相続税の節税対策で不動産購入やアパート経営をするのはオススメしません!
皆さんは不動産業者の方から、こんな風に声を掛けられたことってありませんか?
「活用出来ていない土地にアパートを建てませんか?」
「アパートを建てれば、賃貸収入も確保しつつ、将来の相続税も何倍も安くなりますよ!」
この様な甘い言葉でセールスを掛けれらたことがある人って、意外と多いと思います。
果たして皆さんは、この不動産業者のセールストークを信じて、相続税節税のためにアパートを建てるべきなのでしょうか?
結論から申しますと、
・現預金をそのまま持って亡くなるより、
・生前にその預金で土地を買い、建物を建てて人に貸し出すことで、将来の相続税額はグッと下げることが出来ます。
ですがちょっと待ってください!
相続税対策の為だけに不動産を購入したり、アパートを建てたりすることは、非常にリスクが高いんです!
目次
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①土地購入・アパート経営は相続税対策に有効?
そもそも何故「相続税対策に不動産の購入やアパート経営が有効」と言われてるかと言いますと、
①土地や建物の相続税評価額というのは、実際の時価よりも安いこと。
②更地の土地よりも、建物が建っていたり、土地を貸していたら、相続税評価額が下がること。
③不動産の購入費やアパートの建築費を、金融機関から借りる事で、借りたお金を相続税の課税対象から控除できること。
こういった理由で「節税対策に有効だ」と、言われてるんですね。
それと、これは相続税対策とは別になりますが、アパートなどでしたら、
● 定期的な賃料の収入が入る事。
● 売却すればお金に戻せること。
これらも所謂メリットであると、不動産業者の方達はアピールして来ます。
②借金をしてアパートを建てたら、どれだけ相続税が減るの?
では『実際にアパートを建設したら、どれだけ節税になるのか』説明していきたいと思います。
まずあなたが持っている財産は、売買価格1億2,500万円で、
● 相続税評価額が1億円の更地と
(※土地の相続税評価額というのは、一般的に、実際に不動産を売却できる価格の80%で評価がされます)
● 2億円の金融資産を持っていたとします。
この段階では、
● 相続税が掛かる財産の合計は3億円です。
あなたはこの土地にアパートを建てるために、銀行から1億円を借りました。
この時点での、あなたの財産は、
● 相続税評価額が1億円の更地と
● さらに金融資産2億円、
● 銀行から借りたお金が1億円と、同時に借金が1億円、
なので相続税が掛かる財産は、先程と変わらず、3億円という事になります。
さて、銀行から借りた1億円を使って出来上がったアパートの固定資産税評価額が
● 7,000万円だったとしましょう。
これも先程と同じで、建物の相続税評価額というのは、一般的に、
● 実際に不動産を売却できる価格の70%である、
● 固定資産税評価額で評価がされますので、
● 出来上がったアパートの固定資産税評価額は7,000万円です。
そして嬉しいことに、10部屋あったアパートは満室になりました。
普通の住宅なら、
『固定資産税評価額=相続税評価額』
なのですが、
アパートとなると【貸家】として相続税評価額を下げる事ができます。
ですので、このアパートの相続税評価額は
● 4,900万円になります。
7,000万円×(1-借家権割合30%×(入居10÷部屋数10))=4,900万円
もともと、
● 更地では相続評価額1億円だった土地も、
● 今回アパートを建設したことで貸家建付地になり、
● 相続税評価額が下がって8,200万円になりました。
1億円×(1-借地権割合60%×借家権割合30%×入居10÷部屋数10)=8,200万円
※借地権割合は地域によって異なります
さて、銀行から1億円を借りて、アパートを建設したことで、あなたの財産はどう変化したかと言いますと・・・
● 相続税評価額 8,200万円の貸家建付地と
● 相続税評価額 4,900万円のアパート
● そして金融資産 2億円と
● 借金が 1億円
相続税が掛かる財産の合計は、2億3,100万円になりました。
ちなみにですが、この相続税評価額(実際の売買価格の80%)というのは、あくまでも
「相続する際の不動産の評価額」
ですので、実際に売却する際には80%や70%減、30%減などをする前の価値で売却することが出来ます。
「土地や建物自体の価値が減少した訳ではない」
ということですから、安心して下さいね。
話を戻しますと、
アパートを建設する前は、
● 相続税が掛かる財産は3億円でしたから、
今回1億円を銀行から借りて、アパートを建設したことで、
● 課税される財産を6,900万円減らすことが出来たことになります。
その結果、相続税はどれだけ減ったのか・・・と言いますと、詳しい計算式は長くなるので今回は省きますが、
相続人が配偶者と子供1人だった場合、相続税の総額が
● アパートを建てる前は6,920万円
● アパートを建てた後は4,270万円ですので、
将来の相続税を2,650万円減らせたことになります。
③節税のための不動産購入、アパート経営はリスクが高い!
