(相続×認知症の恐怖)認知症を発症すると相続税対策は、一切実行出来ません! 

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秋山 清成

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    相続の現場で日々仕事をしていますと、

    「私の親が認知症になってしまいました。」「何か今から出来る相続税対策はないでしょうか?

    という相談を受けることが良くあります。

     

    この質問に対し私は、毎回この返答をするしかありません。

    「残念ですが、認知症になってしまうと相続税対策は一切実行出来ません。」

     

    この言葉を相談者の方に話す時には本当に心苦しいのですが、

    現在の法律においては一度認知症を患ってしまうと、奇跡的に症状が完治・軽減でもされない限り、

    相続税における対策は一切行えないというのが紛れもない事実なのです。

     

    今回の記事ではそんな認知症を患った場合、相続や贈与において、

    実際にどういった内容の法的手続きが取れなくなってしまうのか!〟

    を分かり易く説明して行きたいと思います。

    相続×認知症の恐ろしさを知ろう

    ふぅ!

    今日の作業も一段落かな。そろそろ自宅に戻るか。

    さてさて、トラックの鍵は・・・。

     

    ・・・・・無い

    この前にも無くしたばかりで、ちゃんと紐に付けてたのに・・・。

    ちょっと自宅に電話してみるか。

     

    え! お父さん今年で鍵を無くすの3回目よ!

     

    ・・・・・。

    もしかしてお父さん、軽度の認知症が始まってるのかもしれないわよ。

     

    う~~ん。

    認知症かぁ、俺の知り合いにも何人か認知症になったって人の話を聞いたし・・・。

     

    いま〝家族の相続対策の為に贈与の勉強をしてるのに

    認知症になったら対策が取れなくなるって税理士の先生が言ってたな。

     

    取り合えず、相続と認知症のことについて先生の所に話を聞きにいってみるか!

     

    なるほど、そういうことですか。

    一徹さん、素晴らしい判断です!

     

    厚労省の発表によれば、2012年の日本における認知症高齢者の方の数は280万人だそうで、

    今後も認知症高齢者数は増加を続け、〝2025年にはなんと470万人〟に達すると言われているんですよ!

     

    認知症については〝知っておくこと〟〝備えておくこと〟が本当に重要になって来ます!

     

    ですので、これから一緒に相続と認知症について勉強して行きましょう!

     

    認知症が発症すると出来なくなってしまう行為

     

    まず初めに知っておいて頂きたいことに、

    〝認知症を患うと、相続において「何が」出来なくなってしまうのか?〟

    ということです。

     

    認知症を患うと「法律行為」が出来なくなる

    まず、認知症を患うと、相続に関する「法律行為」が出来なくなってしまいます。

     

    法律行為っていうと、物を買ったりとか売ったりとかですか?

     

    そうですね。

    売買契約も立派な法律行為ですよね。

     

    そのほかに『相続や贈与に関わってくる法律行為』としては、ざっとですが以下の様なものがあります。

    【単独行為】

    一人の意思表示によって,その意思表示の内容どおりの法律効果が生じる法律行為

    ☑遺言の執筆、取り消し、変更

    ☑所有権放棄の意思表示

    ☑債権放棄(債務免除)

     

    【契約】

    2人以上の意思表示の合致により成立する法律行為

    ☑贈与

    ☑売買

    ☑養子縁組

    ☑消費貸借

    ☑使用貸借

    ☑賃貸借

    ☑所有権移転

    ☑抵当権設定

    ☑一般的な契約書の作成

    ☑介護施設の入居手続き

     

    これらの法律行為は、認知症を患ってしまうと自分自身では〝一切〟出来なくなります。

     

    一切ですか!!

    遺言を書いたり、

    私の持っている土地を売ったり貸したりも出来ないという事なんですか?

     

    その通りです、一徹さん。

    更にこれだけではないんです!

     

    生前に贈与をしようと思ったら現金が必要ですよね!

    この現金に関する手続きも、認知症を患ってしまうと途端に難しくなります。

     

    え!!

     

     

    金融機関での手続きが出来なくなる(口座の凍結)

    認知症を患ってしまうと、下記のような行為も出来なくなってしまいます。

     

    自分の口座から現金を引き出すことも出来ない・・・。

    自分の定期預金を解約することも出来ない・・・。

     

    自分が持っている土地の売却も出来ない・・・。

    土地を誰かに貸すことも出来ない・・・。

    取り壊すことも出来ない・・・。

     

    認知症を患ってしまうと、これらのことを〝自分が生きている間〟は出来なくなる。

     

     

    先生。

    認知症って、確かに恐ろしいですね。

     

    本当にその通りですね。

     

    いま一徹さんが仰った、

    認知症を患ってから自分が生きている間に〝一切の法律行為が出来なくなってしまう〟ことを、

    俗に「デッドロックといい、多くの方がこの現実に苦労されていらっしゃるんですよ!

