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実は一般家庭の方が揉める!相続争いが起きやすい家庭の特徴〝5選〟

 
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秋山 清成
国税局・税務署で40年以上相続業務に従事して来た国税OB税理士です。元国税の経験を活かし、相続・贈与で悩む方々に少しでも有益なコンテンツを届けれられるよう、日々記事や動画を投稿中です。(Youtube登録者数:11万人)

私は国税局・税務署で、主に相続税を取り扱う資産課税部門で約40年、

その後、独立開業をし、相続専門の税理士として約5年間、

相続に関する仕事に携わって来ましたが、

その間に、相続争いで険悪になる家庭というものを沢山見て来ました。

 

その中には、

相続が発生する前から険悪な家もありましたし、

相続が発生した後の遺産分割の段階から揉めだす家もありました。

 

ですので今回の記事では、

私が見てきた「相続争いが起きやすい家庭の特徴」と、

相続争いが起きない為に、事前に取っておくべき対処法を

5つの項目に沿ってお話して行きたいと思います。

 

皆さんもこの5つの項目の内容をしっかりと覚えて頂き、

自身のご家庭で相続争いが起きぬよう、事前に対策をして頂ければと思います。

 

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記事を読みたい方は、このまま下に読み進めて下さい。

 

 

①財産が多くない(主な財産が自宅と少額の預金のみ)

 

まず、相続争いが起きやすい家庭の特徴の一つ目は、皆さんにとっては意外かもしれませんが、

亡くなった方の財産が少ない家庭です。

 

「え、相続争いって資産家の家で起こるもので、庶民の家には関係ないんじゃない?」

と思われる方も多いと思いますが、

 

実は違うんです。

相続争いというのは財産の多い家庭よりも、財産の少ない家庭の方が実は起きやすいんです。

 

 

上の画像は、実際に裁判所で争われた遺産分割事件のデータなんですが、

遺産額が1,000万円以下の事件:33%

1,000万超、5,000万円以下:43%

となっています。

これらを合わせると、遺産分割で争いが起こる割合は遺産額5,000万円以下で76%となり、全体の約4分の3以上を占めているんですね。

 

それと同時に、5000万円を超える財産に対しての遺産分割のいざこざが起きる件数は、なんと全体の約4分の1しかないんです。

 

皆さん「我が家は財産が少ないから相続争いは関係ない」と思っておられますが、データで見ればわかるように、この考えは大間違いなんです。

 

相続争いの実態をもう一度言いますと、

『財産が多い家庭は揉めない、財産が少ない家庭は揉めるのです。』

 

ではなぜ、財産が多い家庭では相続争いが起きにくいのかと言いますと、

 

財産が沢山ある方は、豪邸とその敷地の他にも沢山の『金融資産』を持っています。

 

例えば、

亡くなられた方の相続財産の合計は5億円で

豪邸とその敷地が1億円

金融資産が4億円

相続人は子供3人

法定相続分は3分の1で約1億6,666万円の場合、

 

兄弟の誰か1人が豪邸と敷地1億円分を相続しても、

金融資産がたくさんあれば財産を均等に分ける事ができますよね。

 

しかし逆に相続する財産が少ない家庭の場合はどうなるでしょうか?

 

例えば、

亡くなられた方の相続財産の合計は1,000万円で

家と土地が700万円

金融資産が300万円

相続人は子供3人

法定相続分は3分の1で約333万円の場合、

 

長男1人が同居していた家と土地700万円を相続すると、

残りの姉弟は法定相続分の財産を相続することができませんよね。

 

長男が「家と土地は同居していた自分が相続するとして、お墓の管理や法要があるから2人は100万円ずつでもいいか?」

と聞いて、他の姉弟が「いいよ」と言ってくれたら良いですが・・・

 

「それだけじゃ納得できない!法定相続分は絶対に貰う!」

と強固に言われてしまえば話がこじれてしまいます。

 

