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【突然相続の恐怖】あなたはある日突然借金を背負うことになる!?(相続放棄の落とし穴)

 
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秋山 清成
国税局・税務署で40年以上相続業務に従事して来た国税OB税理士です。元国税の経験を活かし、相続・贈与で悩む方々に少しでも有益なコンテンツを届けれられるよう、日々記事や動画を投稿中です。(Youtube登録者数:11万人)

ある日突然、借金の通知が自分の元にやって来る。

そんなことはあり得ないと、皆さん思っていませんか?

しかし、こと相続の問題においては、ある日突然、あなたにとって全く身に覚えのない借金や、税金の督促状が届くことがあるんです。

 

それは何故かと言いますと、

民法における「相続放棄」という制度により、

あなたと疎遠になった家族の借金や、

あなたが会ったことも無い親戚の債務が、巡りめぐってあなたの元に突然降りかかって来る可能性があるからです。

 

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記事を読みたい方は、このまま下に読み進めて下さい。

 

①疎遠な親族が「相続放棄」をすると起こる事

例えば、

● あなたの祖父母、それと両親は既に無くなっていて

● 存命の親戚は伯父さんと、伯父さんの妻とその子供である従兄弟が1人いますが、伯父さん家族とは以前から疎遠だったとします。

 

● あなたは伯父さんがどこに住んでいるか位は知っていましたが、

● もう何十年も会っていませんでしたし、

● 向こうの生活状況も全く分かりません。

 

その後その伯父さんが亡くなり、あなたはお葬式には出ましたが、その後は従弟達とも係わっていませんでした。

 

それから1年後に事件は起きます。

 

突然、とある金融業者から「〇〇さんですね。伯父さんの借金を払ってください。」と、

あなたの元に連絡が来たんです。

 

さぁ皆さん、これは一体何が起こっているのか、お分かりでしょうか?

 

実はですね、

亡くなった伯父さんは、資産となる財産も持っていたんですが、それを大きく超える額の借金も抱えていたんです。

 

ですので伯父さんの妻と従兄弟達は、伯父さんの財産と借金を相続することなく【相続放棄】を選びました。

 

それでどうして、あなたの所に金融業者から連絡が来るのかと言いますと、

 

民法上、

● 相続権を持った【法定相続人】が【相続放棄】をすると、

● その相続権は別の親族に移動することになっているんです!

 

どういうことか、まずは【法定相続人】というものについて説明して行きます。

 

②【法定相続人】とは

民法では『亡くなった方の財産を誰が相続するのか』というところが定められていて、

民法で定められた相続人の事を【法定相続人】と言います。

(※財産は必ず【法定相続人】が相続しなければいけない。と言う事はなく、遺言書などがあれば【法定相続人】以外の人でも財産を相続する事ができます。)

 

この【法定相続人】には、相続権を得て相続人になれる順位があります。

 

下の図のように、

亡くなった人の配偶者は順番など関係なく、存命であれば常に相続人です。

 

順位によって相続人になるか・ならないかが変わってくるのは

 

亡くなった人の子供

亡くなった人の父母

亡くなった人の兄弟姉妹

になります。

 

ⅰ子供がいる場合

第一順位である子供がいれば、相続人は配偶者と子供になります。

 

配偶者がいなければ、相続人は子供だけです。

もし、子供が先に亡くなっていて、孫がいれば

孫が相続人になります

 

亡くなった方の父母と兄弟姉妹は相続人にはなれません

 

ⅱ子供(孫)がいない場合

亡くなった方に子供も孫もいなかった場合、

第二順位である父母が存命であれば、相続人は配偶者と父母になります。

 

この場合も、配偶者がいなければ相続人は父母だけです。

亡くなった方の兄弟姉妹は相続人にはなれません。

 

ⅲ子供(孫)および父母がいない場合

亡くなった方に子供も孫もおらず、父母もすでに他界していた場合、

第3順位である兄弟姉妹がいれば、相続人は配偶者と兄弟姉妹です。

 