ここまでの話を聞くと、相続税対策で不動産購入や、アパート経営を行うことは
「相続税を減らせるし、借金はあるけど、家賃収入が見込めるし、メリットの方が大きんじゃない?なんで危険なの?」
と、思われた方も多いかもしれません。
ですが、よくよく考えてみて下さい。
● 不動産業者の方から購入を勧められた、土地や建物、
● アパート経営を勧められた未活用の土地・・・
それらの物件って・・・どこにありますか?
● 駅やバス停は近くにありますか?
● 病院や学校などの公共施設は、近くにありますでしょうか?
● 生活用品を売っているお店は?
こう言ったものが近くにない場合、
● 土地、建物を買ったが最後・・・売りたくてもまず買い手がつきませんし、
● アパートを建てても、入居者は集まりません。
仮に、立地条件のよい場所だったとしても・・・
● 土地、建物なら売れる可能性はありますが、
● アパートの場合、鉄骨造りなら耐用年数は27年~34年です。
アパートが新しいうちは、空き部屋が出ても、すぐに新しい人が入るでしょう。
少々家賃が高くても入居希望者はいるでしょう。
ですが、年数が経てばどうでしょう?
古い部屋に住みたいという人は・・・中々居ないんじゃないでしょうか。
家賃も安くしないといけませんよね。
古くなった所を修繕する必要もあります。
もしアパートの建築費用の借入金の返済を、家賃収入で返済する事にしていたら、もう最悪です。
④不動産を利用した節税対策をするなら、必ず専門家に相談を!
このような懸念がありますから、私は今まで
「お客さんを紹介して下さい!」
という不動産業者さんに、当事務所のお客さんを紹介した事は一回もありません。
ですがお客さんの方から、
「不動産業者の方が、こんな相続税対策のパンフレットを持って、不動産の購入を勧めて来たんですけど、秋山先生はどう思われますか?」
と、結構頻繁に相談に来られます。
そのパンフレットの内容を見てみますと、まず冊子そのものが良く出来てるんです。
「賃貸収入でゆとりのある生活を!」
「将来の相続税の節税対策になる!」
「もちろん売却すれば利益にもなる!」
なんて、美味しい言葉が冊子一面に並んでいます。
それを見て私も、思わず引き込まれそうになるんですけど・・・
そこでお客さんに、
「土地の場所はどこですか?学校・病院などの公共施設や、生活用品を売っているようなお店は近くにありますか?」
といった事をうかがって、土地の場所をGoogleMapで見るのですが、
「実行しましょう!」と言ったことは、正直今まで一度もありません。
今、土地の価格というのは、二極化傾向にあります。
● 駅の近くなら、土地の価格は上がっていますが、
● 駅から少しでも離れると大きくその価格が下がるんです。
そしてその価格差というのは、近年益々大きくなっています。
もしあなたが、「相続税対策にもなりますよ!」なんて言われて、
不動産業者の方の言われるがままに、駅から離れた土地を買ったり、アパートを建てたりなんてしましたら・・・
もうどうなるか・・・想像が付きますよね。
「相続税対策になる!」
と意気込んで行った結果、最終的に残ったものは
● 借金と、
● どうにもならない不動産。
こんなことになる位でしたら
「不動産購入や、アパート経営を使った相続税対策なんて、しない方がまだましだ」
と言うものです!
皆さんくれぐれも、こういった不動産を使った相続税対策の話があった場合には、業者さんから渡されたパンフレットの、良い部分だけを見て、判断しないで下さいね!
もし、ご自身で判断するのが難しい場合には、不動産や、相続に詳しい専門家に、ご相談されることをオススメします。