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【初心者向け】分譲マンションを相続する際の不動産評価額を簡単に計算する方法!

 
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秋山 清成
国税局・税務署で40年以上相続業務に従事して来た国税OB税理士です。元国税の経験を活かし、相続・贈与で悩む方々に少しでも有益なコンテンツを届けれられるよう、日々記事や動画を投稿中です。(Youtube登録者数:11万人)

相続が発生した際には、

● 亡くなった方が所有していた『現金・預金』『有価証券』『保険の権利』など、

● 様々な財産を〝被相続人が亡くなられた日の時価〟で評価を行い、

● 相続税の計算をします。

その際に殆どケースで、財産の一番多くの割合を占めるのが、亡くなられた方の『不動産』です。

『不動産』のうち、持ち家に関する土地と建物の評価方法について、以前こちらの記事で詳しく解説を行ったところ、

「次は『分譲マンション』における土地と建物の評価方法についても教えてほしい」

という声をたくさん頂きました。

『分譲マンション』というのは、このスライドのように、

一棟のマンションを1戸ごとに分割して販売しているマンションのことですね。

前回お話した持ち家の土地の評価同様、『分譲マンション』の土地の評価というのも、

〝正確な相続税評価額〟を計算するには専門家でないと難しいのですが、

〝ざっくりとした評価額〟でしたら、誰でも簡単に計算することができます。

 

また、『分譲マンションの相続税評価額の概算』が把握できれば、

● 自分の家には相続税が掛かるのかが分かりますし、

● その上で将来に向けた適切な相続税対策を実行することもできますので、知っておいて損はありません。

 

そこで今回の記事では、分譲マンションを評価するための5つのステップとして、この1~5の項目を順番に解説していきます。

➀マンション全体に対しての自身の持分割合を確認する

➁マンションの建物部分の評価額を確認する

➂マンションの土地全体を評価する(路線価方式)

➃マンションの土地全体の評価額に自身の持分割合を掛ける

➄➁と➃を合算する

字面だけ見れば難しそうに感じますが、実際にやってみれば誰でも簡単にできますので、是非一緒に見ていきましょう。

 

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記事を読みたい方は、このまま下に読み進めて下さい。

 

【ステップ①】マンション全体に対しての自身の持分割合を確認する

分譲マンションの相続税評価額』を計算するためには、事前に把握しておく項目あります。

それが『持分割合(敷地権割合)』です。
※持分割合(敷地権割合)・・・マンション全体の敷地面積に対して、自分持っている権利の割合

 

『分譲マンションの相続税評価額』を計算する際には、

『建物部分』と『土地部分』に分けて計算を行う必要があります。

『土地部分』の相続税評価額を計算する場合は、

● 一度マンション全体の土地の評価額を計算してから、

● 自身の『持分割合』に応じて按分を行うことで、

● 自身が所有している『一戸あたりの土地の相続税評価額』を把握することができます。

そのため、自分の『持分割合』を事前に把握しておく必要があるのです。

 

自分の『持分割合』の把握方法

● マンションの売買契約を行った際の『契約書』

● 法務局で取得できる、『土地の登記簿謄本(登記事項証明書)』

などを見る事で把握することができます。

 

【マンションの売買契約書が手元にある場合】

『土地の持分』のところを見てください。

今回のモデルケースでは、

あなたが住んでいるマンション全体に対する自分の『持分割合』は

『705,809分の12,058』ということになります。

 

【マンションの売買契約書が手元にない場合】

● 法務局で『土地の登記簿謄本』を取得し、

『表題部』の『敷地権の割合』を見ることで、

マンション全体に対する自分の『持分割合』を確認することができます。

 

さて、これで【ステップ➀】のマンション全体に対する自分の『持分割合』が確認でき、

あなたの『持分割合』は『705,809分の12,058』とわかりました。

 

【ステップ②】マンションの建物部分の評価額を確認する

【ステップ➀】の冒頭でもお話したとおり

『分譲マンションの相続税評価額』を計算する際には、

『建物部分』と『土地部分』に分けて計算を行う必要があります。

このうちの『建物部分』の評価はものすごく簡単です。

毎年5月頃に市区町村から届く『固定資産税の通知書』の『評価額』=マンションの建物部分一室あたりにおける『相続税評価額』となります。

今回の場合、建物の『相続税評価額』は『2,000万円』ということがわかりました。

 

これで『ステップ➁』は完了です。

 

【ステップ③】マンションの土地全体を評価する(路線価方式)