兄弟姉妹が既に亡くなっていて甥姪がいれば

甥姪が相続人になります

配偶者がいなければ、相続人は兄弟姉妹、

兄弟姉妹も亡くなっていれば甥姪だけです。

 

 

このように、親族の誰が存命か・亡くなっているかで相続権はコロコロと移動するんです。

 

そして、これは相続権を放棄した場合も同じになります。

 

ⅳ相続放棄をした場合、相続権は誰に移るのか

今回例に出したケースに当てはめると

 

亡くなった伯父さんの相続人は伯父さんの妻と第一順位である従兄弟でしたが

彼らは相続放棄をしましたよね。

 

そうなりますと、

 

相続権は第二順位である、あなたの祖父母に移動します。

しかし祖父母は既に死亡しているので、

 

相続権は伯父の兄弟である、あなたの親に移動します。

そして、あなたの親も既に亡くなっています。

 

ですので最終的に、亡くなった伯父さんの相続権は、巡り巡ってあなたに回って来るんです。

 

そこで冒頭にも言いましたが「財産を相続出来る!ラッキー」ではありません。

財産より借金の方が多いから、あなたに相続権が回って来たんです!

 

借金よりも財産の方が多ければ、

先の順位の人達が相続しますから、

あなたに相続権は回って来ません。

 

あなたに相続権が回って来た時点で、ババを引いたようなものなのです。

 

つまりあなたは、伯父さんの財産と財産額を上回る借金を、突然どうにかしなければいけなくなったんです。

 

ⅴ相続放棄をした事を親族に連絡する義務はない

ちなみにですね、相続放棄をした人や、それを受理した家庭裁判所には

 

「次の相続人はあなたですよ」

 

と連絡をする義務はありません。

 

ですから疎遠な親戚に借金があった場合、思いもかけずあなたがその借金の相続人になる事があるんです。

 

本当に恐ろしいですよね。

 

自分は相続トラブルなんて無縁だと思っている方も、

ある日突然、会ったことも無い人の借金を被る相続トラブルに巻き込まれてしまう可能性が十分にあるんです。

 

では、もしもあなたが「いきなり相続」に直面してしまった場合、あなたは一体どうすれば良いんでしょうか?

 

ここからは、その対処法について説明して行きたいと思います。

 

③「いきなり相続」に直面した場合の対処法

まず相続が発生した場合、相続人となった人は【財産を相続するか・放棄するか】を、下図の3つの選択肢の中から選ぶ必要があります。

 

1つ目 亡くなった方の財産も借金も全て相続する【単純承認】

2つ目 財産を一部だけ相続する【限定承認】

3つ目 財産も借金も全て放棄する【相続放棄】

 

借金よりも財産の方が多ければ、一般的には【単純承認】を選びますが、

 

もし財産よりも借金の方が多いようでしたら【限定承認】か【相続放棄】を選ぶことをおススメします。

 

伯父さんの従兄弟達は、この【相続放棄】を行ったんですね。

 

では、【限定承認】と【相続放棄】とは一体どういったものか、簡単に解説しましょう。

 

【限定承認】とは

まず、あまり聞き覚えのない【限定承認】についてですが、

 

これは、

財産よりも借金の方が大きい場合や

財産や借金の額がはっきりと把握できない場合に

亡くなった人から相続した財産額、これを限度として

亡くなった人の借金を返す事になります。

 

つまり、亡くなった方の財産を超える借金については返済をする必要がないわけですね。

 

亡くなった方の借金を返済した結果、財産の方が多ければ、借金の清算後に余った財産は自分の物になります。

 

【相続放棄】とは

次に【相続放棄:財産も借金も全て放棄する】ですが、

 

これは、

財産よりも借金の方が大きい場合、

亡くなった方の財産と借金の全てに対して

相続する権利を放棄することです。

 

ですがもし

【相続放棄】を選んだ後に、亡くなった方に大きな財産があったと分かっても、

一度相続放棄を選択すると、その財産を相続することは出来ません。

(※ただし、他の相続人に「親には借金がある」などと騙されて【相続放棄】を選んだ場合などは、【相続放棄】の無効が認められることがあります。)

 

【限定承認】【相続放棄】の手続き期限

そしてこの【限定承認】と【相続放棄】のどちらかを選択したいと思った場合には、

自分が相続人だと知った時から3ヵ月以内に

家庭裁判所に

申述書を提出しなければいけません!

