【逆贈与】子供から親への仕送りや貸付けは贈与になるの?
一般的に贈与と聞くと、『お金をあげる・貰うという契約を』
● 祖父母から子や孫へ、
● 親から子供へ行うことをイメージされると思いますが、
もしあなたが、実家の両親に毎月仕送りをされているとしたら・・・
あなたのその仕送りには贈与税が掛かるのでしょうか?
今日はそんな『子供から親』への逆贈与について、 ①年金だけで暮らす親に対して、子供から親への年間200万円の仕送りには贈与税は課税されるのか? ②金銭消費貸借契約書を作らずに、子供から親へ資金の貸付を行った場合には、贈与税は課税されるのか?
という2つのテーマについてお話して行きます。
目次
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①子供から親への年間200万円の仕送りには贈与税は課税される?」
まず1つ目のテーマ
「年金だけで暮らす親に対して、子供から親への年間200万円の仕送りには贈与税は課税されるのか?」
についてですが、
結論から先に申しますと、この年間200万円の子供から親への仕送りについては、
〝贈与税は課税されません!〟
そもそも贈与税には
● 『贈与を受けた額が年間110万円までならば、税金は掛からない』という、
● 『基礎控除』がありますので、
● 年間110万円までの中での資金の援助や仕送りでしたら、全く何の問題もありません。
しかし今回は年間110万円を超える200万円の仕送りです。
これは贈与に該当するのか・・・ですが、
先程も言いましたように、
子供から親へ行われる年間200万円の仕送りは、贈与にはあたりません。
その理由なんですが、相続税法の中には、
下図の様な理由により行われた贈与に対しては『課税しませんよ!』
と規定された条文が定められております。
つまり『扶養義務者』
● 親と就労前の子供や
● 子供と退職後の親など
これら両者間で行われた、
● 教育費や生活費に充てる為の、
● 「通常」の仕送りの範囲内であれば、
『贈与税は課税されることは無い』と法律で決まっているんですね。
ですので、1つめのテーマである
「子供から親への年間200万円の仕送りには贈与税は課税されるのか?」については、
贈与税は掛かりませんので安心してください!
これは別に子供から親への仕送りに限った話ではなく、
● 親から子供への仕送りや、
● 教育費の都度払いに関しても、
税務署は課税をしておりませんのでご安心下さい。
しかしですね・・・
今回のケースの様な
『年金だけで暮らす親に対しての年間200万円の仕送り』というのは、
相続税法第21条の3に規定されている「通常の生活費」(仕送り)の範囲内」だと判断して良いと思いますが、
この「通常の範囲」が、
● どこまでならOKなのか?
● どこからがアウトなのか?
というのは、
『その家庭の生活水準』や『 仕送りをする側、される側の状況』などによって判断が細かく変わってきますので、
ご自身で判断をされて将来的に問題になるよりも、一度相続税専門の税理士に、
「うちの場合の仕送りや援助は問題が無いか」などを相談してみるのも良いでしょう。
②子供から親へお金の貸付を行った場合、贈与税は課税される?
さて、ここまで話して来たのは、
子供から親への仕送りに関する逆贈与のお話でしたが、
次は、『子供から親へのお金の貸付け』に関する逆贈与のお話をします。
これは私が、国税不服審判所に勤務していた時に審査請求事案として出て来た、逆贈与の案件をベースに説明しますね。
事案の概要を説明しますと、
● 6年程前に親の事業所の大改装をする際に、
● 親の資金だけでは改装資金が足りなかった為、
● 事業主の親に対して、子どもが資金を貸した。
というものです。
〝子どもが事業を始める時に親から資金を借りて開業する〟というのはよくある事なんですが、
この事案の場合は〝親が子どもから資金を借りた〟というものでした。
③税務署に逆贈与とみなされてしまう四つのポイント
親子間のお金の貸し借りについて、税務署が何処に注目して調査をするのかと言いますと、
下記で説明する様な〝四つのポイント〟を重視するんです。
①親と子供間でキチンと金銭消費貸借契約書を作成しているか。 ②半年や一年など、定額の返済金額が決められているのか。 ③返済期間が5年や10年などと決められているのか。 ④金銭消費貸借契約書に従って、キチンと返済をされているのか。
この四つのポイントを税務署は調査します!
