生命保険にかかる税金の種類と注意点!損をしない契約方法も分かりやすく解説!
皆さんは生命保険の契約において、
● 保険の対象者(被保険者)が亡くなって、
● 受取人が保険金を受け取った場合、そこに税金が掛かることをご存じでしょうか?
知っているという方も、どの様な場合に所得税が掛かるのか、贈与税が掛かるのか、相続税が掛かるのか、正確に答えられる方は意外と少ないと思います。
今日はそんな、生命保険にかかる税金の種類と注意点について、
『これを知らないと相続税や贈与税で損をしてしまう!』という内容も併せて解説をして行きます。
目次
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①【最重要】契約者・被保険者・受取人とは?
まず生命保険というのは、「 保険の契約者は誰か? 受取人は誰か?」という、契約形態の違いをキチンと把握しておくことが大切です。
なぜならこの契約形態によって、受け取った保険金の金額が同じであっても、
● 掛かる税金の種類が変わり、
● 課税される税金の金額に大きな差が出るからです。
ですのでまず、生命保険に関する税金を考える時には、次の①~③の人物が【誰なのか】をはっきりとさせておく必要があります。
①契約者:
保険会社と保険契約を結んで、保険料を払った人です。
②被保険者:
この人が怪我をしたり・亡くなったりした場合には、保険会社が受取人に保険金を支払う事になります。
③受取人:
保険金を受け取る人のことです。
この3者が【誰なのか】によって、保険金を受け取ったときの税金の種類も額も全く違ってくるんです!
②生命保険に掛かる税金の種類
保険の対象となっていた方が亡くなり、受取人の方が保険金を受け取った場合に掛かる税金は、
● 相続税
● 贈与税
● 所得税の、
三つの税目の内のどれかになります。
「亡くなった時に受けとる生命保険なんだから、相続税だけなんじゃないの!?」
と、思われたかもしれませんが・・・
そうなんです!皆さんココをうっかり見落としがちなんですね。
生命保険金に掛かる税金の種類と税額をキチンと理解しておかないと、
将来生命保険金を受け取った時に
● 思わぬ税金を納めることになって、
● 保険会社とトラブルになることがあるんです!
では、「どんな場合にどんな税金が掛かるのか」この部分を解説して行きたいと思います。
ⅰ【相続税】が掛かる場合
まず相続税が掛かる場合ですが、これは契約者が亡くなった時です。
● 保険料を支払っていた人の死亡により、
● 受取人は保険金を受け取る事になりますので、
この場合は相続税が掛かります。
一般的なケースですと、
● 契約者が夫
● 被保険者も夫
● 受取人が妻という場合ですね。
夫が亡くなれば、妻が受け取った保険金は相続税の対象となります。
ⅱ【贈与税】が掛かる場合
次は【贈与税】が掛かる場合です。これは、
● 契約者と受取人が別の人で、
● 契約者が生きている場合ですね。
保険料を払っている人が生きている場合は、その契約者から受取人への贈与になります。
例えば、
● 契約者が妻
● 被保険者が夫
● 受取人が子供で、夫が死亡した場合。
契約者である妻は生きているので、妻から子供への贈与になるんです。
それと、
● 契約者が夫
● 被保険者も夫
● 受取人が妻
という保険契約を結んでいて、
● 夫婦共に元気で長生きをし、そのまま保険契約が満期になった場合、
● 妻が満期金を受け取りますよね。
この場合も、契約者である夫は生きているので、夫から妻への贈与になります。
この様に、
● 契約者と受取人が別の人で、
● 契約者が生きている場合は、
● 被保険者の生死は関係無く
● 契約者から受取人への贈与
という事になりますから、受取人は贈与税を払う必要があります。
ⅲ【所得税】がかかる場合
【所得税】が掛かるのは、契約者と受取人が同じ人の場合ですね。
● 自分で支払った保険料を、
● 保険金として自分が受け取るので、
これには所得税が掛かります。
例えば
● 契約者が妻で
● 被保険者が夫
● 受取人が妻
この場合に夫が死亡すれば、妻は保険金で収入を得たことになりますから、所得税を払う必要があるんです。
この様に、
● 契約者、被保険者、受取人が、それぞれ【誰なのか】によって
● 掛かる税金の種類が全く変わってくるんです。
ここで、
「契約によって税金の種類が違うのね。なるほど、なるほど」
だけで終わらせないで下さいね!
なぜならこの税金の種類が違えば、あなたが払わないといけない税金の額に、天と地ほどの開きが出るからなんです!!