 

この手続きを期間内に行わない場合には、

財産も借金も全て相続する【単純承認】を選んだとみなされてしまうので、注意が必要です。

 

 

ですがここで皆さん思い出してみて下さい。

 

今回の場合、伯父さんが亡くなった事をあなたが知ったのは1年前でしたよね。

 

そしてあなたが叔父さんの法定相続人となったと発覚したのが、つい最近です。

もう叔父さんが亡くなってからの3か月間は「とうに」過ぎてしまっていますよね。

 

【相続放棄】により相続権が回ってきた場合の手続き期限

 

では、亡くなってから3ヵ月が過ぎてしまったら、あなたは、

相続した財産の範囲で借金を返す【限定承認】も

財産も借金もまるごと手放す【相続放棄】も出来ないのかと言えば、

そうではありません。

 

【限定承認】や【相続放棄】の手続きは、

相続人になったと知った時から3ヵ月以内にすればいいんです。

 

あなたが相続人になったと知ったのは、金融業者から連絡がきた時ですから、

そこから3ヵ月以内に家庭裁判所で手続きをすれば問題はありませんので、落ち着いて対処をして頂ければと思います。

 

このように、

親戚関係が疎遠だったり、

相続放棄をすれば他の親戚に相続権が移ることを知らなければ

 

思わぬ借金を背負う事になってしまう可能性がありますから、

日頃から親戚とはある程度の交流を保ったり

亡くなった方の相続人が相続放棄をしていないか?などの動向を気にしておくなりして

 

親戚の死を「自分とは無関係」だとは思わないようにして頂ければと思います。

 

では次に、親が離婚していた場合の相続トラブルを紹介します。

 

④親が離婚していた場合の相続トラブル

先日、ある女性から相談がありました。

 

その女性をKさんとしておきます。

 

Kさんは数十年前に離婚をしていて

元夫とは現在音信不通、

元夫との間に息子さんが1人いるんですが、K子さんが親権者となり、その子が独り立ちするまで育てて来ました

離婚の原因は、元夫がギャンブルで借金を作った事だそうです

 

K子さんからの相談の内容は、

 

「元夫が亡くなったという噂を聞いたんですが、このまま何もせずに放っておいても大丈夫なんでしょうか?」

 

というものでした。

 

ⅰ離婚をした場合、相続権はどうなるのか

離婚をした場合の各人の相続権はどうなるのかを、

K子さんのご家族に当てはめて説明しましょう。

 

離婚をした配偶者の場合:
元々他人ですから、

離婚をすればお互いの財産を相続する権利は無くなります。

元夫が亡くなってもK子さんに相続権はありません。

 

2人の間に子供がいた場合:
父母のどちらに引取られたとしても、親子であることには変わりがありませんから

元夫とK子さんの財産を相続する権利が有ります。

 

元夫が再婚していて、再婚相手との間に子供ができた場合:
元夫と再婚相手の間に子供ができても、

相続人が増えるだけで、

K子さんとの間に出来た子供の相続権が無くなるという事はありません。

 

ですので元夫が亡くなった際の相続人は、

再婚相手の奥さんと

再婚相手との間に出来た子供

K子さんとの間に出来た子供となります。

 

離婚に伴う相続権の変化は概ねこの様になります。

 

K子さんと元夫は音信不通でしたので、

元夫が再婚したとか

他に子供ができたとか

これらについては分からないそうなんですが、

いずれにしても亡くなっているので、K子さんの子供には元夫の財産を相続する権利があります。

 