この【ステップ➂】が、マンションの相続税評価額を計算する上で一番重要な部分となります。

繰り返しになりますが、

『土地部分』の相続税評価額を計算する場合は、

● 一度マンション全体の土地の評価額を計算してから、

● 自身の『持分割合』に応じて按分を行うことで、

● 自身が所有している『一戸あたりの土地の相続税評価額』を把握することができます。

 

そのため、1度『マンション全体の土地の評価』を行う必要があるのですが、

その際に用いるのが、以下の二つの値です。

● マンション全体の敷地面積

『路線価』という基準価格

では、これらの値の把握方法と、『マンション全体の土地の評価』の方法について見ていきましょう。

 

『マンション全体の敷地面積』の把握方法

『マンション全体の敷地面積』は簡単に把握できます。

 

● マンションの『売買契約書』の『持分』の欄

● 法務局で取得できる『土地の登記簿謄本』の『地積』の欄

それぞれに書かれている数字が『マンション全体の敷地面積』です。

今回のモデルケースでは、

『マンション全体の敷地面積』=『1,032㎡』でした。

 

後はあなたが住んでいるマンションの『路線価』が分かれば、

『マンション全体の相続税評価額』を計算することができます。

 

『路線価』とは

『路線価』の調べ方をお話しする前に、まずはざっくりと「路線価とは何か?」という部分についてお話しておきます。

 

『路線価』とは読んで字のごとく「道路についている価格」のことを指します。


● その年の1月1日時点において

● 不特定多数の人が通行できる公道に対して国税庁が価格を付け、

● 毎年7月1日にその価格を公表しています。

 

相続や贈与で土地を受け取る場合、手元にある書類だけではその価値が分かりませんので、

所有している土地と接している道につけられた『路線価』に『土地の面積』を掛けて『土地の相続税評価額』を計算し、

〝いくらの価値がある土地を受け取ったのか〟をハッキリとさせる必要があります。

 

「なぜ土地の評価を行う際に『路線価』を使うのか?」という部分については、

以前にこちらの記事で詳しく解説しておりますので、興味があるという方はぜひ一度ご覧になってみてください。

 

話を本筋に戻しまして、ここからは実際にあなたが住んでいるマンションの『路線価』の調べ方について見ていきます。

 

『路線価』の調べ方

まずはインターネットで『路線価』と検索します。


すると国税庁のホームページが検索結果で表示されますので、『路線価-国税庁』のページを開きます。

 

すると以下の様なページが表示されているので、調べたい年度のページを開きます。
※『路線価』は毎年公表されるので、年度によって『路線価』が異なる事があります。


最新の『路線価』が知りたい場合は、一番左の(最新)となっているページを開きます。

 

そして表示されている日本地図から、『自分が住んでいる都道府県』を選択します。


すると『財産評価基準書目次』というページになるので、この表から『路線価図』のページを開きます。

 

そこからさらに自分が住んでいる区や市のページを開きます。

そして次は、町名の横に書いてある数字のページを開けば『路線価図』を見ることができます。

 いくつかページがあるので、ページ番号をクリックしていき、自分が住んでいる住所地が載っているページを見つけてみてください。

そうすると実際に『路線価』を見ることができます。

 

下図は銀座5丁目の『路線価図』なのですが、黄色くマーカーを付けた道には「2,950B」と書かれていますよね。


これがこの道に面している土地の1㎡あたりの路線価になります。

『路線価図』に書かれている数字は1,000円単位なので、この道の『路線価』は295万円ということですね。

また、『路線価』の後ろに 「A」「 B」 などのアルファベットが記載されていますが、これは『借地権割合』を表していまして、

● この土地を借りて土地の上に建物を建てている人

● 土地を貸している人

これらの人に関係がある項目です。

A=借地権割合90%
B=借地権割合90%

と、 A ~ G まで10%ごとに下がっていきます。

 

さてでは、ご自身が住んでいるマンションがある土地の『路線価』が分かれば、

いよいよ『マンションの土地全体の相続税評価額』を計算してみましょう。

 

『マンション全体の相続税評価額』を計算

今回は例題として

【神奈川県の武蔵小杉駅の近くに、自分が住んでいるマンションがあったら】

という設定で計算をしてみます。

 

まずこの道に面した土地の『路線価』は 1㎡あたり48万円です。

仮にマンションの正面と側面の2方向に『路線価』が設定されている場合は、

一番高い路線価を選択してください。

〝ざっくりとした評価額〟を計算するだけなら、一番高い路線価の価格が分かれば十分です。

 