    デッドロック・・・。

     

    なるほど~。

    先生、いままでの話で〝財産を残す側〟が認知症を患うと大変なことは分かりました!

     

    じゃあ逆に、〝財産を貰う側〟が認知症を患った時ってどうなるんですか?

    たとえば、僕の財産を貰う側の「妻」が認知症になったら?

     

    そうですね。

    いい機会ですので、〝財産を貰う側の人〟が認知症になってしまった場合の話についても説明していきましょうか。

     

     

    財産を貰う側に認知症の人がいる場合

    財産を貰う側が認知症になってしまった場合も、基本的には先程の話と同じで、

    認知症を患うと、相続に関する「法律行為」が出来なくなってしまいます。

     

    その中でも最大の難点となるのが〝遺産分割協議が出来ない〟ということです。

     

    認知症を患うと遺産分割協議が出来ない!

    まず大前提として、認知症を患ってしまった相続人は、

    〝正しい判断がきちんと出来なくなっている=自分の権利を行使することが出来ない〟

    と考えられています。

     

    なので所定の代理人を立てて遺産分割協議をしなければ、その協議自体を無効と判断されるんです!

     

    先生!

    遺産分割協議って何ですか?

     

    おぉ、そうでした!

    詳しい説明がまだでしたね。

     

    上記の様な、相続人の話し合いのことをいいます。

     

    ですので先程の続きとなりますが、この遺産分割協議において所定の代理人を立てないまま

    ・認知症の相続人を除け者にしたり

    ・その人だけを無視して遺産分割協議を進めても

     

    その行為自体が無効」となってしまって、相続手続きのやり直しが必要になるんです!

    相続人が認知症を患うと、遺産分割協議自体が出来ない〟

    なるほど~。

     

    先生は最初に、このことが最大の難点と仰っていましたが、

    〝遺産分割協議が出来ない〟というのは、相続発生後においてそんなに大きな問題なんですか?

     

    その通りです、一徹さん。

     

    ではここからは、

    相続人に認知症の方がおり、遺産分割協議が出来ない〟ことによって起こる問題点をお話していきますね。

     

     

    被相続人の銀行口座凍結を解除することが出来ない

    前半の部分で、認知症を患ってしまったら本人の銀行口座が凍結されるという話をしましたよね。

    この口座の凍結については

    認知症に掛かった時だけでなく、

    口座の持ち主が亡くなった時にも行われます。

     

    基本的に一度凍結された口座は正規の手続きを踏まなければ凍結が解除されないんです。

    この正規の手続きを踏むために必要になるのが、〝遺産分割協議〟とそこで決められた財産の内容です。

     

    なのでこの遺産分割協議が成立しなければ、いつまで経っても被相続人の口座の預金を引き出したりすることは出来ません。

     

     

    相続税申告で有利な選択ができない(特例が使えない)

    また、相続においては、

    ・被相続人が残してくれた土地を、本来の土地の価値から80%オフで相続出来る

    〝小規模宅地の特例〟や、

     

    ・被相続人の配偶者なら、最低でも1億6千万円まで、相続税を掛からなくすることが出来る

    〝配偶者の税額軽減〟という特例などが色々とあるのですが・・・、

     

    80%オフ!!

    最低でも1億6千万円!!!

     

    それは凄い!

     

    そうです、一徹さん。

    この様な特例を使う使わないで、最終的に払う相続税の額は大幅に変わって来ます。

     

    ですが!

    これはあくまでも、相続人同士の話合い(遺産分割協議)の元で、特例を使用するかどうかを決めます。

     

    ですので、そもそも認知症の相続人の方がいる場合には、遺産分割をすることが出来ませんので、

    法定相続分で申告をするしかなく、特例を使うことは出来ないのです。

     

    ※法定相続分については、下記の記事にて詳しく解説しています!)

    (相続順位図あり)相続の法定相続人の範囲と相続割合を網羅的に解説

    2018.11.27

     

    不動産の名義が相続人共有となってしまう

    被相続人(亡くなった方)の不動産を相続した際には、自分がその不動産の新しい所有者であるということを対外的に証明するために、

    〝相続登記〟という手続きを行います。

     

    この時、多くのケースで、相続した不動産の所有者になるのは相続人の中の誰か「1人」です。

     

    先生、なんで相続した不動産の所有者は「1人」が多いんですか?

    別に「複数人」で分割して不動産の所有者となっても問題はないんじゃ・・・?

