。

 

⑦信託銀行が取扱う『遺言信託』はオススメ出来るのか(結論オススメ出来ない)

ではいよいよ最後の章です。

最後の章では、今話題の信託銀行が取り扱う『遺言信託』は、皆さんにオススメ出来るのか、という部分についてお話したいと思います。

ずばり結論としては、私は『遺言信託』を皆さんにオススメは出来ません。

 

その具体的な理由について、順番に見て行きましょう。

 

【遺言信託の概要】

まず『遺言信託』とはどういったサービスなのかと言いますと、

・信託銀行などの金融機関が、遺言者の代わりに遺言書の作成から保管までを行い、

・そして相続が発生した後には、信託銀行の遺言執行者が遺言書の内容を執行してくれるというものです。

 

遺言信託を利用する際のメリットとしては、

・遺言書作成に必要となる大部分の作業を信託銀行に任せることが出来るので、遺言者の負担が減る、

・遺言作成時に税額的に有利な財産配分を、銀行お抱えの税理士に提案して貰える、

・遺言執行者に指定した人が先に死亡したり、遺言執行者に指定した専門家が先に廃業するといったリスクがない、こういったものがあります。

その上でこの『遺言信託』は、年々認知度が上がって来ていることもあり、実際のサービス利用件数も、ここ数年で約1万件ペースで増加しているんですね。

 

では何故私は、毎年約1万件ペースで利用者が増えている『遺言信託』を、皆さんにオススメしないのか・・・、ここからはその具体的な4つの理由についてお話して行きます。

ⅰ信託銀行に支払う手数料があまりにも高額

ⅱ遺言執行手数料の中に専門家への報酬は含まれていない

ⅲ戸籍謄本や財産関連の書類は遺言者本人が収集(相続発生後は相続人が収集)

ⅳ遺言信託で出来ることは、司法書士等の専門家でも十分に対応可能

 

ⅰ信託銀行に支払う手数料があまりにも高額

まず、私が遺言信託をオススメしない理由の一つ目は、

信託銀行に支払う手数料があまりにも高いということです。

 

信託銀行に支払う手数料について、大手信託銀行3社を比較してみましたが、

 

まずは遺言書の作成料金といった、基本手数料が大体30万円程かかります。

・ですがこの遺言書の作成料金というのは、遺言書の原案までのことを指しますので、

・原案を元に作成する公正証書遺言の作成費用に関しては、別途遺言者が公証役場に支払う必要があります。(※公証役場への手数料:2万~5万円(財産額によって増減))

 

さらに遺言信託を利用する場合は、作成した遺言書の正本を銀行で保管することになりますが、その際の保管料として毎年6,000円程の手数料が掛かります。

(※原本は公証役場で保管)

ちなみに、遺言信託を利用せずに、自分で遺言書の正本を保管する場合は、勿論手数料は0円です。

(※紛失した場合も、公証役場で再発行可能)

その上で遺言内容に変更があった場合は、5万円~10万円程の変更手数料を支払い、遺言書の変更を行うのですが、

 

この際に作り直すことなる公正証書遺言の作成費用についても、別途遺言者が公証役場に支払う必要があるんですね。(※公証役場への手数料:財産額によって変動))

 

そして実際に相続が発生した後には、信託銀行が遺言執行者として、遺言内容を執行することになりますが、この際に相続人が支払う費用は最低でも110万円です。

これはあくまでも財産額が5,000万円以下における場合の最低報酬額ですので、財産額が5,000万円から1億円、2億円と増えていく毎に、相続人が信託銀行(執行者)に支払う遺言執行手数料は増えていくことになります。

 

では遺言執行サービスを付けずに、遺言書の原案作成と保管だけを依頼する場合、信託手数料はいくらになるのでしょうか。

 

そもそも、遺言書の原案作成・保管だけを取り扱っている信託銀行自体があまり多くないのですが、サービスを行っている銀行の一例としてはこちらになります。

遺言書の原案作成を司法書士や行政書士に依頼した際の報酬が、大体相場で10万円〜15万円程度ですから、信託銀行で遺言書の作成と保管だけを依頼しても倍以上の費用が掛かってしまいますね。