その場合、

妹と弟に約333万円ずつ渡すとしても、

金融資産は300万円しかない

しかし自分が今住んでいる家を売る訳にはいかない

 

残りをどう工面したらいいのか、長男は非常に苦労することになるんです・・・。

 

この様に、

世間一般的に思われている資産家の家の方が相続争いが多い」というのは間違いで、

実際には、

財産が少ない家庭(遺産額5,000万円以下の家庭)の方が相続争いが起きやすい

ということになるので注意が必要です。

 

この様なご家庭の場合には、相続が発生する前に

 

事前に兄妹間で根回しをしたり、

話し合いを設けるなどして、

必要であれば親に遺言書を書いて貰うなどといった対策をしておくことが重要です。

 

②亡くなった方が一切の相続対策をしていなかった

相続争いが起きやすい家庭の2つ目の特徴は、亡くなった方が一切の相続対策をしていなかった場合です。

 

テーマ➀で、「いわゆる資産家の家では相続争いというものは起こり難い」とは言いましたが、

 

しかし、

財産は多いがその殆どが不動産で、金融資産が少ないという方の場合で、

そしてそれに対して亡くなった方が、生前に一切の相続対策をしていなかった場合には、

相続争いが起こる可能性が非常に高くなります。

 

どういうことかと言いますと、

いくら亡くなった方の総資産額が多かったとしても、

それが大きな不動産が2つに預金が少し、

それに対して相続人が3人などでしたら、

 

遺産分割を現金で調整するという方法が簡単には取れません。

 

相続した不動産を相続人間で共有名義にするという方法もありますが、不動産を共有で持つことは、後々トラブルの基になることが多いんです。

 

その為、財産が多くてもその殆どが不動産の家庭は、相続人の間で争いが起こる可能性が高いんです。

 

この様なご家庭の場合は、

事前に親が不動産を売却出来るのなら売却をし、

ある程度の現金を用意しておくというのも一つの手です。

 

そうすることで、遺された家族が相続財産を巡って争うということも回避出来る可能性が高くなりますからね。

 

③家族の内、特定の人物だけが亡くなった方から多くの資金援助を受けていた

 

相続争いが起きやすい家庭の3つ目の特徴は、

家族の内、特定の人物だけが亡くなった方から多くの資金援助を受けていた場合や、

また、

家族の内、特定の人物だけが亡くなった方の介護をしていた場合などです。

 

家族の内、特定の人物だけが亡くなった方から多くの資金援助を受けていた場合

特定の援助を受けていた場合というのは、例えば

授業料や結婚資金、

自宅の購入資金の贈与などがあります。

 

授業料に関しては、

長男や長女は普通の国公立の大学に親の援助を受けて通い、

次男だけが授業料が高額な医大に親の援助を受けて通っていた場合などは、

 

相続発生の際に、長男や長女から、

「あなたは医大に通うお金を貰っていたんだから、私達と同じ額の財産を相続するのはオカシイ!!」

とこういった揉め事に発展することがあります。

 

その他の結婚資金や、自宅の購入資金なども同じですね。

亡くなった方が生前に、こういった風に特定の人物だけに高額なお金を援助していた場合、相続争いが起きやすくなります。

 

こういった争いを回避する為には、

やはり、相続人間での不平等を極力避ける生前贈与を行っておくことが重要です。

 

例えば、次男に高額な医大の授業料を援助していたのなら、

長男には自宅の購入資金を援助してあげたり、

長女には結婚資金や子育て資金を援助してあげたりと、

各相続人間で出来るだけ不平等が生まれない様にしてあげましょう。

 

また、各人に対して平等に援助できるほどの資産が無いという場合、

キチンと遺言で、

「次男には他の兄妹に比べて高額な医大の授業料を援助したので、申し訳ないが、今回の相続財産は、他の兄妹に多めに相続させたいと思う」

といった様な、文言を書いておいて頂ければと思います。

 

そうすることで、遺された相続人の間での争いはグッと少なくなりますからね。

 