     

    不動産所有者が複数人(共有)となってしまうことは、通常あまりいい状態ではないんですよ。

     

    不動産を共有で所有することのメリットも勿論あるのですが、

    私としては、メリットよりもデメリットの方が多いと感じています。

     

    1⃣共有者の承諾なしに売却することができない

    共有名義の不動産を売却するためには、共有者全員の同意が必要です。

    なので自分一人で売却の判断が出来ず、揉めることがあります。

     

    2⃣登記に掛かる手続き費用が単純に倍以上かかる

    不動産登記というモノは、

    〝一つの不動産を何人で共有登記しても登記料が一緒〟

    というモノではなく、

     

    〝一つの不動産を複数人で共有登記すれば、人数分の登記料が必要〟

    というモノなので、単純に一つの不動産に対しての手続き費用が多く必要となってしまいます。

     

    3⃣相続が発生すると所有者が増え、権利関係が複雑になる可能性がある

    共有名義人の一方(Aさん)が死亡して相続が発生した場合、

    ・そのAさん分の権利はAさんの相続人に引き継がれます。

    ・その相続人(甲・乙)がまた共有名義で相続登記を行ったとする。

    この時点での共有名義人 ➡(B・甲・乙の3人に増える)

     

    ・その後に共有名義人のもう一方(Bさん)が亡くなり、

    ・その相続人(丙・丁)がまた共有名義で相続登記を行ったとする。

    この時点での共有名義人 ➡(丙・丁・甲・乙の4人に増える)

     

    このように相続が発生する度に、一つの不動産に対する所有権の所在が複雑化する可能性もあるんです。

    (※不動産を共有で所有することのメリットとデメリットについては下記ページにて詳しく解説しています)

    後日追加

     

     

    このように、不動産は出来るだけ「共有」で所有するよりも、「単独」で所有した方が得策です!

     

    しかし、財産を相続した相続人の誰かが単独取得するためには、ここでも相続人全員で作成した〝遺産分割協議書〟を提出しなければいけません。

     

    ですが先程の話でも出ましたが、そもそも認知症の相続人がいる場合には遺産分割が出来ず、

    法定相続分での割合で「共有」となる登記申請しかすることができないんですね。

     

     

    どの程度の認知症になると、法律行為が行えなくなるの?

    先生、認知症の怖さ・・・。

    改めて再認識しましたよ。

    これはキチンと元気な内から対策を考えておくべきですね。

     

    ですが、先生。

    認知症にも症状のレベルというモノがあるって聞いたんですが、

    ・軽度の認知症であっても

    ・重度の認知症であっても

     

    認知症って診断されたら、一律して法律行為が出来なくなるんですか?

     

     

    この話については、まだまだこれから議論が必要な分野になって来るのですが、

    まず認知症には、

    ➡アルツハイマー型認知症をはじめ、

    ➡レビー小体型認知症や

    ➡脳血管性認知症など

    複数の症状があるのですが、

     

    一番割合が多いアルツハイマー型認知症において考えると、

    アルツハイマー型認知症が「中期程度まで進行」していると診断された場合には、認知症患者の法律行為は無効と判断される可能性が高いと考えています。

     

    ざっと、各段階での認知症の症状を下記にまとめてみましたので、参考にしてみて下さい。

     

    初期にみられる認知症の症状

     

    中期にみられる認知症の症状

     

    後期にみられる認知症の症状

     

     

    (相続×認知症)将来の認知症に備える方法には何があるのか?

    認知症の段階別症状を見てみましたが、

    まだギリギリ初期の中にも当てはまっているモノは無いかな~。

     

    ただ、②直前のことを忘れる(近時の出来事がすっぽり失われる)

    の部分については、物忘れが多くて先生に相談しに来た私にとっては他人事ではないですね・・・。

     

    先生、もし私が認知症だと病院で診断されてしまった場合(中期程度まで進行)、

    キチンと対策を取れていなかったら、

    ・銀行口座は凍結され、誰も引き落としや解約が出来なくなり

    ・贈与をしたり、遺言を書いたりも出来なくなり

    ・土地も売ったり貸したり出来なくなり

    上記以外の法律行為も無効と判断される可能性が高いんですよね。

     

     

    残念ながら、そうですね・・・。

     

    でしたら、今から将来の認知症リスクに向けて〝準備しておくべきこと〟を是非教えて頂きたいです!

    私にもしもの時が来たとしても、財産の「デッドロック」を防ぐための方法を教えて下さい!

     

    分かりました、一徹さん!

    では次回は、

    (家族信託)将来の認知症に備えて、いま何を検討しておくべきか?(成年後見制度)

    について、詳しく話をしていきたいと思います。

     

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