では、
● 3,000万円の保険金が下りたという想定で、
● 相続税、贈与税、所得税が掛かる場合、
● それぞれいくら税金を払わないといけないのか
について説明して行きます。
③【相続税】はいくらかかるの?
まず生命保険金に【相続税】が掛かる場合。
これは
● 契約者が夫、被保険者が夫で、受取人が妻という様な状況で、
● 契約者の夫が亡くなった場合でしたね。
この【相続税が掛かる場合に税金が幾らになるのか】について解説をする前に、
【みなし相続財産】というものについて説明させて下さい。
ⅰみなし相続財産とは
実は、契約者が亡くなったときに受取人が受け取る保険金は、民法上の相続財産では無いんです。
民法上の相続財産というのは【故人が死亡した時点で持っていた財産】のことを指しまして、
● 土地や家などの不動産
● 現金や預金、有価証券などの金融資産など、
みなさんが、相続財産としてキチンと認識されている物ですね。
こういうものが民法上の相続財産になります。
一方、生命保険金というのは
● 【故人が死亡した時点で持っていた財産】ではありませんから、
● 民法上の相続財産にはあたらないんです。
ですが相続税法上では、生命保険金や死亡退職金などは
● 【故人の死亡が原因で受け取った財産】として、
● 相続税に含めることになっているんです!
「民法上は相続財産じゃないけれど、相続税法上は相続財産としてみなします」
ということで【みなし相続財産】となっているんですね。
「そんな理不尽な!」という感じですが、
一応、この【みなし相続財産】は納税者の立場のことも考慮されてまして、
受け取った保険金全てが相続財産になるわけではありません。
『500万円×法定相続人の数』という非課税枠がありまして、
これで計算した額を「超える部分」を相続財産に含めることになるんです。
3,000万円の保険金を受け取ったとしたら、
● 相続人が1人の場合は2,500万円を相続財産に含めます
(3000万円-500万円)
● 相続人が2人の場合、2,000万円が相続財産になります。
(3,000万円-(500万円×2人))
● 相続人が3人の場合、1,500万円が相続財産です。
(3,000万円-(500万円×3人))
このように、相続人の数が多ければ、相続財産に含めないといけない保険金の金額はどんどん減っていく事になります。
但し、ここで一つ注意しておきたいのは、
「この500万円の非課税枠が使えるのは、あくまでも法定相続人の方だけ」
と言う事です。
● 孫などの法定相続人以外の方が、亡くなった方の生命保険金を受け取ったとしても、
● 500万円の非課税枠は使えませんので、
そこは気を付けておいて下さい。
さて、長々と説明してしまいましたが、
「結局、生命保険に掛かる税金はいくらなの?」という部分を改めて解説して行きますね。
ⅱ相続税はいくらかかるの?
まず生命保険金に【相続税】が掛かる場合について解説をします。
(家族構成)
● 亡くなったのは保険の契約者と被保険者である夫、
● 受取人は妻
● 妻が受け取った保険金は3,000万円
● そして、子供が2人いたとします。
相続人が3人なので、
● 相続財産に含めないといけない保険金の金額は1,500万円ですね。
(3,000万円-(500万円×3人))
「相続税がいくらかかるのか?」というところは、亡くなった方が持っている財産の額によって全く違って来ますので、
● 生命保険金以外の財産が無い場合
● 生命保険金以外に4,000万円の財産があった場合
この二つのケースで見て行きましょう!
【亡くなった夫に生命保険金以外の財産がない場合】
● 『3,000万円+600万円×法定相続人の数』という相続税の基礎控除以下になりますので、
● 相続税は掛かりません。
{3,000万円-(500万円×3人)}-{3,000万円+(600万円×3人)}
【生命保険金以外に4,000万円の財産があった場合】
● 保険金以外にも4,000万円の財産があったとすれば、
● 相続税の基礎控除を超える700万円部分に相続税が掛かるのですが、
{4,000万円+(3,000万円-500万円×3人)}-{3,000万円+(600万円×3人)}
この700万円に掛かる相続税は幾らかと言いますと、
● 相続人は妻と子2人なので、
● 最終的に支払う相続税は70万円になります。(特例不使用の場合)
相続税の計算式は長くなるので、ちょっと省いてます。
このように、生命保険金に相続税が掛かる場合については皆さん割と認識されているのですが、
問題は【贈与税が掛かる場合】と【所得税がかかる場合】ですね。
この場合は、相続税とは比べ物にならない程の税金が掛かってきますから、
思いもよらない税金を払う事になった受取人と保険会社の間で、トラブルになることが多いんです!
⑤【所得税】はいくら掛かるの?