家族の内、特定の人物だけが亡くなった方の介護をしていた場合

 

また、家族の内、特定の人物だけが亡くなった方の介護をしていた場合にも、相続争いが発生しやすいです。

 

一般的にどういったケースかと言いますと、

親と一緒に住んでいた長男だけが、親の介護を亡くなるまで付きっきりで行っていたんですが、

親は認知症を患っていたため、長男の献身に対する遺言書を遺すことが出来なかった。

 

その後、

親とは別居しており、実家にも寄り付かなかった次男や三男が、

遺言書が無いことを良いことに、キッチリと兄弟間での均等な遺産分割を主張する

というケースがあります。

 

長男からしたら、自分は数年・数十年と親の介護をして看取ったのに、

実家にも寄り付かず、何もしてこなかった次男や三男と同じ金額を相続するなんて、やはり納得が行きませんよね!

 

こういった場合、

親が認知症を患っていないのであれば、

事前に長男に対して、感謝の意味も込めた遺言書を作成しておきましょう。

 

もしも親が認知症を患ってしまい、遺言書を作成出来なくなってしまった場合は、

『寄与分』という制度があります。

 

寄与分とは、下の画像の様に民法で定められた規定で、

 

『亡くなった方の生前に、相続人が療養看護その他の方法によって、亡くなった方の財産の維持や増加について特別の寄与をした場合には、その分、他の相続人対して多くの財産を相続することができる。』

というものです。

 

今回のケースであれば、この寄与分を長男が他の兄弟達に主張し、それが通れば、

 

長男は自分の介護の頑張りの分を、

寄与分制度に定められた範囲内で受け取ることが出来ます。

 

もしも主張が通らない場合には、

 

家庭裁判所に調停を申し立て、

遺産分割調停や遺産分割審判を受けるという流れになります。

 

④亡くなった方が極端な遺言書を書いていた

 

これまで、「相続争いの回避方法として遺言書を残しておきましょう」と言ってきましたが、

 

気を付けておいて頂きたいのは、この遺言書が相続争いの元になることもあるという事です。

 

遺言書というのは決して万能ではありません。

遺言作成者の偏った考え方や、

過去の援助額を無視した遺言を書くことで、

却って、遺言書がない場合よりも相続人同士が揉める火種にもなることが多いんです。

 

偏った内容というのは、

全財産を長男に相続させるとか、

全財産を妻(後妻)に相続させるとか

希にですけど他人に相続させると書かれる方もいます。

 

このような偏った内容の遺言書を私は税務署勤務時代に何度も見て来ましたが、

 

このように偏っていて、作成した方の意図がはっきりしない内容の遺言書であると、

財産をもらえない相続人は「はい、そうですか。」と、すんなり納得できるものではありませんよね。

 

そしてその結果、相続争いが起きるんです。

 

では、この様に、遺言書の内容によって相続争いが起きない様にするにはどうすれば良いのか、ですが、

 

その答えとしましては、

親は自分の考えを遺言書にまとめ

その遺言書の内容を相続人に対して読み聞かせるんです。

 

同じ内容の遺言でも、〝活字〟で見るのと〝父親などの言葉〟として聞いておくのとでは、相続人が受ける印象がかなり違いますからね。

 

なので、

お盆や正月などで子供達が実家に帰って来た時など、家族が一堂に会した時に財産の内容を公表して、

 

自分のどの財産を

どういう理由で

誰に相続して欲しい

という気持ちを、出来るだけ具体的に伝えましょう。

 

この時に一番大事なことは、自分の子供達だけでなく子供たちの配偶者も同席させることです。

 

得てして、相続争いが生じて話が余計にこじれる原因の多くは、相続人ではない配偶者の口出しであったりしますからね。

 

この時、子供たちの意見や反応を確かめてから改めて遺言書を作り直すと、相続争いも少なくなると思います。

 

⑤亡くなった方が離婚・再婚をしており前妻の子がいる

 