(※正式な公正証書遺言の作成費用(公証役場に支払う)は別途遺言者負担)

(※公証役場への手数料:2万~5万円(財産額によって増減))

 

ⅱ遺言執行手数料の中に専門家への報酬は含まれていない

次に、私が遺言信託をオススメしない理由の二つ目は、

遺言執行手数料の中に専門家への報酬は含まれていない、ということです。

 

遺言内容に不動産があった場合、信託銀行は提携の司法書士に相続登記の手続きを依頼することになるのですが、

・その際に掛かった不動産の登録免許税や、司法書士への報酬は、

・信託銀行側から相続人に対して別途請求されることになります。

 

また、相続税の申告が必要な方に関しては、税理士に申告書の作成依頼をすることになりますが、当然この時に税理士に支払う報酬額に関しても、信託報酬の中には組み込まれておりません。

 

つまり、

・相続税評価額2,400万円(固定資産税評価額2,100万円)の不動産と

・預金2,600万円を持った方が亡くなった場合、

相続人の方は、

・遺言執行費用として最低でも110万円程の金額を信託銀行に支払った上で、

・不動産の登録免許税として固定資産税評価額2,100万円×0.4%である8万4千円、そして司法書士への報酬が6万円~8万円、

・更に相続税の申告書作成費用として、税理士報酬約50万円(財産額の1%~3%程)、

合計約178万円もの費用を支払う必要があるんです。

(※110万円+登録免許税12万円+司法書士6万円+税理士50万円=約178万円)

 

そういったことから、最近はこの執行手数料の高さが問題となり、遺言信託の中途解約が増えて来ている様です。

 

そのため信託銀行側も、

・従来までは相続が発生し、遺言の執行段階になって支払いを請求していた執行手数料を、

・現在は遺言信託契約時において、基本手数料と一緒に請求する所が少しずつ増えて来ています。

まぁですが、手数料の請求時点が『相続の発生前か後かに変わるだけ』なので、相変わらず遺言信託の手数料が高額なことには変わりませんね。

 

ⅲ戸籍謄本や財産関連の書類は遺言者本人が収集(相続発生後は相続人が収集)

次に、私が遺言信託をオススメしない理由の三つ目は、

高額な手数料を支払うにも関わらず、戸籍謄本や財産関係の書類は遺言者本人(相続発生後は相続人達)が収集しなくてはいけない、ということです。

 

これだけ高額な手数料を支払うんだから、

・遺言書を作成する際に必要となる戸籍関係の書類や、

・不動産関係、有価証券関係の書類なども、信託銀行が代わりに集めてくれるんじゃない?と思われるでしょうが、これらの書類は全て遺言者が自腹で集める必要があります。

(※相続発生後は相続人が自腹で収集する必要があります)

 

ⅳ遺言信託で出来ることは、司法書士等の専門家でも十分に対応可能

最後に、私が遺言信託をオススメしない理由の四つ目は、

遺言信託で出来ることは、司法書士等の専門家でも十分に対応が可能ということです。

 

先程、遺言信託のメリットとしてこれら3つを挙げましたが、

・遺言書作成に必要となる作業を一任出来るという点と、

・遺言作成時に税額的に有利な財産配分を提案して貰えるという点については、

専門家に依頼した場合においても、同様のメリットをリーズナブルな価格で受けることが出来ます。

 

3つ目の『遺言執行者に指定した人が先に死亡するリスクがない、遺言執行者に指定した専門家が先に廃業するリスクがない』という項目については、信託銀行独自のメリットではありますが、

そもそも遺言執行者自体、

・遺言作成者に隠し子がいる場合(認知手続き)や、

・特定の相続人から相続権をはく奪する『廃除』を行う場合以外は、無理に指定をする必要はありません。

 

それに、どうしても相続発生後に遺言執行者が必要になった場合には、

・相続人達から家庭裁判所に申し立てを行うことによって、遺言執行者を指定して貰うことも可能です。

 

この様な観点から私としては、

・遺言信託を利用することによって得られるメリットよりも、

・高額な金額負担を含めたデメリットの方が大きいと感じますので、皆さんに遺言信託を手放しでオススメすることは出来ませんね。

この記事を書いている人 - WRITER -
秋山 清成
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