では先に、所得税がいくら掛かるのかを計算しましょう。
生命保険金に所得税が掛かる場合というのは、
● 契約者と受取人が同じ人の場合でしたね。
● 自分で保険料を支払い、
● 自分が保険金を受け取っているので、
一時所得になります。
被保険者が亡くなったことにより支払われた生命保険金だったとしても、
相続にはなりませんから『500万円×法定相続人の人数』という生命保険の非課税枠も使えません。
しかし、所得税が掛かるのは、
● 受け取った保険金から
● 保険金を受け取るまでに払い込んでいた保険料と
● 50万円の控除を引いて
● 残った額のさらに半分です。
では、
● 亡くなったのは被保険者である夫
● 契約者と受取人は妻で
● 受け取った保険金は3,000万円
● 今まで妻が払い込んできた保険料は400万円
として計算して見ましょう。
保険金3,000万円から400万円を引いて、さらに50万円を引き、その半分に所得税が掛かるので、
((3,000万円-保険料400万円-特別控除50万円)×1/2)
課税対象額は1,275万円になります。
ここに所得税が掛かって来る訳なんですが、一時所得というのは他の所得(お給料など)と合算しますから、
「お給料をいくら貰っているか」という部分によって、税額が5%~45%まで変動します。
今回は一般的なケースとして、20%の税率がかかる想定で計算すると・・・
(1,275万円×所得税率20%)
受け取った保険金に対して納めるべき所得税は255万円になります
どうでしょう、同じ3,000万円の保険金を受け取ったとしても、
● 相続なら税金が掛からない場合もあるのに対して、
● 所得税となると255万円も払わないといけないことになりました。
ですが、これで驚いてはいけません。
もっと悲惨なのは、贈与税がかかる場合なんです!
⑥【贈与税】はいくらかかるの?
さて、では生命保険金を贈与で受け取ってしまった場合、支払う税金が幾らになってしまうのかを計算していきましょう。
生命保険金に贈与税が掛かる場合というのは、
● 契約者と受取人が別の人で、
● 契約者が生きている場合でしたね。
保険料を払っている人が生きている場合は、その契約者から受取人への贈与になります。
被保険者が亡くなった事により支払われた生命保険金だったとしても、
実際に保険料を支払っていた方が生きておられて、その方から受取人に対してお金が渡っているので、相続にはなりません。
つまり、『500万円×法定相続人の人数』という生命保険の非課税枠が使えないんですね。
ですが、贈与税の基礎控除である110万円は受ける事ができます。
では以下の家庭をモデルケースに見ていきましょう。
● 亡くなったのは被保険者である夫、
● 契約者は妻
● 受取人は子供で
● 子供が受け取った保険金は3,000万円
だったとしましょう。
受け取った保険金は3,000万円ですから、贈与税の基礎控除を引くと、
(3,000万円-110万円)
贈与税が掛かるのは2,890万円ですね。
これに贈与税が掛かると、1,035万5,000円にもなるんです!
(2,890万円×特別贈与税率45%円-税額控除265万円)
受け取った保険金の3分の1以上が税金で持っていかれてしまいました。
⑦保険契約は慎重に!
このように、
保険の契約者・被保険者・受取人が誰かによって、
● 払い込んだ保険料が同じだったとしても
● 受け取った保険金が同じ3,000万円だったとしても、
● 相続税なら税額が0円の場合もありますが
● 所得税なら255万円
● 贈与税なら、1,035万5,000円も払わないといけなくなるんです!
生命保険金を受け取った際に、所得税や贈与税が掛かるとは認識されていない方が沢山いらっしゃいますから、
税金の申告をせずに放ったらかしにしている場合があります。
「そんなの税務署には言わなきゃ分からないんじゃない?」
こう思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、
保険会社があなたに保険金を払ったとき、その旨を支払調書というもので税務署に伝えるんです。
税務署はそれを見て、
● 皆さんにはどんな税金がいくら掛かるのか
● 生命保険金に関する税金の申告書が出ているかを確認します。
もし皆さんが税金の申告をせずにほったらかしにされていたら、
本来の税金の他に、無申告加算税や延滞税などの、余分な税金も支払わなくてはいけなくなります!
ですので保険契約を結ぶ際には、
● 受け取る保険金の額だけに目を向けず、
● 保険金を受け取ったらどんな税金がかかるのか
● どれくら税金を支払わないといけないのか、
こういった所をキチンと認識をして契約を結んでください。
今既に契約している生命保険がある方も、お手持ちの証券を確認して、
自分の所はどんな税金がどれくらい掛かるのかを、もう一度この記事の内容と照らし合わせながらしっかりと把握されておくことをお勧めします。