続争いが起きやすい家庭の5つ目の特徴は、

亡くなった方の後妻やその子供と、前妻の子が対立するというケースです。

 

例えば、

離婚や死別をした配偶者との間に子供がいるAさんが、後妻さんと結婚をした場合、

子供が相続できる財産は半分以下に下がってしまいます。

 

なぜそんなに下がるのか、といいますと、

 

民法では〝誰がどれだけ相続できる権利があるか〟という

【法定相続分】が定められていまして、

 

Aさんが再婚せず亡くなり

相続人が子供だけの場合、

子供たちはAさんの財産を、それぞれ均等に相続する権利があるんです。

 

相続人が2人なら、1人あたり2分の1相続する権利があり、

相続人が3人なら、1人あたり3分の1相続する権利がある。

といった具合です。

 

しかし、相続人が配偶者と子供・・・となりますと、

配偶者の法定相続分は、相続財産の2分の1

子供たちの法定相続分は、残りの2分の1を子供の人数で均等に分けた分しかありません。

 

つまり、Aさんに1億円の財産があった場合、

相続人が子供2人だけでしたら、

法定相続分は2分の1ずつですから、

財産を5,000万円ずつ相続する権利がありましたが、

 

Aさんが後妻さんと結婚をすることで、法定相続分は、

配偶者が2分の1、

子供たちで残りの2分の1を均等に分ける事になりますから

新たに配偶者になった人には、5,000万円を相続する権利がうまれ、

子供2人に権利があるのは、5,000万円の半分の2,500万円ずつ、

という事になるんです!

 

この場合、亡くなった人と後妻さんの婚姻期間は関係ありません。

極端な例ですが、婚姻届けが亡くなる1日前に市役所に出されたとしても、後妻の法定相続分は2分の1です。

 

また、

Aさんが再婚相手の子供を養子にしていた場合や、

再婚相手との間に子供が出来た場合、

 

養子や再婚相手との子供も、Aさんの財産を相続する権利がありますから、

元々の法定相続人の相続分は、更に少なくなってしまうんです。

 

こういったことから、

Aさんが再婚してから亡くなるまでの期間が短ければ、

前妻の子供達からすると後妻が財産の半分を持っていくのは納得出来ないでしょうし、

 

逆に再婚してから亡くなるまでの期間が長ければ、

後妻やその子供の方が、前妻の子供が財産を取得することに納得しづらいですよね。

 

ですので現在再婚をし、かつ前妻の子供がいるという方は、

生前から双方の言い分を聞きつつ、

お互いに相続が発生した際に争いが起きない様に、生前贈与などを活用されることをオススメします。

 

 

まとめ

今回の話を纏めますと、相続争いが起きやすい家庭の特徴としては、

 

財産が多くない家庭、特に5,000万円以下の家庭の場合は相続争いが起きやすく、

財産の内容が不動産中心で、金融資産が少ないのに、事前に何も相続対策を取られていない家庭や、

また、家族の内、特定の人物だけを優遇、もしくは、特定の人物だけが亡くなった方の介護をしていたという家庭は相続争いが起きやすいので、

➀~➂の家庭は、遺言書を作成しておくなどの対策を取られておくことをオススメします。

 

また、正しい遺言書の作成自体はオススメしますが、内容が極端な遺言書などは逆に相続争いの火種になり易いので、注意しておいて下さい。

 

最後に、亡くなった方の後妻やその子供と、前妻の子が対立するという相続争いのケースも見て来ましたので、

一度離婚をして前妻との間に子供がいる、そして現在再婚をし、再婚相手との間にも子供がいるという方は、事前に双方の方達と良く話合って頂き、生前贈与などで、将来の争いのリスクを少しでも減らして頂ければと思います。

 

 

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秋山 清成
国税局・税務署で40年以上相続業務に従事して来た国税OB税理士です。元国税の経験を活かし、相続・贈与で悩む方々に少しでも有益なコンテンツを届けれられるよう、日々記事や動画を投稿中です。(Youtube登録者数:11万人)