要はこの四つのポイントがキッチリされていないと、
『実際は借りたものではなくて貰ったもの』として税務署は贈与税を課税します。
親子間でありがちな「ある時払いの催促なし」こういったなぁなぁでの取り決めの場合、
最終的にこの四つのポイントに引っかかるんですね。
実際にこの親子は、お金の貸し借りを行った後、上記のポイントを全く守ってはいませんでした。
● 親は資金を借りた後、子供に対して返済を一回もしていませんでしたし、
● 金銭消費貸借契約書も作成していませんでした。
そうこうしている内に、この親御さんが亡くなったんです。
ですので子供さんは、
● 親の相続税の申告書を提出する際、
● 親に貸した資金を「貸付金」として計上しました。
● 子供から見ましたら今回のお金は「貸付金(債権)」ですし、
● 親から見たら「借入金(債務)」ですよね。
債務や葬式費用というのは、相続税の計算の際に相続財産から引くことが出来ますから、
相続税を少しでも減らしたい子供さんは、
資金を出した時の
● 『これだけ出しましたよ』という証明を付けて、
● 「親の債務」として相続税の申告に計上したんです。
そして、その結果はどうなったのかといいますと、
● 金銭消費貸借契約書を作っていない ● 親は返済を一回もしていない ● 実質はその時点で子供からの贈与があった として、今回の親子間でのお金のやり取りは債権債務ではなく、贈与である!
この様に主張して、債務としての申告を否認したんです。
子供としましては
「親にお金を貸しているんだから『親の借金だ!』」
と、こう主張したのですが、
一方税務署は、
● 契約書もなければ、
● その後一回も子どもに返済をしていない
ということは
「父親はお金を借りたのではなく子どもから貰ったのだから、贈与である!親に借金はない!」
と、このような判断をしたんです。
そこで納得の行かない、相続人である子供が、不服審判所に審査請求を出してきました。
その資料が私の所に回って来まして、私がこの事案を最初に見たんですが、
この事案を見たときの私の第一声は「おいおい、逆贈与かよ・・・」でした。
何故このような言葉を発したかと言いますのは、以前の記事でも書きましたが、
そもそも贈与税というものは、『相続税の補完税』なんです。
贈与税というものがなければ、相続税が掛かるような方が生前にどんどん、子供や孫にお金を渡してしまいますよね。
そうすると相続税が掛かるような方は、一人もいなくなってしまいます。
ですから、これを防止するために、贈与税というモノがあるんです。
そうこう考えますと、贈与税は本来相続税がかかる様な方の、そのような行為を防止する目的で作られた税ですから、
本来は相続税が掛かる方のみ、贈与税を課税したらいいんです。
ですから税務署は、
● 将来の相続税を減らすような行為にはうるさいんですが、
● 相続税が増えるような行為には実は寛大なんですね。
話は審査請求事案に戻りますが、この事案の結論としましては、
審査請求人の主張が認められ、 『親に対する貸付金は親の債務』として、認められました。 やはり子供から親への逆贈与というのは、普通は考えられないことなんですね。
しかしですね!
何でもかんでも子供から親への逆贈与は考えられない、ということは御座いません。
例えば、楽天やzozoの創業者の方がいらっしゃいますよね。
まだお若いですけど、こういう方が親御さんに金銭などを渡されたら、
これは税務署は親に贈与税を課税しますね!
何故ならあのような方たちの親御さんが、生活に窮しているとは考えられませんから、
子供から親への資金移動は『遠い将来の相続税を減らす行為』と見らざるを得ないんです。
まとめ
今回の話をまとめますと、
親子間のお金の貸し借りでありましても、
〝他人にお金を貸す場合、または他人からお金を借りる場合〟
これに当て嵌めて契約や返済をしておけば、税務署から指摘を受けることはございません!
「ある時払いの催促なし」これが一番まずいんですね。
親子間のお金の貸し借りでは、
● キチンと金銭消費貸借契約書を作り、
● 先ほどの四つのポイントを守るというのが肝要です
この四つのポイントが曖昧ですと、
税務署から贈与税を掛けられる可能性がありますので、注意が必要です!
また、前半にお話をした1つめのテーマ
「年金だけで暮らす親に対して、子供から親への年間200万円の仕送りには贈与税は課税されるのか?」
については、
● 相続税法第21条の3に規定されている、
● 「通常の生活費」(仕送り)の範囲内として
『贈与税は課税されない』と判断をして良いと思いますが、
うちの家族の生活水準なら、この「通常の範囲」が、
● どこまでならOKなのか?
● どこからがアウトなのか?
という判断が難しい場合は、「うちの場合の仕送りや援助は問題が無いか」などを、
一度専門家に相談してみることをオススメします。