さて、今回のモデルケースですと、『路線価』と『マンション全体の敷地面積』は以下の値だとわかりました。

● 路線価:1㎡あたり48万円

● マンション全体の敷地面積:1,032㎡
※登記簿謄本・売買契約書にて確認

ここまで分かれば後の計算は簡単です。

『路線価』に『土地の面積』を掛けるだけですから、

48万円×1,032㎡=マンション全体の土地の相続税評価額』4億9,536万円

となります。

この時点ではすごい金額になっていますが、これで【ステップ➂】は終了です。

 

【ステップ④】マンションの土地全体の評価額に自身の持分割合を掛ける

さて【ステップ➂】で、

● あなたが住んでいるマンションの敷地は『路線価地域』にあり

● マンション全体の土地の相続税評価額:『4億9,536万円』

ということがわかりました。

 

後はこの『4億9,536万円』に、

【ステップ➀】マンション全体に対しての自身の持分割合:『705,809分の12,058』

を掛けましょう。

そうすることで、

マンションの敷地全体に対するあなたの持分の評価額=『約846万円』ということがわかりました。

 

【ステップ⑤】 ②と④を合算する。

【ステップ➁】建物の相続税評価額:『2,000万円』

【ステップ➃】土地の相続税評価額約:『846万円』

を合計すれば、

あなたが住んでいるマンション一室の相続税評価額=『約2,846万円』

ということが把握できました。

 

今回のモデルケースでは、神奈川県の武蔵小杉駅の近くにある分譲マンションで計算を行いましたが、

どの『路線価地域』にあるマンションであっても、

今回紹介した➀~➄のステップで〝ざっくりとした評価額〟が計算できます。

 

まとめ

今回は、相続における分譲マンションの評価方法について見てきました。

分譲マンションの評価の概算であれば、この5つのステップを踏むことで簡単に計算することができます。

➀マンション全体に対しての自身の持分割合を確認する

➁マンションの建物部分の評価額を確認する

➂マンションの土地全体を評価する(路線価方式)

➃マンションの土地全体の評価額に自身の持分割合を掛ける

➄➁と➃を合算する

全体の流れをざっくりと振り返っていきましょう。

 

【ステップ➀】

マンション全体に対しての自身の『持分割合』を、

マンションの『売買契約書』か法務局で取得できる『土地の登記簿謄本』で把握する。

 

【ステップ➁】

毎年、市町村から届く『固定資産税の通知書』で、自分が住んでいるマンションの『建物部分の評価額』を確認する。

 

【ステップ➂】

【ステップ➀】『登記簿謄本』等に書かれている『マンション全体の敷地面積』に

国税庁のホームページで確認した、自分が住んでいるマンションがある場所の『路線価』を掛けることで、

『マンション全体の土地の評価額』を計算します。

 

【ステップ➃】

【ステップ➂】『マンション全体の土地の評価額』に

【ステップ➀】自身の『持分割合』を掛ければ、

あなたが住んでいるマンションの『土地部分の評価額』が把握できます。

【ステップ➄】

【ステップ➁】『建物部分の評価額』と、

【ステップ➃】『土地部分の評価額』を合算すれば、

あなたが住んでいるマンション1室あたりの相続税評価額が計算できます。

 

今回見てきたマンションの評価方法は、あくまでも〝ざっくり〟とした評価方法となります。

 

しかし、実際に相続税や贈与税の申告を際には、土地の形状や立地によって評価額に補正が入ります。

使い勝手の良い土地の場合:
評価額が高くなるように補正が入ります

 

使い勝手の悪い土地の場合:
評価額が低くなるように補正が入ります。

 

敷地面積が極端に広い場合:
平成30年以降、一定の条件を満たしている『敷地面積が広い中低層のマンション』には、『地積規模の大きな宅地の評価』という、相続税の評価額を大きく減額できる要素が適用可能となりました。

 

このように、

「きちんとした正確な土地の評価額を算定したい」という場合や、

「相続税の申告が必要だ」という場合には、

相続税に精通した専門家に土地の評価を依頼する必要があります。

 

ですが、冒頭でもお話したように、

自分の住んでいるマンションの相続税評価額がいくらになるのかを、ざっくりとでも良いので事前に知っておけば、

「うちは相続税の基礎控除を超えるから、事前に110万円の贈与を行っておこう」

「自分の死後、財産の内容が現預金よりも、不動産の比率の方が多いから、相続人は相続税の支払いに困るだろうな」

と、このように将来像が描けますし、それに伴って『効果的な生前贈与の施策』を取ることも可能です。

 

ですので、是非この記事を見られている皆様におかれましては、

「自分や親が所有しているマンションの相続税評価額は、いくらになるのか」

ということを、今回のステップ➀~➄を参考に計算をし、一度確認していただければと思います。

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秋山 清成
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