ⅱ疎遠な親族の財産状況の確認は困難

しかし、このケースでも「財産を相続できる!ラッキー!」と思ってはいけません。

 

なぜなら、

 

K子さんが離婚した原因は【元夫のギャンブル問題】でしたよね。

ギャンブル癖を治すのは難しいですから、K子さんと離婚した後もギャンブルと借金を繰り返していた可能性があります。

 

そうなると、財産よりも借金の方が多いかもしれません。

 

K子さんとK子さんの子供は、元夫とは長い間音信不通でしたから、相手の財産状況を確認する事は非常に困難です。

 

この場合、K子さんの子供が取れる選択肢としては、

先程の話でも出てきた【限定承認】と【相続放棄】となりますよね。

 

亡くなった人から相続した財産額を限度として、

亡くなった人の借金を返す事ができる【限定承認】

 

亡くなった方の財産と借金の全てに対して

相続する権利を放棄する【相続放棄】

 

このどちらかを、

自分が相続人だと知った時から3ヵ月以内に

家庭裁判所に

申述書を提出しなければいけません!

 

ⅲ疎遠な親族の死を「自分とは無関係」だと思わないように!

しかし、

どちらにしようか決めあぐねて何も手続きをしないまま3ヵ月が過ぎたり、

「子供の頃以来もう何十年も会ってない親だし、財産があったとしても相続するつもりはない」と考えて、

何も行動せずにいると、

 

財産も借金も全て相続する【単純承認】を選んだとみなされてしまいます。

 

こうなりますと、

もし亡くなった音信不通の親に借金があれば、金融業者から突然連絡が来て、

あなたが代わりに借金を背負う事になってしまいますので、

 

自分が相続人だと知った時から3ヵ月以内に〝必ず〟

【限定承認】をするか、

【相続放棄】をするかの行動を起こして頂けたらと思います。

 

K子さんにこの【単純承認】【限定承認】【相続放棄】の違いについて説明したところ、

 

「早速、子供に相続放棄の手続きをさせます!」

 

と言われました。

 

皆さんも、もし疎遠であったり音信不通の親が亡くなった事を把握されましたら、

「自分には関係ない」と思わずに、専門家に相談されるなどして、

3ヵ月以内に行動をとるようにして下さい。

 

最後に余談なんですが、

近年「相続放棄」をする人が増えています。

 

なぜ「相続放棄」が増えているのか・・・ですが、

 

それは恐らく現代の日本が、昔と違って誰でも簡単に金融業者からお金を借りることが出来る様になったことが、その原因の一つになっていると思います。

 

私が子供の頃なんかでしたら、お金を返せる能力・財力がある人にしか、お金を貸す業者はいませんでした。

 

ですから、昔は貧乏人はたくさんいました(私の家もその一件です)が、お金を借りようとしても誰も 貸してくれませんでしたから、財産は無くても借金もなかったんです。

ですから、どこの家庭も『相続放棄』をする必要もありませんでした。

 

しかし今では生活がやっとの人でも、簡単な審査でお金を貸してくれる業者がありますからね。

 

その様な方が金融業者からお金を借り、その借金を返せないまま亡くなってしまった結果、今回の記事のテーマである「いきなり相続」が起こってしまうんです。

 

本当に、

何が起きるか分からない

いつ思わぬ借金を背負う事になるか分からない社会になって来ましたので、

 

繰り返しになりますが、

日頃から親戚とはある程度の交流を保ったり

亡くなった方の相続人が相続放棄をしていないか?などの動向を気にしておくなりをして

 

親戚の死を「自分とは無関係」だとは思わないようにして下さい!

 

 

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秋山 清成
国税局・税務署で40年以上相続業務に従事して来た国税OB税理士です。元国税の経験を活かし、相続・贈与で悩む方々に少しでも有益なコンテンツを届けれられるよう、日々記事や動画を投稿中です。(Youtube登録者数:11万人)